第8話 僕のイマジナリーフレンド様の“お友達様”は割とガチなテンプレート強者でした

なんだかんだ色々とありましたが、僕は趣味であるネットゲームを満喫しています、それに同じゲームを、ひょんな事から僕達の世界に迷い込み、ちゃっかりと僕の家に居候している異世界の異種属(エルフ)の王国のお后様が、僕の幼馴染みもやっている事を知り、どうにかこうにか仲良くやっています……


「へへっ、前線はこの俺様とトラビアータに任せときな!」

「そう言う事じゃ、わしとマクドガルは2人揃えば『崩壊し難い鉄壁の二大看板』と喩えられたくらいじゃからの~う」


そう、『トラビアータ』と『マクドガル瑠偉ちゃん』が前線にいればそうそう後衛に被害は及ばない―――と、したのだが…


「うう~らうらうらどけどけえ~い!リーゼロッテ様のお通りじゃあ~!どかぬと言うのなら蹂躙してくれよぉぉう…」


リーゼロッテヒルダさん』は昔取った杵柄もあり『アーチャー』として後方からの射撃攻撃を得意としています、それに『後衛職』という分類から“防御力”の方はそんなにはありません―――ではどのくらいないのかと言うと、丁度今回“狩り”の対象としている『ファング・ボア』の突撃で一発退場となります、間違いなく。


「バカモン!後衛職のお主が前衛にしゃしゃり出てくるでない!タゲがお主に移るであろうが」

「とは言っても走り出した猪は止めようがねえ…俺様に任せときな!“戦技アーツ”≪ウオー・クライ≫! どぉっせええい!」

「上出来じゃマクドガルの、ならわしは止められたその足で止めと行こうかのう!“戦技アーツ”≪断頭≫!」


後衛で大人しくしていればいいものを、何故かヒルダさんが前衛へとしゃしゃり出て来た、まあ彼女からしてみたら昔取った杵柄―――と言う事もあり血でも騒いでしまったのだろう、しかしここはヒルダさんの元いた世界ではない、勝手は違うのだ…けれどそこをもう一枚の『盾“役”』でもあるマクドガルが、敵の注意を自分に集結させる“戦技アーツ”を使いそれに釣られてしまった猪型の魔獣を“タゲ”ったのだ、そしてマクドガルが耐えている間に僕が【処刑人の斧エクスキューショナー】という銘の武器を振りかざしそのまま猪の魔獣を仕留めた…


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「⦅ちょっとヒルダさんたら邪魔しないでもらえるかな⦆」

「⦅え~~~だって、だってさあーーー私だって獲物をめったんめったんのぎったんぎったんにしたいんだもぉ~ん⦆」

「⦅(めったんめったんのぎったんぎったんて●゛ャイアンかよ…)けど瑠偉ちゃんの言っている事ももっともだよ、ヒルダさんの“職業ジョブ”である『アーチャー』はステータス的に見ても“体力”や“耐久力”等は同じ後衛職の『ヒーラー』や『マジシャン』よりかは気持ち多めだからね、まあその分“器用さ”とか“素早さ”は目を見張るところがある…だからと言って前線に出てきちゃうと神殿送り死亡確定だし…⦆」

「⦅うへえ…なんなんそれえーこっちでの弓矢てちょー不遇じゃあーン⦆」


一応は、今回の“狩り”の対象であるファング・ボアは僕達の素材にはなってくれました…が、今は僕達で組んだPT内でのチャットでちょっとした反省会をしていると言う訳でありまして―――早速瑠偉ちゃんに怒られている訳です、そこで僕も多少なりのアドバイスをしてあげたわけなのですが、ここでちょっとヒルダさんが漏らした不満に瑠偉ちゃんが反応をしてしまいまして…


「⦅ねえヒルダさん、あなた今『こっち』って言っていましたよね、それにこの前は元いた世界では現役で冒険者をしていたとも、と言う事は『あっち』では勝手が違っていたんですか⦆」

「⦅ん~?まあーねえー、私も冒険者してた時にはメインでよく弓とか使ってたけどさ、私の本領は寧ろ『近接戦闘』、素早く獲物の懐に潜り込み―――ズバッ!とナイフで、スバッ!と手刀で、ズバッ!と蹴りで沈めてたもんよお~⦆」


ん~…あれ?『近接戦闘』でナイフが得意―――てのは判ったけど、『手刀』?『蹴り』?てかヒルダさんが得意としているのは寧ろ『徒手空拳』とか?!


