第3話 どうやら“エロ”フが降臨してしまったみたいです

今現在私は以前いた世界とは異なる世界に身を置いている―――そしてこれまでで私が実感出来ている事、それは…


「(もしかしてこの世界って魔力がないのか?)」


何度も言うようだが以前までいた世界は、いわゆるところの『剣と魔法』が主体だった世界だ、そう―――以前いた世界では『魔力』が存在していたのだ、それがケントの世界に転移して来てまだ2日だけれども…どうやらこの世界には魔力は存在していないみたいだった。 これはちょっと困ったことになったなあー、それと言うのも私の事はケントと初対面をした時に判る事なのだが、エルフ“タイプ”のなのだ(まあ…“タイプ”と言うのは置いておくとして、大別するとエルフと言う事でいいだろう)。 そう、つまりエルフの売りとは強力な魔力と膨大な量を保有する事、けれどもこの世界には魔力が―――それってことは私のアドバンテージが生かせられないってことなのかあ~?!いや、そんなはずはない―――そんな事考えたくもない…探せばきっとどこかにあるんだ、『魔力は本当にあったんだ!』と声高に主張したいいーーー!


てなわけでして、私には時間が必要なのだ―――それも考える時間が…だから、さっきケントから『構わないでくれ!』と、ちびしい~事を言われちゃったけれども私にしてみればこれはまたとない機会だと、そう捉える事にしたのだ。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


そして僕は、しきりに後悔をしていました。 ヒルダさんが僕の事を思って行動してくれた事は有り難い…有り難かったけれども、ちょっと(ちょっと?)言葉が過激すぎたりしたのでひとまずは距離を置きたかったんです。 けれど僕は『もういいよ…放っといてくれよ―――僕なんかに構わないでくれえ~!』なんて暴言まがいの事をいちゃったんです、あれはさすがになかったかなあ…あんなに強い言葉なんかじゃなくてもっと言い様があっただろうに、それに女性に対して言っていい言葉じゃなかったようにも思える、家に帰ったら謝らないとなあ―――


は、あ…それよりも家に帰ったとして彼女は果たして家にいるのだろうか、こんな僕を見放していなくなっているのかもしれない―――僕以外に視えていないとは言え、折角できた僕のイマジナリーフレンドなのに…僕の方から居辛いづらくさせてしまったのだ、これって自業自得だよなあ…


そして僕は帰宅した―――そしたら案の定…


僕の部屋の、僕の机の上には一片の紙切れが置いてあった。 なんて綴ってあるのか判らない―――でもこれって、異世界の言語なんだろうなあ…もしかするとエルフ語なのかもしれない、けれど判らなくても判った気がしてきた、『探さないでください』―――たぶん、そういう意味で書かれてあったんだろうと思う…そりゃそうだろう、僕の為を思ってしてくれたことなのに僕の方から『必要ない』と言ってしまった様なもんだから…だから僕は次の日が来ても学校に登校しなかったのだ。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


今日も休み―――これって絶対あの時の事が関係しているわね。 私はハッキリ言って彼の事が心配だ、一緒の高校になって休みがちになった時、無理矢理にでも登校させようと私が迎えに行ったこともあるけれど、やはりと言うべきか無理矢理登校させてしまうと決まって途中で帰宅をしてしまう、これはやはり彼自身の意志でもって登校をしてもらわないとダメだと思い待つようにしたのだけど…


そんな彼が久々に登校をした―――けれどもすぐ早々に彼の事をイジメのターゲットにしているグループに目を付けられ早速にターゲットにされてしまった、私以外の他の皆はガラの悪い連中に目を付けられたくなくて見て見ぬふりを決め込んでいる様だけど、私は昔からの彼の事を知っているからそう言う訳にはいかなかった。 けれどもヤツらは自分達が気分よく弱い者をイジメている処を邪魔されたものだから私にも目を付けだした…けれどそこで健くんの奇行―――誰もいない壁の方に向かって話し出している…もう少し詳しく説明するならどこか説得している様な?しかもその必死さに健くんの事をイジメようとしていたガラの悪い連中も気味が悪くなったみたいで、それ以上彼とは関わっては来なかったのだ。

