第113話 冷血

一馬は帝国の兵士たちをクレストンの中心へと丁寧に案内し、その対応はまるで尊敬する客人を迎えるかのように慎重でありながらも、どこか底知れぬ意図を隠しているようなものでした。帝国の大将も一馬の礼儀正しい態度に感心しながら、期待に胸を膨らませて言いました。


「クレストンの食事は絶品ばかりと聞く。早く堪能したいものだ。」


一馬は微笑みを浮かべ、「今日のために用意した、特別な食事でございます」と答えました。クレストンの料理人たちが総力を結集し、帝国の兵士たちに向けて最高の料理を提供しました。香り高く、見た目も美しく、味はもちろん絶品。食材一つ一つが極上のもので、帝国の兵士たちはその美味しさに感動し、口々に「こんなうまい飯、今まで食ったことがなかった」と讃えました。


10万人を超える帝国の兵士たちが、次々とこの美食を堪能し、その至福の瞬間を味わっていました。彼らが食事を終え、余韻に浸っている頃、ふと、一馬がふと冷たい微笑を浮かべました。それは、誰もが一瞬にして背筋が凍るような、不気味な微笑でした。


「馬鹿な、何故!?」と、大将が驚愕の表情で胸を押さえました。次の瞬間、兵士たちは苦しげに喉を押さえ、次々と地面に崩れ落ちていきました。その場にいた全員が、突然訪れた恐ろしい現実に驚愕し、恐怖に支配されました。


実は、一馬とクレストンの錬金術師たちは、あらゆる魔法に検知されない最新の毒を開発していたのです。帝国の兵士たちは古典的な毒検知の魔法を信じきっていましたが、この毒はそれを巧みにすり抜けるものでした。しかも、この毒には遅延性があり、食べた直後には何の異変も感じず、一時間ほど経ってから効果が現れるというものでした。


全ては、帝国の兵士たちを油断させるための罠だったのです。兵士たちが次々と倒れる中、一馬は冷静に事態を見つめ、次の行動に移ります。彼はすぐにクレストンの研究者たちに指示を出し、帝国の兵士たちの死体を処理するための計画を実行させました。


それは、人間の死体を魔石に変換するという、おぞましい方法でした。この技術は元々モンスターの死体を魔石に変換するためのものでしたが、最新の研究により人間にも応用可能であることが判明していました。一馬はこの技術を利用し、急ピッチで死体を魔石に変えるよう命じました。


こうして、次の帝国の兵士たちが入場してくる前に、クレストンは静かに、しかし着実に、次なる防衛策を進めていたのです。次なる戦いに備え、一馬は決して油断せず、さらに冷酷な策を練っていくのでした。

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