第63話 バイオリニストの確保

一馬は、女強盗の見事なバイオリンの演奏を聞いた後、驚きからすぐに冷静さを取り戻し、決断を下しました。


「聞け強盗女、お前に選ばせてやる。ここで馬車馬のように働くか、それとも今から警察に突き出されるか、どちらか選べ」


その言葉を聞いたナビィは驚愕し、すぐに一馬に問い詰めました。


「ちょっと一馬、正気?相手は強盗なのよ!?こんな人を雇うなんて、どうかしてるわ!」


一馬は軽く肩をすくめ、落ち着いた声で応えました。


「正直言って、俺も正気じゃないかもしれない。でも、今の演奏を聞いただろ?あれだけの実力があるなら、俺たちの計画にはもってこいだ。責任は全部俺が取るから、心配するな」


女強盗は困惑した表情で一馬に問いかけます。


「よくわかんないんだけど、どういうこと?」


一馬は淡々と説明しました。


「今、バイオリンが弾ける人を探しているんだ。月の報酬はこのくらいだ」


そう言って一馬が提示した報酬は、驚くほど高額なものでした。女強盗はその金額を見て、一瞬言葉を失いましたが、すぐに目を輝かせました。


一馬は彼女の反応を見て、彼女がどうするかを静かに待ちました。


女強盗は提示された報酬を見て、一瞬言葉を失いましたが、次第に目が輝きました。彼女はしばらく考えた後、真剣な表情で一馬に向き直りました。


「本当に、こんな私が働けるの?警察に突き出されないで済むの?」


一馬は少し微笑んで、真摯な声で答えました。


「もちろんだ。ただし、ここで働く以上、これまでの行いはすべて水に流すが、これからは全力で真面目に働いてもらう。手を抜いたり、また何か悪さをしようとすれば、その時は容赦なく警察に突き出す。分かったな?」


女強盗は深く息を吐き、決意を固めるように頷きました。


「分かったわ…。本気で働くわ、これ以上迷惑をかけたくないし、こんなチャンス二度とないかもしれないから」


ナビィはまだ少し不安そうな顔をしていましたが、一馬の決意を感じ取り、口を閉ざしました。そして、女強盗に向かって「私も協力するから、頑張ってね」と優しく言いました。


女強盗は少し驚きながらも、感謝の気持ちを込めて「ありがとう…」とつぶやきました。


一馬は満足げに頷き、新しいスタッフとしての準備を始めるように指示しました。


「まずは、ここで必要なことを一通り覚えてもらう。その後は、君の得意なバイオリンを活かして、コテージでの演奏をお願いすることになる。しっかりとやってくれ」


こうして、女強盗は一馬の農場で新たなスタートを切ることになりました。彼女の過去を背負いながらも、今度こそ新しい人生を築こうと決意し、次第に農場の仲間たちと打ち解けていくのでした。

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