それに……斯く言う私も―――


健くんの趣味の事を私は知っている、世にいう『オタク』趣向しゅこうだ。 何でも風の噂で聞くのには、最近の彼は『ラノベ』や『ネトゲ』等にハマっているらしい…そうした二次創作活動の中の設定でよく出てくるモノに、ああした…誰もいないのに誰かに話しかけている様な場面があるらしいのだ。 それにそう言った作品の大抵の主人公は現実世界とは目をそむけ、異世界に行きたがるらしいのだ。


健くんも、もしかしたらこの現実世界に嫌気がさして異世界へと行っちゃうのかな―――それはちょっと哀しい…寂しい…だって健くんは、私の―――…


だとしたなら、健くんの異世界行きを阻止できるのは私しかいない、周りは健くんの敵だらけだけど私だけでも味方になってあげないと…だから私は早速翌日には行動に移したのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お早うございまあーーーす。」 

「あら、誰かと思えば瑠偉ちゃん、ちょっと待っててね。 健闘―――健闘―――瑠偉ちゃんがお迎えに来てるわよー!」


朝も早くから、母さんが僕を呼ぶ大声で僕は目を醒ました。 瑠偉…瑠偉がまた高校入学してから数週間も経たない内に不登校になった僕を無理矢理登校させる為に迎えに来たって言うのか―――そんな事をしても無駄なのになあ…そう思いつつ僕はだるい身体を起こさずにいた―――


「こぉら健くん、いつまで寝てるの遅刻しちゃうぞッ。」 「(えっ)うわあああ!っ…高っ、!なんで僕の部屋なんかにいい?」 「お母さんからも頼まれたのよ、『あの子瑠偉ちゃんなら言う事を聞くから』って、それに―――健くんこのままじゃ1学期の出席日数足らないかもしれないぞう?」


お、幼馴染みとは言え―――女の子が僕の部屋に…『オタク』である僕の部屋に上がって、キタアア~! ど、どうしよう―――瑠偉とは幼馴染みとは言え、目にしたら幻滅されるだろうなああ~~…それにもし、瑠偉とも距離置かれたらさすがの僕でも生きていけない、それだけのモノがこの部屋には存在しているのだ!!


勢いとは言え、つい健くんの部屋に上がり込んじゃったけど―――私が最後に健くんの部屋に上がったのは小学校の低学年の時だ、しかもその時と今とでは明らかに趣味趣向は違ってきている。 それに―――まあ…私の方でも世にいう『オタク』の事は聞き及んで知っている、世間一般的に言われているのは、大抵の男性の『オタク』とはキモイとされていて、ではどうなにがキモイのかと言うと…ナニヤラ如何いかがわしい物体がそこら中に陳列されていて、おまけにそうしたたぐいの出版物も散雑されている、他人からどう思われているかなど全く気にもしないでいて、その上一向に掃除しようとしない…そうした事をかんがみてみると、まだまだ健くんは救いようはあるわね。 こうして一見すると如何いかがわしいたぐい(18禁)の出版物は(私の見える範囲では確認され)ないし、陳列されている“お人形さん”も―――まあ可愛らしいとはしておきましょう…うん、よし、全然セーフだわ。


「さあ、行くわよ学校に―――」 「え?へ?で、でも高坂さん…僕の部屋を見て何とも思わないの?」 「健くんの部屋を見て?うーーーん、健康的な一男児の部屋なんじゃないかなあ。 まあ私が見て特にどうと言う事はないわよ。」


あ、れ?僕の趣味ってまだスタンダードよりかはソフトなのかなあ? いや…でも……今、表に出てるのなんてほんの氷山の一角なんだよ? 僕の“オタカラ”は別の処に隠してある―――なんて言えないよなあ…それに、幼馴染みの瑠偉が『気にしない』と言ってくれたのだ、同じ世代の女子には相手にもされないと思っていた僕にとって高坂瑠偉とは最後の砦の様なものだったのだ―――だから、僕は……


だから僕は、その日は瑠偉と一緒に学校に行くことにした。 けれど…行ったのは良かったんだけれど―――


「な゛っ…こっ、これは―――」 「……。」


教室に入ってみると、僕と瑠偉ちゃんの名前が巨大な相合傘で描かれていたのだ。 あいつら、あのまま大人しく引き下がってくれたと思っていたのに…まさかこんな手で仕返しをしてくるなんて…