「⦅いや、その前に疑問が…ねえヒルダさん、ヒルダさん間違いなく『アーチャー』なんだからさ、当然“素早さ”とか“器用さ”のステータスを中心に上げてるよね?⦆」

「⦅え?いや私は“力”に“防御力”と…あと“耐久力”中心なんだけど?⦆」


え~?あの、ちょっとそれ、『前衛職私達』のステータスの振り方!あーけどまあ…そう言うステータスの振り方をしちゃってたら前線に出て来たくもなっちゃうかー、けどーーーそれだったら“メイン職業ジョブ”の『アーチャー』の方はどうしてるってワケ?


「⦅あのぉ…ひと言言っていいかな?ヒルダさんそれ『前衛職僕達』のステータスの振り方だよ!ヒルダさんの本来の“職業ジョブ”は『アーチャー』でしょう?だったらそう言った系統のステータスの積み方をしなくっちゃ、そりゃPT組むのが僕達の時はそれでも構わないよ?けど僕達以外のPTだったら…⦆」

「⦅えーーーけど、どんなステータスの積み方しようが私の勝手じゃあ~ン、自由じゃあ~ン!ケントお前いつからそんなメンドクセー事言うようになったんだ?⦆」

「⦅面倒臭い事を言っているのは判るよ、現に僕だってそうだったもん…けれどね、このルールなんか明確に定められていない世界だとしてもルールって言うものはあるんだよ、けれどそれは何もゲームの運営会社側がお膳立てしてくれたものじゃない…そのルールは実際にプレイをしている僕達が決めたんだ、それも円滑に―――誰もが愉しめるようにと…⦆」


僕達がプレイをしている〖プログレッシブ・オンライン〗―――これはひと昔前まで流用されていた『家庭用コンシューマ版』とはワケが違い、『オンライン』上で(世界の)誰もが愉しめるように、ゲームの製作会社とネットゲーム専門の運営会社がタッグを組みサービスを提供している、それに運営会社が定めた『規程ルール』には『他のプレイヤーに迷惑のかからない様にプレイをしてください』とか―――主に全プレイヤーが機嫌を損ねることなく円滑に愉しんでもらえる事を前提としている、けれどそう言うのは飽くまで会社側が定めた事…実際にゲームをプレイしているプレイヤー僕達にしてみればそんな事は関係ない事だし、だからと言って各プレイヤー個人が好き勝手にしていればトラブルの元になるのは判っているのだ、だからこそ『暗黙の了解』が出来た―――それが今回の件にも関わっているのだ、『トラビアータ』や『マクドガル瑠偉ちゃん』の様な、“素早さ”を棄てて“力”や“体力”“防御力”“耐久力”を上げているプレイヤーは主に『前衛』で敵からの攻撃を防ぎ、凌ぎながら撃破をしていく―――そのお蔭で敵からの“注目ターゲット”を集め、『後衛』にいる『ヒーラー』や『マジシャン』を護って行く…それが『前衛職僕達』である『“盾”役』『“壁”役』の役目なのだ、しかし―――そこを『リーゼロッテヒルダさん』は『後衛職』でもあるのにステータスを『前衛職僕達』寄りにしてるだなんて…!事情をよく知っている僕達だからいいようなものの、そんな事が知られでもしたら一部のプレイヤーは黙っていられないだろう、だからこそ注意をしたのだが―――


「⦅わーかったよ、ちょーメンドクセー…そんな事言うのならあんた達と一緒に遊べやしないね⦆」


旋毛つむじを曲げてそのままログ・アウトしてしまった―――まあ…正論を述べても一部のプレイヤーは自分のしている事こそが正しいとしていて、そこを批難ひなんめいた事をされてしまうと激しく反応して来ることもある、僕も以前にはそう言う目に遭った事があるから言えることかもしれないんだけど、今回のヒルダさんはそれよりも軽め、まあ大人に叱られてしまった子供がと言った処かな―――て言うか…あれ?ヒルダさんて異世界では一国の王の后だったんだよね?


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


それから旋毛つむじを曲げてしまったヒルダさんは、僕の家に居候しているから会わないと言う事が出来ないのだけれど、気まずさもあってか口を利いていません、とは言っても僕が悪い事をしたワケでもないのになぁ…何なんだろうこの罪悪感にも似たような感じは、それに噂などで聞く処によると最近のヒルダさんは『三橋京子』とよく遊んでいるらしい、うん……僕の苦手な人種の一つである『ギャル』―――ヒルダさんも三橋京子に感化されて“色黒”なギャルになっちゃうし―――(けどダークエルフではありませんよ?)


