第10話 僕の―――“闇”
今僕は、『三橋京子』『ヒルデガルド』両者の共謀により三橋京子の『婚約者』に仕立てられようとしていた、しかも場は“社交界”―――割と“平民”“庶民”である僕以外では皆どこかの会社の重役だとか政財界の顔役だとかが軒を貫ている異様さだ、そんな場で『トリプルブリッヂ・コーポレーション』の次代を担う三橋京子より高らかに宣言がなされたのだ、“今”と言う時まで割と“平民”“庶民”してた僕が…僕こそが三橋京子の婚約者であると、けれどそこには僕の意思など入っていない、だから僕は強く反論しようとしたけれども向うも然る者、僕が反論する前に三橋京子の部屋へと強制連行されてしまったのだ…。
* * * * * * * * * *
そしてパーティーも滞りなく終わらせたものか、僕を
「おーつかれー、なんかワリーね変な事に巻き込んじゃって。」
「そう思うんだったらどうしてこんな事をしたのかな。」
「そーう
「それよりヒルダさん…あんたこの事を知ってて―――」
「ま、そう言う事よ、こんなん面白出来事みっちょんから固く口止めされててもつい話したくなるってもんでしょ。」
「ちょ、がるどっちぃーワリー冗談いうもんじゃねえし?」
「ケド―――実際みっちょんから深刻な相談受けてたのも事実なんよ。」
「なんだよ…その『深刻な相談』て。」
「あれえ~?みっちょん言ってなかったかあ?この子さあ高校入ってからかなりな『お見合い話』されてたみたいなんよ、それにみっちょんのご両親の事も。」
「ああ…今年で70って、53の時の―――そりゃ高齢出産て事には同情するよ、けども僕の同意もなしに…」
「はあー…ま、そこは謝るよ―――けども
「はあ?なんだよその―――『
それは…僕如きの“平民”や“庶民”にはない、金持ちならではの差し迫った事情でもあった―――三橋京子の実家が経営する『トリプルプリッヂ・コーポレーション』はここ最近で急激に実績を上げて来た処だ、けれど経営陣は旧態依然のまま―――若い芽も育たない…そんな会社は今は隆盛を誇っていても後は落ち目になるばかりだ、事実『トリプルブリッヂ・コーポレーション』に差し迫る勢いで力を伸ばして来た新手のIT企業、そこの若き社長が『トリプルブリッヂ・コーポレーション』の“吸収合併”を視野に入れた『お見合い』を画策しているのだと言うのだ。
「そんな、事が……」
「まあ、ケントに相談もなしに話しを進めてたのはさすがにワリーとは思ってたよ、それにみっちょんにはワリーけど、うちのケントには既に“嫁”もいる事だしなあ?」
「へえーーーちょー奥手だと思ってたけどヤル時ゃヤルじゃあ~ン、健闘“様”―――キャハハハ!」
「からかうなよぉぉ~けど何で僕に“白羽の矢”が立ったんだ?」
「そこはあーがるどっちのお見立てよ、一見冴えないモブ男―――けどもそこにうちの『婚約者』としての“箔”でも押せば、ひとまずヤツからの攻勢は止む…」
「まー私も王国の貴族様の跡目問題とかしょっちゅうあったからねー、だからこそ最適解が出せれた…それにさ、ケントは勘違いしてるようだけれども『婚約』は飽くまで『婚約』だよ。」
「そんなん判ってるけど―――何が言いたいんだ?」
「『判ってる』って言ってるけど本当の処は『判っていない』―――まあみっちょんも半分半分だったしね、そう…つまり『婚約』って言うのは『結婚を約束している』って言う事に他ならない…『結婚』をする為の『約束』―――そこでケントにも聞いてみるけどさあ、『約束』って必ず守らなければならないもの?」
「はあ?そんなん―――常識だろ!だって
「それじゃあどうして世界各国は一度締結した『約束』を簡単に破れるのかなあ?」
「(ッ!)それ―――は…」
「うちもさ、それがるどっちから聞かされた時総毛が立ったわ、国と国との約束事は言ったら世界の平和の為―――けれど
「そ…『約束』なんて所詮は綺麗事―――それは詰まる話し破られる前提で結ばれている様なモノ…けれども、なくてはならないもの―――その『約束』があるだけで相手は『どう破るか』を考える、要するにだねケント君、これはこっちが次の一手を考える時間を稼ぐ為のものなのじゃよ。」
また出た…なんか老師匠的なキャラ―――けれども三橋さんが感心するように、こうした友の窮地に自分の経験談を以て対抗出来ている事にヒルダさんて本当にお后様なのだなあーーーと…
て言うか会場での“キャラ”はどうしたんだ!?