「ゴメン―――高坂…さん。」 「何を、何に対して謝っているのか判らないけれど…陰険よねえ、まあ私達の仲を認めてくれると言うなら素直に受け止めておいてあげるわ。」「で、でも―――高坂さん…」 「それに私達は幼馴染、幼い頃には健くんから『将来結婚しよう!』なんて言われた事もあるわ、こんな事を描いたのは誰だか詮索はしたくないけど、私達の事を揶揄からかいたいのならお生憎様あいにくさま―――ってところかしらね。」


ええええ、それ幼い頃に告白した事言っちゃうんかあーーーい!今でこそあの事は僕の中での黒歴史だと思っているのにいい…けれど、その時の彼女の啖呵たんか恰好カッコウ好かった、お蔭で救われた気持ちとなったものだったが、逆に男子生徒からは刺す様な視線が痛かった…。

それにしても、あいつらの嫌がらせにも似た行為を―――それを逆手にとっての意趣返しにしてしまうなんて、こんな子が僕の―――僕のおおおっ!


「おいおい、見てみろよ見せつけてくれんなあ~。」 「ちッ、あんなモブダサ男と付き合えるなんて―――案外男を見る目がないのかもなあ?」 「よおよお、そんなヤツ早々に乗り換えてオレにしちゃわなあ~い?」


「あ、あのおーーー高坂さん、あんなこと言われてるけど…」 「いいのよ、言わせておきなさい。 それにこれで晴れて公認になったわけだし、あの落書きには感謝しないとね。」


ガ…ガアールフレンド―――て事でいい、のかなあ~? それより瑠偉て堂々としてると言うか―――敢えての批判的な事もそのまま受け流してしまえると言うか~~~


ど、ど、どおーーーしよ~う!あの落書き見た時流石に頭に来ちゃって、それが売り文句に買い文句になっちゃってをおおお~~ッ! な、なんかもう、健くんの顔まともに見れやしない…きっと今の私って顔真っ赤になってるんでしょうね、そ……それにい~~~あの幼かった頃の約束事なんて私達だけの秘密だったのにい~~ーーー

それを、キャーーー言っちゃったあ~他人前ひとまえでえ! 私達の秘密を暴露しちゃった事に、健くん怒ってないかなあーーー私としたらあんな落書きを描いた奴らへの意趣返しのつもりだったんだけれど…ヤリ過ぎちゃった感も否めなくもないといいますかあ……


「あっ、あの―――こっ、この辺でいいよ…高坂さん。」 「そっ、そう、そう―――ね、じゃあまた明日迎えに行くからね。」

「う、うん。」 「あのっ、」 「うん?どうしたんだい。」 「私の事、『高坂さん』だなんて…昔みたいに名前で呼んでくれないの。」 「あっ、ああゴメン。」 「ううん、別に責めてるつもりじゃないから…」 「そう、だね―――判った、それじゃこれから前向きに考えてみるよ。」


『前向きに考えてみる』…かあーーー私としては『そうするよ』と言って欲しかったんだけどなあ~。 けれどまあ、小さくても大いなる一歩と捉えますか―――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


こうして―――“彼”と“彼女”とのあいだに進展はありました。 今までは何一つ動かなかった―――“不動”の体現だったはずの“彼”と“彼女”のあいだが、ほんの少しとは言え進展し《うごい》たのです。


そして―――この“不動うごかざる”の出来事が進展し《うごい》た…これを受けてか、ある畏るべき存在が目覚めてしまったのだ…


「フッフフフフ―――ハッハハハハ……アーーーーッハッハハハハア! 木曾の山麓に山籠もりをして早一週間…諦めかけた私だったがやはり存在していたのだ! 『I need more Power』…クックック、先人達は良い事を仰ったものだ…『諦めを拒絶した時、人は人道じんどうを踏破する権利を有する』―――諦めずに良かった…最初は余りにもの反応のとぼしさに『ない』ものと思ったものだったが…やはり『魔力』は存在しえた!これでようやく私の本領発揮―――としておこうか…」


