第153話 体力は無限大

一馬が冒険者としての第一歩を踏み出す中で、彼は数々の仕事をこなしていった。最初に手をつけたのは、荷物運びだった。広場や街道沿いの市場で、荷物を積んだ荷車を引き、重たい袋を運ぶその姿は、見る者を驚かせるほど力強かった。彼の体力は並みの冒険者とは比較にならないほどで、女神アウラリアから授けられた無限体力の恩恵もあり、どんなに重い荷物でも一馬にとっては軽々と運べるものだった。


一馬が運ぶ荷物の中には、野菜や果物、鉱石や木材といったさまざまな種類があったが、彼はその重さや形状に関わらず、的確に持ち上げては運び、荷主たちから感謝の言葉を受け取っていた。特に市場の商人たちは、一馬の素早さと確実さに感心し、次々と依頼を持ちかけてくるほどだった。一馬は荷物を運ぶ度に、笑顔で依頼者に礼を言い、また次の仕事へと向かっていった。


次に、一馬が取り組んだのは大工仕事だった。彼はもともとクレストンでの経験から、木材の扱いや建物の修理には慣れていたため、すぐにその技術を発揮することができた。新たな家屋の建築や、古い建物の修繕といった仕事に従事し、重い材木を一人で担ぎ上げたり、力強く釘を打ち込んだりする姿は、まるで熟練の大工そのものであった。彼の手で建てられた家屋は、住人たちに安定した住まいを提供し、彼の評判は町中に広まっていった。


大工仕事の合間に、一馬は飲食店の調理場でも働き始めた。彼が担当したのは調理の補助で、食材の下ごしらえや調理器具の洗浄、皿洗いなど、多岐にわたる雑務だった。一馬は手早く野菜を切り分け、魚をさばき、必要な調味料を準備して、忙しい厨房の中でも的確に動き回った。調理場のスタッフたちも、一馬の働きぶりには舌を巻き、彼がいることで作業がどれほど楽になるかを実感していた。


彼が働く様子はまさに「プロフェッショナル」という言葉がふさわしいものだった。すべての仕事において、一馬は自分の力を最大限に発揮し、周囲の期待に応え続けていた。彼の姿は、ただの冒険者とは異なり、どんな仕事にも誇りと情熱を持って取り組む職人のようであった。地道な努力と、確かな技術を持つ一馬の姿は、次第に周囲の人々の尊敬を集めるようになり、彼の名は町中で知られるようになっていった。

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