第158話 地獄の鶏部隊リターンズ

人類軍と魔王軍の戦いは、すでに熾烈を極めていた。人類の領土はじりじりと削られ、まるで破竹の勢いで進撃する魔王軍に対抗する術を失いつつあった。魔王軍の強さの秘密は、空を完全に制する飛行部隊にあった。ドラゴンライダーが乗る竜、空中を優雅に舞うハーピィ、そして火を吐くワイバーンたち――これらの存在が空からの絶え間ない攻撃を加え、地上ではゴブリンやコボルトといった貧弱な魔物たちがその援護を受けて、圧倒的な戦力を誇っていたのだ。


そんな絶望的な戦場に、一筋の光が舞い降りることとなる。後方の上空から青く輝く何かが急速に接近してくるのを、人類側の兵士たちは目にした。その青い閃光――それは一馬が操るエアライダーだった。


「デニちゃん、GO!」と、一馬はエアライダーの上で叫んだ。その声には、緊張感と共に高揚感が混ざり合っていた。一馬にとって、この戦場での戦いは久しぶりの実戦だが、彼はかつての戦いの感覚をすぐに取り戻していた。


「いわれずとも!」とデニちゃんが応じる。彼の声には、戦場を前にして燃え上がる闘志がみなぎっていた。彼の体は小さな鶏のものだが、その体内には地獄の鶏軍団の一員としての誇りと、かつて数々の戦場で培った戦闘技術が宿っていた。


デニちゃんはエアライダーから軽々と飛び降り、地上に降り立つ。その瞬間、彼の足に装備されたブレードが閃き、まるで風を切るように音を立てた。彼の動きは驚くほど素早く、次の瞬間には彼はすでに敵の陣形の中に突入していた。


「一馬、魔道レーザーロングライフルで援護しろ!」と、デニちゃんが命令する。彼の声は、まるで戦場の指揮官のように鋭く、一馬に的確な指示を与えていた。


「了解!」と一馬は即座に応じる。その声には、デニちゃんとの息の合った連携に対する信頼が感じられた。彼は魔道レーザーロングライフルを肩にかけ、敵の空中部隊を狙い撃ち始める。青い光の矢が放たれるたびに、空を飛ぶハーピィやワイバーンが次々と撃ち落とされていく。


地上では、デニちゃんが圧倒的な力を見せつけていた。彼はブレードを駆使して、ゴブリンやコボルトを一掃していく。まるで舞うような動きで敵の攻撃をかわし、鋭い一撃で彼らを次々と切り裂いていく。敵は彼のあまりの速さに反応する間もなく、次々と倒れていった。


デニちゃんの動きは止まることを知らず、彼はまるで嵐のように戦場を駆け抜けた。彼のブレードが閃くたびに、敵は次々と倒れ、そのたびに地面に血の花が咲いた。しかし、その姿は残虐というよりも、美しくさえあった。まるで死神が自らの刃で死を収穫しているかのように、デニちゃんは冷徹かつ優雅に戦場を支配していた。


この激しい戦いの中、一馬とデニちゃんは、息の合った連携で次々と敵を打ち倒し、ついに魔王軍の空中部隊を撃退することに成功した。空を失った魔王軍は、その圧倒的な優位性を失い、地上の戦いも次第に人類軍に有利に転じていった。


デニちゃんは、戦場の真ん中でブレードを振り下ろし、最後のゴブリンを倒した後、深く息を吐き出した。「これで少しは、腕が鈍らずに済んだかもしれないな」と、彼は静かに言った。その声には、わずかな疲れと共に、戦いを終えた安堵感が漂っていた。


一馬は、そんなデニちゃんの背中を見つめ、にっこりと笑った。「デニちゃん、最高だったよ。やっぱりお前がいると心強いな」と、彼は心から感謝の気持ちを込めて言った。その声には、再び戦場に立つ決意と共に、彼らがこの戦いを生き抜いていく強い絆が感じられた。

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