しかし…何と言うか―――その噂を聞いた時からどうにも悪寒が止まらないのはどうしてだろう?最近天候が巡るましく変わっちゃっているから身体がついていけなくなっちゃったかな?


けれど―――『悪寒がする悪い予感』はある意味当たっていたのだ、それというのも……ある日のプレイの時に僕は瑠偉ちゃんと組んで大規模な『レイドボス戦』に挑もうとしていた。

『レイドボス』―――通常ポップしてくる『ファング・ボア』や『ゴブリン』と言った様な雑魚モブとは違い、“体力”や“力”“防御力”などケタ外れに多い、とても単独ソロではクリアできない様な―――そんな“敵”、そんな“敵”を撃破する為には1組2~4人までの『PT』を組み、総勢16人総当たりで挑むそんな『イベント戦』…(つまり4人PTだと4組、早い話がPTで挑むのが推奨されているのだ)そんなレイドボス戦に参加した時、丁度僕達の『組』に参加したのが……


「げえーっ、トラビアータにマクドガルじゃあーん」

「リーゼロッテ、お主も『グラント・ベヒーモス』戦に参加しとるのか…」

「はあー?なあーにいー?私が参加しちゃ悪いってルールでもあんのんかい」

「まあ待てよお2人さん、このレイドボス戦は今『イベント期間中』のタスクの一つでもあるんだ、それにこいつをこなせられなけりゃレア物をゲット出来ないしさ、まあ…今までの事を全部水に流して―――とまでは言えんが、せめてこの1戦は仲良くやって行こうや」


なんと、間の悪い所にリーゼロッテヒルダさんもこのグラント・ベヒーモスレイドボス戦に参加していた、何と言うか気まずいというか―――例え今はスルーはされてもログ・アウトしたらとやかく言われそうだなあ…それにヒルダさん、このグラント・ベヒーモスレイドボス戦は単独ソロでの参加なのかな?―――と思っていましたら…


「⦅ねえ健くん、ちょっとアレ見て―――⦆」

「⦅え?なに、アレって―――⦆」

「⦅ヒルダさんの隣りにいるの…それにヒルダさんは表示を見たらPTを組んでるわ、もしかしたら“彼女”が―――⦆」

「⦅げえっ?!まさかの【癒しの聖女】―――『ビショップ』の『ミザリア』?!“回復役ヒーラー”の中じゃ常に上位にランクしているという有名なプレイヤーとヒルダさんとがPTだなんて…⦆」


そう、ヒルダさんは何も単独ソロでレイドボス戦に参加をしているわけじゃなかった、僕達と一緒にプレイをしなくなったものと思われた彼女は、またどう言った経緯で僕達でさえ一目置くトップ・プレイヤーと仲良くなったのか…そう、今ヒルダさんはPTを組んでいた―――それも【癒しの聖女】とあざなされる“回復役ヒーラー”の中でも超のつく有名なプレイヤーと!


「の…のう、リーゼロッテよ、お、お主なぜにミザリアと一緒に組んでおる?」

「べえーっつにい?話してやんなくてもいいんだけどぉー、どーしても聞きたいって言うんなら『お願い』しててくんないと喋ってやんなあーい」


うわあ…ムカつくなあーーーギャルの口調その喋り方!しかし僕もどうして新人のヒルダさんがトップ・プレイヤーと仲良くなったのか知りたいため、『お願い』をするしかなかった…


「『お願いどうしても』……」

「へへーん、さあーてどうしよっかなあーーー」


ホント、ムカつくなああ!『お願い』してまで頼み込んでいるのに、なんなんだよおその態度!しかし、ヒルダさんとPTを組んでいる『ミザリア』なるトップ・プレイヤーは違っていた。


「リーゼロッテさん、そのような無体な事を言うのではありません、さきほどのあなた様からの要請も無茶なものだと思いましたが、わたくしとお会いした折にこのお2人から酷い事を言われたから―――と、多少は大目にみたものでしたが…」

「けど……判ったよ、ゴメン―――」


【癒しの聖女】とはよくも申したりしたもので、こうした感じのRPGでの“回復役ヒーラー”らしくおしとやかで物腰も柔らかい、まさに神聖な教会に仕えるという『ビショップ』さながらにしてそこにいるだけで癒されるようだ…そうだ、僕はこう言うのを待っていたんだ、ゲームの中とは言え戦闘に次ぐ戦闘で血生臭い部分もあるけれど、そんな僕達プレイヤーの荒んだココロを癒してくれる存在を僕は探していた……そしてそんなプレイヤーはここにこうしていた!しかも日頃横暴な言動の目立つヒルダさんが!?すごいぞ…この『ミザリア』と言うプレイヤー、あのヒルダさんがここまで大人しくなるなんて奇蹟だ!