『魔力』―――この現実世界に於いて有り得べからざるの力…世のことわりを改変させ、自分の思いのままに出来る力―――ただし、この世界にも魔力は『ある』とはしていたが、それは微々たるものでしかなく私でさえ時間をかけてようやく魔力の発生源―――『龍脈』を探し当てるに至れたのだ。

それにしても…時間をかけた割にはこれだけか―――とは言えまあ贅沢を言うのはよしとこう、まだ『ある』だけてな事で、ね。 そこで私は早速この『龍脈』発生地をマーキングしといて、『龍脈』の流れを私自身に向かわせるようにしたのだ。


これで…よし―――あとは体内に充足するのを待つだけだわね。


そして私は戻って来た! 一時はケントに怒られちゃって嫌われちゃったかも知んないけれど、私はそんなことは全然ぜえ~んぜん気にしてません! だってこの世界には異世界から来たのは私しかいないみたいだしぃ?それに知ってる?エルフって寂しかったら死んじゃうんだよ?

(※そんなウサギみたいな事を言われても…)


まあ余計な茶々は無視しとくとしてえ…お邪魔しまあ~~~

クフフ、寝てる寝てる、にしてもまあなんて無防備むぼーびで初々しい寝顔なんでしょお…愛いヤツじやのう~~


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


そして朝―――僕は目が覚めた…それも自然にではなくて眠りが浅くなった時にふと違和感を感じたからだ。 しかも頭も寝惚けててあまり“今”と言う状況を把握できていない―――う~~~ん…それに僕はいつも一人で寝ているからベッドで“もそもそ”と動いてる…ってことは?


「(ん…っ、んーーー……あれ?たしかこのって…)ヒル……ダ―――さ、ん?」 「んっ、オハヨー…」 「あのお…ちょっと、待って?なんでヒルダさんがここにいるの?僕と一緒に寝ているの?」 「ん~?アレえ~?書置きしてなかったあ…?『しばらく修行の旅に出ます、心配しないでください』つて。」


え゛――――なんだっ、てえ~!だったら僕の勘違い?! 僕は僕の暴言の所為せいでヒルダさんを傷付けてしまい、その所為せいで僕の目の前から消えた視えなくなったとおもってたのにーーーそれが『修業』?『修業』って、一体何の……


「そんなの初めて知ったよ―――てかまぎらわしいことしないでよ、僕、ヒルダさんが僕の暴言に気を落としてそれで僕の前からいなくなったもんだと…」 「…はあ?暴言?が?冗談ぢょーだんぶっこいちゃいけませんやダンナ、私が不正貴族共とりあってた時にゃ筆舌し難い言葉の応酬だったんだづえ~?そんなのに比べりゃケントの暴言なんてカワイイ、カワイイ。」


そう―――だっ、たん、だ…気にしていないと言うならひとまず安心かな、けども今後は言葉には気を付けようと思った、だって『親しき仲にも礼儀あり』て言うでしょ。

それより…いつも起きてた時間より早く起きちゃったなあ、かと言って二度寝も出来ないし……


しかし僕はを受けられないでいた―――それというのも朝目覚めてみれば僕の前から姿を消したはずのヒルダさんが僕のベッドで一緒に寝ているし……いや、問題はそこじゃない、問題は―――そこじゃなかったんだ!だって肌色のパジャマなんて…存在しな―――


「あの…それよりヒルダさん?少し聞きたいんだけれどヒルダさんて寝る時どうしてるのかな?」 「んあ?寝る時?私ゃ寝る時は大概全裸―――」


やっぱそうなんかあーーー! 確かに僕もラノベの展開とかでを目にしたことがあるけれど、創作物で目にするのと実際この眼で目にするのとでは訳が違う!しかもヒルダさんてば初めて会ってから早々僕がお風呂に入ってた時でも無断侵入してきた前科があるしい~!たっ、確かに大変素晴らしいからだ付きでしたよ?あんなの正視してたらそりゃ僕の下半身なんて言う事聞かなくなる…


なあーーーんてな事を思ってる顔だなぁ?ありゃ…

フッフッフ、よいではないか、よいでわないか、健全たれよ若人わこうどよ―――このグンバツのプロポーションを誇る私の裸体の前では男なんて生き物はただ平伏すのみ!さあ~~~ーーー崇め奉れい!私の裸体を゛!


