03 斎庭

 教会。

 一人の神父が子供たちに勉強を教えている。


子供① じゃあ、先生、神様は今もぼくたちを見ているの?

 伊達 そうですよ。あの青い空の上からね。

子供② 悪いこともバレちゃうの?

 伊達 もちろん。嘘も隠し事も、神様には全部お見通しです。

子供③ でも、神様は全てを許してくれるんでしょ?

 伊達 みんなが良い子にしていれば、必ず許してくれますよ。この中に悪い子はいますか?

子供② いないよ!

子供① みんな良い子!

 伊達 ふふ。可愛い私の子供たち。さぁ、お祈りの時間ですよ。


 子供たち、膝をつきお祈りをする。


伊達 天にまします我らが神よ、今日という日も無事に、平和に過ごせますように…。

武田 よぉ、邪魔すんぜ。


 武田と軍人風の男たちが入ってくる。

 子供たち、驚いて伊達の元に駆け寄る。


伊達 邪魔をするなら帰っていただけますか。お祈りの時間です。

武田 それなんだがよォ、センセイ。


 武田側、抜刀。


武田 ちょぉっと状況が変わった。


 子供たちが前に出ようとするのを伊達が止める。


 伊達 部屋に戻りなさい。そしてお祈りの続きを。

子供① でも、先生!

 伊達 神様は全てを見ています。私は悪い先生ですか?

子供② 違う!

 伊達 だから大丈夫です。戻りなさい。


 子供たち、去る。


伊達 訪問の前には一言、言っていただかないと。ご覧の通り散らかっているので。

武田 悪ィな。でもこれが最初で最期だ。許してくれよ。

伊達 政権がかわったという情報は本当だったらしいですね。

武田 やりたくてやってるわけじゃねえさ。ただ、俺らにも立場ってモンがある。

伊達 物騒なお話です、本当に。ただの神父がそんなに邪魔ですか。

武田 邪魔なのは、余計なことまで知りすぎた元政府軍参謀サマだ。

伊達 神には全てを許されても、あなた方には許していただけませんか。

武田 みてぇだな。


 武田側、伊達に斬りかかる。

 伊達、避ける。


伊達 出来れば、話し合いで解決したかったのですが。


 伊達、仕込み杖の刀を抜く。


武田 神父が刀か。世も末だな。

伊達 言ってませんでしたか?舐めてもらっては痛い目を見ますよ。


 伊達、構える。


武田 生憎、痛ぇのは慣れてんだ。


 斬りかかる武田側を伊達が戦闘不能にしていく。

 武田は傍観を決め込んでいるが、味方は戦闘不能になっていく。


伊達 高みの見物とは良いご身分ですね。

武田 しゃあねぇな、説教は受けつけねぇぞ!


 武田、抜刀せず殴りかかる。

 伊達、受ける。


伊達 嫌でも聞いてもらいますよ。地獄で、になりますが。

武田 へーえ。結局お前も地獄行きか。碌でもねぇな、カミサマも!


 武田、鞘を持たれたまま抜刀。

 伊達、武田の一対一。

 拮抗した戦い。

 お互いの切っ先が相手の急所につけられる。


伊達 これ以上は無用でしょう。日を改めては?

武田 …ちっ。


 伊達、武田、同時に刀を下ろす。


武田 ただの頭でっかちだと思ってたが、とんだじゃじゃ馬だ。なぁ、センセイ?

伊達 人をみかけで判断しないことです。ほら、ここにもそう書いてあります…。


 伊達、聖書を取り出し、武田に差し出す。

 武田、追い払う。


武田 いい、いい、いい。そーゆーのはもう御免なんだ。…ああ、そういえば、ずっと言いてぇことがあったんだ。

伊達 何ですか?

武田 祈りでなんでも済むんなら、刀なんて捨てちまえよ。その方がずっと平和でシアワセだぜ。センセイにとっても、あのガキ共にとってもな。

伊達 神への祈りをそのような次元でしか捉えることが出来ないから、あなた方は愚かなままなのですよ。

武田 …そうかよ。よくわかった。政府の連中あいつらがあんたを潰したい理由が。

伊達 褒め言葉として受け取っておきます。あなたに神のご加護がありますように。


 伊達の祈りを尻目に武田、去る。

 子供たち、戻ってくる。


子供① 先生!

子供② 大丈夫?怪我してない?

 伊達 大丈夫ですよ。お祈りは済ませましたか?

子供③ 終わったよ。

 伊達 良い子ですね。

子供① 先生、僕たちも戦えるよ!

子供② そうだよ!力になれるよ!

 伊達 ありがとう。でも彼らは君たちの手に負える相手ではありません。

子供③ そんなの、やってみなくちゃ。

 伊達 みんなを失いたくないのです。

子供① でも!悪い人は殺さなくちゃ!

子供② 悪い人がいなくなれば、理想の国になるんでしょ?

子供③ 神様もそれを願ってるんでしょ?

 伊達 ええ。でも、そこにみんながいないと、何の意味もありません。

子供② 先生だっていてくれなくちゃ…。

 伊達 私はどこにも行きませんよ。いつでもみんなと一緒にいます。

子供① ずっと?

 伊達 ずっと、です。さぁ、少し、散歩に行きましょうか。


 伊達、子供たちと一緒に去って行く。

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