「先程はどうも…わたくしと組んでいるリーゼロッテさんが失礼をいたしまして、ここはひとつどうかこのわたくしに免じて溜飲りゅういんなど下げて下されば幸いなのですが」

「あーいやいや、こっちはそんなに気をしておらんでな、それにこのレイドボス戦お主ほどの回復役ヒーラーが“いる”と“いない”とではだいぶ違うでな」

「あら、これは…うふふふ、わたくしもまだまだ腰掛けに過ぎませんので、それよりお2人の事は遠くまで聞き及んでおりますよ、トラビアータとマクドガルが組んで前線の“盾”なり“壁”なりなってくれれば後衛に控える“詠唱職わたくし達”も安心して職責を全うすることが出来ると」

「へえーーーオレ達もあんたらに聞こえるまでに有名になってるとはな、こいつは益々手は抜いてられんてヤツだな」

「おい、言葉は気を付けんかい―――お主の言っておることは手を抜いてプレイをしておるものと思われかねんぞ」

「や!こいつはしまったなあー、まあいつもは手を抜いてる訳じゃねえがよ、“パターン”が知れると、どうにも…なあ?」


勿論―――マクドガル瑠偉ちゃんが本気でそんな事を言っている訳じゃない、なにより彼女はいつも真剣に取り組んでいる、しかしこう言う言い方をするのも何らかの“探り”を入れるためでもあるのだ、確かに『ミザリア』と言うプレイヤーは僕達でも一目置くほどのトップ・プレイヤーだ、それも『前衛職』がのきを揃える中でも唯一の『後衛職』―――では一体何が彼女をトップ・プレイヤー足らしめたのだろうか、その理由としては簡単、一緒にプレイをしていると圧倒的にやり易いのだ、“回復役ヒーラー”の立ち回りは主としては『回復』『治療』『蘇生』だけれども実は『強化』もその内に入る、それに僕は知っている…ミザリアの本当の役回りロールは“回復役ヒーラー”ではなく“強化役バッファー”なのだと、僕も『メイントラビアータ』ではなくて『サブ』でミザリアと一緒にプレイをしたことがある、その時の彼女の『強化バフ』の緻密ちみつさには目を見張ったものだ、『強化バフ』は一度かけたらそれでお仕舞い―――と言う訳にはいかない、その効果には限りがあり時間が経つと消滅する…そして切れた効果を繋ぐようにまた再度―――と、時間を管理していないといけない、けれど彼女はそれを苦もなくやっていける、かけられた方もいつ時間経過によって消えたかすらも判らない内に『強化バフ』の効果が続いている事にさぞや驚く事だろう、けれどその事を知っていれば途切れる心配のない『強化バフ』の効果を気にせず前線を張れるのだ、しかもミザリアの恐ろしい所は『強化バフ』と同時に『弱化デバフ』も掛けていられるという処にある、そう味方には常に有利になる様に―――敵には常に不利になる様に―――それも途切れることなく間断かんだんなく…しかも味方の消耗度合いも見て『回復』や『治療』等も行えているのである、これで僕達も彼女の事を一目置く理由が判って来たというものだろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


だけど―――今回だけは違った…そう、僕達の『組』にはヒルダさんもいるのだ、はまった形が嫌いで、だからこそ奔放に振舞える…時にはその行動は変革を呼び込む―――けれどはそんな事をしていいわけじゃない、たった一人の勝手な行動が全体の動きを乱す可能性だってあるのだ。


