第62話 意外な奴が…
温泉のほうも設けが順調です。銀行側曰く、何もしなくとも温泉の儲けだけで近いうちに返済できるとのことでしたが、銀行員のほうから提案がありました。「いや、本当にご苦労。こちらも融資した甲斐があったよ。ただ問題点はこちらも分かっている。コテージのほうが人手不足なんだろう?どうかね、人手不足解消のための融資を受けてみては?」それに対して一馬は「わかりました。よろしくお願いします」と言って融資してもらうことにしました。
そして、優秀な親族がいそうな人たちに声を掛けることにしました。まずはギルドの受付嬢に相談し、彼女の無職の妹を雇うことになり、続いて図書館の受付嬢からも無職の兄を紹介され、快諾しました。
しかし、弦楽器を扱える人材が見つからず、一馬は悩みながら農場に戻る途中で、聞き覚えのある声が響いてきました。
「妖精さんも猫さんもニワトリさんも許してください、ごめんなさい、二度としません、だからもうそんな痛い事しないでください!うわぁあん!」
その声の主は、以前捕らえた女強盗でした。再び彼女は農場に侵入し、妖精たちにボコボコにされていました。見かねた一馬は堪忍袋の緒が切れ、激怒しながら彼女に詰め寄りました。
「性懲りもなくまた強盗に入りやがったのかテメェ!警察に突き出す前に一発ぶん殴らせろ!」
彼の怒りに、女強盗はさらに泣きじゃくり、懇願します。
「やめてぇ、ごめんなさい、痛いことしないで、もう悪いことしません、明日から真面目に働きます。お願いですから許してくださいぃい」
彼女の涙ながらの訴えを聞いて、一馬は深いため息をつき、今はそんなアホに構っている暇はないとぼやきました。
「まったく、こんなアホに構ってる暇ないんだよこっちは、弦楽器が使える人を探さなきゃいけないってのに…」
その言葉を聞いた途端、女強盗はピタリと泣き止みます。
「弦楽器ってバイオリンとか?」
一馬は怪訝な表情を浮かべ、半信半疑で問い返します。
「そうだけど?まさか弾けるなんて言わないよね。強盗の分際で」
女強盗は傷ついた表情で反論しました。
「酷いよ、強盗とバイオリンは関係ないでしょ?」
「いや、明確な相関関係があるだろ、知的水準的な意味で」
「私強盗だけどバイオリンひけるもん」
一馬は彼女の言葉を冗談だと思いながらも、試すことにしました。
「ほぉん?じゃあ弾いてみて、買ってきたから」
一馬は持ち帰ったバイオリンを彼女に渡し、念のために回復魔法で彼女の傷を癒しました。
すると、驚くべきことに女強盗は見事な旋律を奏で始めました。その音色に、一馬もナビィも、そして猫や鶏たちまでもが驚きを隠せませんでした。
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