第21話 掃除、洗濯

一馬は畑仕事の合間に、掃除や洗濯などの日常の家事に取り掛かることにしました。彼が住む小さな家は、まだ手を入れて間もないこともあり、埃が溜まりやすい場所がいくつかあります。まずは掃除から始めることにしました。


手に持った箒を振り上げ、床に積もった埃を丁寧に掃き集めていきます。思った以上に埃が舞い上がり、「やっぱり窓を開けておいた方がよかったな」と少し後悔しつつも、一馬は掃除を続けました。猫がその埃を不思議そうに見つめ、時折足元にじゃれついてきます。


「お前、邪魔しないでくれよ」と笑いながら一馬は猫を優しく払いのけますが、猫はそれを楽しむかのように再び足元に寄り添います。


掃除が終わると、一馬は洗濯に取り掛かりました。現代のような洗濯機などはないため、全て手作業で行わなければなりません。井戸からバケツに水を汲み、洗濯桶にそれを注ぎます。石鹸を少しだけ溶かし込み、汚れた衣類を入れて手でこすりながら洗います。


「これも結構な運動になるな」と、一馬は腕の筋肉に少しだけ負荷を感じながらも、どこか楽しんでいる様子です。汗ばむ額を袖でぬぐい、洗濯物をしっかりとすすいだ後は、近くの物干しにそれをかけます。天気も良く、日差しが洗濯物をすぐに乾かしてくれそうです。


そんな彼のそばに、再び猫が近寄ってきました。今度は一馬が使っていた洗濯桶の中に興味を持ったようで、ちょこんと前足を入れてみたり、顔を突っ込んだりしています。


「こら、濡れるぞ」と言いながらも、一馬は微笑を浮かべて猫を見守ります。結局、猫は興味を失ったのか、一馬の足元に戻ってきてくつろぎ始めました。


掃除も洗濯も、現代の便利な道具はないものの、一馬はその不便さを感じつつも、それを楽しんでいる自分に気づきました。異世界での生活は、確かに手間はかかるものの、その分、充実感があることを実感していました。

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