第112話 作戦会議

一馬は、王宮の重厚な扉を開けて進み、ヴァルフォード王国の王と皇太子が待つ謁見の間へと足を踏み入れました。王の前に跪くと、一馬は静かに、しかし決然と告げました。


「陛下、帝国の条件、どうか飲んでください。」


王は驚愕の表情を浮かべ、一馬を睨みつけました。「正気か貴様!?この状況でそんなことを言うとは、一体どういうつもりだ!」その目には不信感と怒りが混じっていました。


しかし、その様子を横で見ていた皇太子は、口元に微笑を浮かべながら問いかけます。「一馬よ、勿論、何か策があるんだろうな?」その言葉には確信がありました。


一馬は落ち着いた声で答えました。「あります。とびきりの策が。それには帝国の兵士たちがクレストンに入ることが条件なんです。」


皇太子は少し眉をひそめながらも、理解を深めようとしました。「地の利を利用するということか?」


一馬は微かに頷きました。「それもありますが、狙いは他にあります。」


皇太子はさらに食い下がります。「それはどういうことなんだ?」


一馬は言葉を選びながら説明しました。「それはですね………ということなんです。」


皇太子は感心したように頷きました。「なるほどぉ、それは良い案だな。だったら私も一枚かませてもらえないか?」


一馬は微笑んで答えました。「もとより本日はそのお願いに来ました。」


皇太子は声高に笑い始めました。「はっはっはっは!王族に戦場に出撃を打診する平民がいたとはな、はっはっはっはっは!」


しかし、王は厳しい表情で皇太子を睨みつけました。「馬鹿者!お前は皇太子なんだぞ、前線に出す許可など私が下すはずないだろうが、このバカ息子が、親不孝も大概にしろ!」


皇太子は意に介さず、むしろ挑戦的に言い返しました。「いけませんなぁ、父上、ヴァルフォードの男子が臆病風に吹かれては、名折れですぞ。それに勝ち戦ではありませんか。なぁに心配に及びません、卑劣なる帝国に一撃を食らわせたら戻ってきますゆえ。」


王は疑念を抱きつつも息子の熱意に打たれ、問いかけます。「本当に一撃なんだろうな?」


皇太子は自信満々に答えました。「勿論ですとも、私にも愛する妻がおりますゆえ、その点はご心配なされずとも…」


こうして、一馬の策は王と皇太子によって了承され、反撃の狼煙が静かに、しかし確実に上がったのでした。

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