では具体的に何が起こったのかと言うと―――


「ああっ!こりゃなにをしとるかあーこのバカモン!ワシらより前線に出るヤツがあるか!」

「はんッ!ちんたらやるのは性に合わないんでね―――それにこんなヤツ、ちょちょいのちょいーーーと!」

「あッ―――あいつ、折角オレ達が“注目ヘイト”の管理をしてるってのに…今のでさらっちまったぜ」

「なにっ?それはいかんな―――(…)のうミザリア殿、ちと頼みがあるのじゃが」

「なんでしょう」

「ワシにありったけの『強化バフ』を掛けてくれい、あのバカを嫌がってでもその首根っこ引っ捕まえて連れて帰らんといかんでな」

「そう言う事ならば―――承知しました」

「そこでマクドガルよ、お主にも頼みじゃ」

「聞かなくても判ってるけど―――なんだ?」

「しばらくの間ミザリア殿と“盾”役の兼任、任せた―――」

「ヒュー♪そいつはキツいな…ま、この一戦終わったらあんたのおごりってなら受けてやっても構わないぜ」

「フン―――判っとるようじゃのう、それじゃ行ってくる!」


“パターン”としては、僕達“盾”役がグラント・ベヒーモスからの攻撃を耐え凌ぎながらも体力を削り、そこからまた後衛にいる『マジシャン』や『アーチャー』が更に削る、しかし無傷とはいかないので『ビショップ』や『クレリック』が傷付いた仲間達を癒す、これを繰り返す事によって通常の雑魚モブよりも数十倍も多い体力を削り切るのが一つのセオリーでもあるのだ、けれどこのやり方は確実だけれど時間がかかる…その事に痺れを切らしたヒルダさんが僕からの制止も聞かず“盾”役である僕達よりも前線に躍り出た、そこで僕としてはミザリアさんに頼み込んで死なない様に『強化バフ』を掛けてもらい、リーゼロッテヒルダさんを連れ戻す作戦に出たのだ。


「おおおおーーーい生きとるかあー!」

「ああ、なんだ―――ケントじゃん、なにしにきたんダヨ」

「あのなあ…お主―――お主の事を心配してきてやってんのにはないじゃろ…あとそれとワシの“本名リアル”を口にするのは止めい」

「へえーーー心配ねえ…けどこの程度で心配されてる私って、“ない”ね」

「なんじゃと?それが―――」

「私ってさ、“向う”じゃこのデカブツグラント・ベヒーモスさえ可愛らしいと思えるほどの化け物と渡り合ってきたんだよ、国を―――世界を護る為に、しかもその化け物ってのはさ、その世界原産じゃないってワケ、これどういう意味か判る?そう…その世界の原産じゃないとしたら『異世界』の原産―――その“通称”を『ラプラス』と言うヤツから護る為に私はたった独りで立ち向かう必要があったんだ」


それは…僕ですら知らない、異世界出身者の『ヒルデガルド』だからこそ語る事の出来るものだった、それに―――元いた世界の原産の化け物じゃない、そことは異世界の原産である化け物『ラプラス』と言うのは一体…?


「文字通りの化け物だよ―――他の魔物や魔獣達の好い所だけを寄せ集めて作られた…それにステータスにしても笑えちゃうくらいに高くてね、一国の軍隊総動員しても“無理”って言ったら、判る?」

「そ―――そんなの…グラント・ベヒーモスの比じゃ…」

「だろうね、けれどそいつを私は独りでやってのけていた―――確かに私は弓を好むよ?けれどそれじゃ物足りない、他の人達に…国民達に迷惑かけるくらいなら私が―――そして私はが出来る、【閉塞した世界に躍動する“光”】である“私”なら―――ね…」

「ちょっと待て!なんじゃそれは…お主はこのゲームを始めてからまだ1ヶ月も経っておらんじゃろう、なのにもう“称号”付きじゃと?いやまて、それよりその“称号”―――運営が用意しているものでは…ない?」

「違うよ、ケント―――こそは本当の私の『呼び名なまえ』…ヒルデガルドて言うのも私の本当の『呼び名なまえ』を判り辛くさせるモノ、それに心配してくれたのはありがたいんだけどさぁ…私にしたらこのデカブツグラント・ベヒーモス如き、この拳ひとつあれば十分さ」


それは例えていうなら『チート』…僕達“前衛職”だって鍛え上げた武器で魔獣などを討伐するものなのに、なのに異世界のエルフの王国のお后様は有言実行とばかりに本当に拳ひとつでグラント・ベヒーモスを倒したのだ(弓は…使ってません、念の為)。


なにもかもが規格外―――そんなヒルダさんにはこのゲームで通用している称号が新たに着きました、【素手殺戮ステゴロ上等】…武器ではなく鍛え抜かれた身体で敵を殲滅する、まあ…そう言う事です、というか―――何度も言うけどヒルダさんて王侯貴族なんですよねえ?そんな身分の人が“格闘”が得意って…そう言えばヒルダさん自分の国の不正貴族と対立している時に暴力に訴えなかったよ……ねえ?

(*その事について後日確認取った所、『一発ブン殴って次から睨んだメンチ切ったら大人しくなった』そうで…)





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