第162話 経世済民
一馬とデニちゃんは、かつて数々の戦場で多大な戦果を挙げ、魔王軍との戦いで英雄として讃えられていました。しかし、その戦果が平和をもたらしたことで、戦争が一時的に沈静化していました。ところが、ある日、司令官から魔族の町や村を殲滅する命令が下されました。
一馬はその命令に対し激しい怒りを覚えました。彼は平和のために戦ってきたのであって、無差別に民族を殲滅するための戦争に加担するつもりは毛頭ありませんでした。
「こっちは平和のために戦っているんだぞ!民族浄化のための戦争に参加させられるなんてまっぴらごめんだ!やりたければ貴様らだけでやっていろ!」
一馬の怒声が司令室に響き渡りました。彼の決意は固く、その場を後にし、すぐにエターナル・ホープ村へと帰還しました。
数日後、とある国の国王から再び召集され、一馬は王宮に招かれました。国王は一馬に、再度殲滅戦への参加を命じました。しかし、一馬は毅然とした態度で命令を拒否しました。
「今は砦の防衛力を上げるべきです。飛んでくるワイバーンやドラゴンを迎撃するための魔法の開発が必要です。それに村や町を襲うのは上策ではありません。万が一、その村や町が中立的立場だった場合、モンスターの村の住民が全員魔王軍につくことになる可能性だってあるんです。いたずらに藪をつつく必要はありません」
一馬の発言に対し、国王は眉をひそめました。「しかし、一馬、お前は理解していないのだ。我が国の安寧のためには、彼らを一掃する必要があるのだ」
「お言葉ですが、陛下」と一馬は言葉を重ねました。「今我々が必要なのは、戦争で疲弊した民を救うことです。各国の民は重税に苦しんでいます。民の協力なくして戦争はできません。今は民を救うために減税をすべきです!無意味な戦争を続けるよりも、平和のために民の生活を安定させることが先決です」
国王はその言葉に深く考え込みました。兵士たちは静かに一馬の意見に耳を傾けていました。彼らの中にも、一馬の言うことに共感する者が多くいたのです。
「分かった、一馬」と国王はついに言いました。「お前の言うことにも一理ある。だが、我々も何かしらの防衛策を講じなければならない。民を守るための策を、共に考えていこう」
こうして、一馬の意見が国王に認められ、無差別な殲滅戦は回避されました。一馬の目的は常に平和であり、そのための道を選び続ける彼の姿勢が、国王や兵士たちにも影響を与えたのです。
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