自分の身体に余程自信があるのか、彼女は全然―――全くと言っていいほど隠そうとはしなかった。 それを僕は両手で顔を覆い隠す事でしか抵抗できないでいたが…僕はを失念してしまっていた、ただ一つ、弁解の余地があるのならさせてほしい…あのさあ!普通に高校生生活を送ってて、全裸の美女(エルフ)が知らぬ間に僕の隣りで寝ているかあ~?そんな超絶ミステリアスな出来事なんて一生に一度あるか判らない、いやないと言い切っていいだろう!だけど現実としてはここにいる―――恥ずかしげもなく恥部を隠そうともしないでふんぞり返ってる美女(エルフ)が!


そんなこともあり、僕はすっかりと忘れてしまっていたのです―――え?何が…って? それは―――…


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「おはようございまあーーーす。」 「あら瑠偉ちゃん、悪いわねえいつもいつも…」 「いえ、でも健くんが学校に来てくれれば私のしてる事も無駄ではありませんからね。」


落書きの件から私と健くんとはお付き合いしている事になったみたいだ。 ま、まあーーー本来はここまでなるとは思ってみなかったけれども、結果オーライて感じよね。 それに登校する際私がお迎えに上がるのも常態化となって来た、本来ならもう私がお迎えに上がらなくても、健くんがイジメられる事はないから必要ないんだけれどね。

だけど―――…の様にまだベッドで寝そべっているものと思い、の様に健くんのお部屋にお邪魔をしてみたら…


「ヒルダさああ~ん、判り―――判りましたから、取り敢えず前を隠しましょうよう!」 「前にも言ったことがあるんだけれども…父母より与えられしこの身体―――どこの誰に見られようが恥ずかしい事はない、寧ろ私は私の身体に誇りを持っているのだあ~ッハッハハア!」


えっ―――これ、一体ナニ?


一糸纏わぬ何処どこぞの誰とも知れない美女が、仁王立ちで私の健くんの前に…私の健くんの前にいい~~~!


「ネエ…健クン?コノ女―――ダアレ?ナノ…」


「(はあ゛お゛うっ!)瑠っ―――高坂…さん!?」 「ん゛~?だあーれだあ~?」


「ネエ…健クンテバア―――コノ女、一体ダレナノヨ…」


「あ、あ゛っ―――ち、違うんだ!誤解…そう誤解なんだよ!高坂さん!」


「ゴカイ…ソウ言エバ健クン私ノコト、瑠偉チャンテ呼ンデクレルンジャナカッタノ?」


やっ―――ヤバイ…聞く耳を持ってない!それにこんな瑠偉見たことない! それにしても状況は最悪だ…あの一件以来毎朝僕を迎えに来てくれている瑠偉の事をすっかりと失念してただなんて…それもこれも、全裸で隠そうともしないヒルダさんが悪いんだああ~~っ!


「なあんだ、誰かと思ったらケントの嫁じゃん。」


え゛っ―――


「ヒルダさああん!あんたなんて事言ってるんだあ?ぼ、僕と瑠偉とはまだ―――」


えっ―――


「私が健くんのお嫁さん?そそそそそそそんな、ま、まままままだ私達お付き合いしてそんな時間経ってないのに…」


「フッ―――お嬢さん…付き合った時間がどうだなんて…そんな些細な事言ってちゃいつまでたっても出来やしないぜ…(結婚が)」(イケボ)


な―――なんて漢前おとこまえな発言をする美女なの!? そうよ…その通り、あなたの言っている事は全く以てその通りだわ!

「そうよ、その通りだわ!だから健くんこれから私達結婚を前提としたお付き合いを始めましょう!」

「その前に……冷静になりましょう、。」

「えっ、あっ―――わ、私ったらなんて事を…」


私が焚き付けてやったにもかかわらず、冷静だな―――ケントは…ふむ、これは一筋縄ではいかないと見た。 ぬぁ~らば手を替え品を替え、あらゆる面からこの娘をサポートしてあげなくちゃなりませんかなあ~?ゲッヘッヘ。(最早悪人にしか思えないような悪い顔)





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