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けれども今回の僕は一味違う、これまでにもあったように僕が〖
「ふはははは!我輩はここに再び戻って来た!さああーーー皆よ恐れ
“サブ”のアバターは青年の男性、“漆黒”を基調とした衣装や装備を持ち、口から紡ぎ出される言葉の数々は他人からしてみたら『何言ってんだ?こいつ』的な―――まあー言っちゃあなんですけど、『厨二病』です―――しかも大変
「あら、これは『ダレイオス』卿ではございませんか、お懐かしゅう…」
いや、訂正―――1人だけいましたわ、この『厨二キャラ』知ってたの…
「ふっ―――誰かと思ったら【癒しの聖女】ミザリアではないか、貴様も中々に愉しんでおるようだなあ」
「いえそれほどでも…それにしても本当にお久しぶりです事、ここ1年程お姿を見ませんでしたがやはりお仕事などがお忙しく?」
「ま、まあ―――そう言う事だ…それに長き間やっておらんのでな腕が
以前にも話したことがあると思うけれども、僕は
それに僕の様に“メイン”の外に“サブ”を作成してプレイを愉しんでいる者達は多い、そちらの方が“メイン”とはまた違ったプレイを楽しめることが出来る―――からなのだが…実は僕が『
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今更ながら―――と言う訳でもないのだが、僕は小学校の頃からいじめられていた、それは高校生になった今でも尚―――だから本当、今更と言う事なのだが…それにいじめられていると僕の内に色んなモノが溜って来る、“怨み”や“辛み”“ストレス”と言った様なもの、そうした時にネットゲームは僕にとっては格好のストレス発散の場でもあった、そこで活躍したのが『ダレイオス』だ。
このキャラは強い…寧ろそうなる様にステータスやスキルを積ませてきたのだから当然と言うべきだろう、俗に言う『課金』―――それによって様々な景品が当たる、その中には勿論とんでもない性能を内包させた『武器』や『防具』、様々な効果が
『トラビアータ』は≪堅塞≫と言うユニークスキルで“盾”役“壁”役としての立ち回り―――それはつまり僕以外の他人の役に立つように振る舞いをしたものだが、人間と言うものは失敗をしないということはない、当然僕みたいなベテランプレイヤーでもミスする時は、する……ある時に僕の些細なミスの所為であるクエストが“失敗”に終わってしまった、そこで僕としては
僕みたいな“イジメられ”“イジられ”キャラがその胸の奥底で抱くモノは、相応にしてドス黒い…『この世で最強』、『唯我独尊』、『周りは畏れを知らぬカスばかり』―――と、リアルでイジメられネットでも叩かれた反動が『
そう―――僕の本来の“
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とまあ『
で
ではなぜ現在『ダレイオス』でログ・インしているのかと言うと…お前の所為だよ―――三橋京子ぉ~!
しかし、現在ダレイオスでログ・インして絶賛『魔王/覇王プレイ』しているのはミザリアには関係などなく―――
「あの、今よろしければわたくし達のPTに協力してはくれませんか」
「うん?構わんが―――どうしたのだ、見た処最近つるんでおる『リーゼロッテ』なる者と一緒ではないと見えるな」
「ああ…彼女でしたら『今日は所用があるから』と―――それより、あの…」
「ほう、そうであったか―――うん?どうした」
「彼女の事をどうして知っておいでなので?確かに彼女は頭抜けたプレイヤースキルを要しており、ここ1ヶ月で有名になったプレイヤーではありますけれど…」
「あ―――ああ、その事か、いやなに日頃忙殺されておる我輩であったとしてもSNSの更新閲覧は欠かせないものであるからしてなあ」
ま…まずい、流石にブランクのあるプレイヤーがここ最近勇名になりだしたプレイヤーを、それも名指しで言ってしまったのはまずかったかなあ…いやけど、僕もSNSの更新には目を通しているからねえ~なんとか辻褄は合っている―――はず…
しかし、“
それというのも、僕の
それは『
そうした中で運営がまた一歩踏み込んだのが“対人戦”、いわゆる『
ではなぜ、“今更”そんな事を―――?言う必要があるのか…それがあるのだ、丁度僕が2年前―――そう中学二年の頃に『
そんな事は有り得ない―――とする一方、プレイヤー達は一層『死』と言うものを深刻に考え『生』と言うものを尊ぶ、リアルに考えたらなんとも突拍子もない事だけど物語性のある“作品”ならば話題性に欠かすことがない(事実その作品は『本編』は終わったもののその後『外伝』的要素なもので未だに続いているらしい)、それに僕もその作品は『お気に入り』でもあるのだが―――そんな破綻した様な設定の中でも壊れた趣向の持ち主はいたもので、言ったらその作品からだった、『
それに僕が『ダレイオス』を作ったのは、『
いや―――けれど、僕の
「く…
「ケヒャヒャヒャヒャ~手前も年貢の納め時の様だなあ―――【癒しの聖女】ミザリア!手前を狩る事が出来たんならおれ達の名声も一気に爆上がりってところよぉ!」
1つの『ミッション・クエスト』をクリアした処で、“ぞろぞろ”“わらわら”と出て来た
「クックック―――どうやら貴様達は運がなかったようだ…考えても見るがいい、この者達だけならば貴様達のその欲望、叶えられるものだったのだかなあ~?」
「なんだあ?てめぇは―――てめぇらの置かれている状況、判ってんのか?厄介な【癒しの聖女】ミザリアを封じヤツの魔法やスキルを使えなくする…ようく考える事だな、今手前らは窮地に陥っているってことをよお!」
「ほう?窮地―――これは窮地なのか?」
「な…っ、なんだと―――?!」
「クックック―――いやはや、“引退”をしていたここ1年でここまで
「ええ、確かにあの当時のあなた様は
「フッ―――フフフ…剣呑だな、【癒しの聖女】ミザリア 我輩は、貴様に言ったはずだな?『リハビリ』だと―――まあ…貴様達と仲良しこよしでやってても構わなかったのだが、やはり好い!
ハッキリ言って、『
けれど―――ここでやってしまったのだ…このゲームでは得てして勝利時には自分で設定したエフェクトで飾れる事がある、それを僕はやってしまった…ただ単に勝利時のエフェクト如きでそんな事を―――と誰しもが思うのでしょうが、『
「………そのポーズ―――もしかするとあなた様は『椿姫』?!」
『椿姫』―――デュマ=フィスの長編小説であり、それを基にジュセッペ=ベルディが作曲をした3幕もの歌劇、純朴な青年によって真実の愛に目覚めさせられた娼婦の悲劇的な生涯を描いた作品である、そしてまたの名を『トラビアータ』と言う…
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