第169話 写真

一馬は、エターナル・ホープという村の未来を見据える中で、歴史や功績を視覚的に残すことの重要性に気付きました。石碑に名前を刻むだけでなく、その場面を写真で残せれば、後世の人々がより具体的に過去を感じ取ることができると考えたのです。しかし、この世界には写真機という近代的な道具は存在していませんでした。そこで、一馬は剣と魔法の世界において、それに代わる魔法を使って写真のようなものを実現することを目指しました。


彼は各国の王たちに協力を依頼し、見たものをそのまま紙に写すことができるような魔法がないかを探し求めました。ほどなくして、ある国の考古学者が古代の書物を調べている際に、「念写」と呼ばれる魔法に行き当たりました。この魔法は、見たものを心に思い描き、そのイメージを物理的に紙に写し取るというものでした。


一馬はすぐさまこの「念写」の改良を依頼し、各国の魔法使いが協力してその性能を高めました。約1か月後、念写はまるで写真のように鮮明で詳細なイメージを写し取ることができる魔法へと進化しました。こうして、石碑に名前だけでなく、その人の姿や出来事の瞬間を写真として残すことが可能になったのです。


彼は、エターナル・ホープの各地に設置された石碑に、集合写真や記念すべき瞬間の写真をはめ込むための長方形のくぼみを作り、その上からガラス板をかぶせました。これにより、写真は風雨にさらされることなく、長く保存されることが保証されました。


一馬は、これらの写真が未来の子供たちにとって、生きた歴史の証になることを期待していました。「これが私のおじいちゃん」と写真を指差して言えるような日が来ることを、彼は心から楽しみにしていたのです。彼にとって、歴史をただ伝えるだけでなく、それを未来へと繋げる手段として、この念写の魔法は非常に重要な役割を果たすものでした。


こうして、エターナル・ホープは、ただの村から、過去と未来が交差する場所へと成長していきました。この村に根付く人々の記憶が、写真という形で刻まれ、永遠に残り続けることで、村の名前に込められた「永遠の希望」が実現されていくのです。一馬は、その一歩一歩を、情熱を持って歩み続けることを誓いました。

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