アリアとノア
@yu_____zuka
アリアとノア
むかしむかしある森の奥深くにとっても美しい女の子がいました。彼女の名はアリア。素敵なツリーハウスで動物たちと一緒に暮らしています。アリアは歌とダンスが大好き。ほら、今もアリアの歌が森の奥から聴こえてきます。
「〜♪。あら小鳥さん!おはよう!鹿さんも!」
今日も元気に森の仲間達に手を振るアリア。楽しそうです。
「おはよう!アリア!いつもにましてゴキゲンだね!今日は何かあるのかい?」
アリアの親友であるネズミのノアが起きてきました。
「おはよう!ノア!どうしていつもよりゴキゲンだとわかるの?」
「そりゃ、いつもより早起きだし、それに、歌声が大きいし、今もステップを踏んでいるじゃないか!気づいていなかったのか?」
アリアは無意識のうちの行動に驚きながらも、その胸のときめきを抑えていられませんでした。
「だって、今日は私が冬から作っていたドレスをようやくみんなに見せられるのよ!」
変わらず足でステップを踏みながら言いました。
「あのドレスを!」
朝食であるパンのみみをかじりながら、ノアは目を見開きました。この前の冬、今までノアたちとドレスを作っていたアリアが、自分の力だけで自分のドレスを作ってみたいと言い出したのです。それは親友のノアでさえも、完成までは見ることが許されなかったものでした。
「じゃあ、今日見ることができるってことかい?」
ノアは興味津々で、彼女のもとにかけていきました。
「ええ、そうよ。森のみんなを呼んでお披露目するの。」
「さあ、待てないわ!早速みんなを呼びましょう!」
スキップしながら、アリアは森中に響く声で歌いながら呼びかけました。
そうすると小鳥の親子、双子のかめ、ワニのカップルまでもがアリアの声に誘われてツリーハウスにやってきました。
「みんな、集まってくれてありがとう!今日は私が作ったドレスをみんなに見て欲しいの!いいかしら?」
みんな一斉に頷いて、手を叩いてアリアのドレスを楽しみにしています。
「じゃあいくわね?3、2、1!」
ドレスを包んでいた布がとれました。そこにはアリアの目の色と同じ薄い青色のきれいなオーガンジーの光る青いドレスがありました。
「アリア!すごいよ!キラキラしてて妖精のようだよ。」
ノアはその姿にうっとりしています。みんな次々と水の妖精のような美しいドレスに心奪われていきます。
「ところで、これはいつ着るんだ?」
ノアは以前からわざわざアリア自身の手で作ったドレスの使い道が気になっていました。アリアと共に工作をするのが好きだからです。
「このドレスは王子様と踊るためのものなの!」
みんなは首を傾げた。それもそのはず、王子がいるリュボーフ王国は森から離れていて、アリアが森の中から出たことがないのを誰もが知っているからです。
「王国はここから結構距離があるよ。王子に会ったことがあるのかい?」
「ええ、この前の冬魔女の池で!とっても素敵な時間だったわ。」
目を輝かせながら言うアリア。
「それでもう一度どうやって会うんだ?」
ノアの問いにアリアは戸惑っています。考えていなかったのでしょうか。
「わ、忘れてたわ。どうやって会えばいいのかしら?」
「王国に行くしかないんじゃないか?」
この会話を聞いていた郵便屋のハトが、王国で近々国民を集めたパーティが行われることを教えてくれました。アリアたちはそこにドレスを着ていくことにしました。アリアのドレスを汚すまいと、アリアの足として、友達の馬のエレナが共に行こうと立候補してくれました。
翌日アリア一行は出発し、まずは道中にある王子と出会った魔女の池に向かいました。魔女の池とはその名の通り魔女の魔法がかかった池のことです。
「魔女の池ってほんとに行かなくちゃダメ?」
ノアが今にも泣きそうな怯えた顔で言います。どうやらノアは魔女の池が怖いようです。しかし、アリアは魔女の池に何度も行っていますが、変わったところは何もないと言います。
「ノアったらいつも魔女の池を嫌がるわね。どうして?魔法がかかってるというけど、何もないわよ?」
アリアが安心させようとしますが、
「もしかしたら、知らない間に毒を吸っちゃってるのかも。」
ノアはまだ不安そうです。
そんなことを言っている間に着いてしまいました。魔女の池の周りには木が生い茂り、ほとりには綺麗な青や紫の花が咲いています。アリアはこの花たちが大好きです。しかし、王子様の姿はありません。アリアは落ち込みながらも、先を急ぐため魔女の池を発ちました。
無事アリアたちは森を抜け、王国につきました。
「アリア、どうだい?初めての森の外は?」
「小さなお星さまがいっぱいあるわ。」
アリアは森にはない王国の明かりに目を輝かせています。アリアはパーティの会場を教えてもらうためにお花を売っている婦人に声をかけました。
「あの!そこのお方!今晩パーティーがあるとお聞きしたのですけど。」
「パーティ?何を言っているんだいお嬢ちゃん。今晩は4年前に行方不明になった王子様の発見と無事を願う日さ。」
婦人の回答に一行は唖然としました。するとノアが声色を変えて
「帰るぞ。アリア。ここは王子様はいない。」
と強い口調で言い出しました。
「ええ、だけど、私は前王子様に会ったわ。」
アリアはまだ戸惑っています。後ろにいた兵士がアリアの発言を聞いていたようで
「お嬢さん。王子様に会ったのかい?」
「ええ、2ヶ月ほど前に」
兵士から詳しい話を聞かせてほしいと言われましたが、ノアは帰るぞと言って聞きません。ついにノアはエレナの尻を蹴り上げ、アリアを無理やりエレナに乗せて、森に帰らせようとしました。
「エレナ!落ち着いて!ノア!どうしてこんなことをするの!」
アリアは声を荒げました。ノアは黙ったままです。
「もう絶交よ!」
とアリアはノアが乗っていた肩を払ってしまいました。そして、ノアはバランスを崩し落ちてしまいました。ちょうどそこは魔女の池でした。
「ノア!私ったらなんてことを。」
ノアの姿はそこにはありません。しかし、そこにはアリアが出会った王子様が立っていました。アリアは暴走するエレナをなだめ、共に魔女の池に戻りました。
アリアは言葉が出ません。すると王子が
「俺が王子だったんだ。騙すつもりはなかった。ただアリアの近くにいたかった。俺は一国の王子だから、ネズミの姿でなければ、アリアの近くにいられないと思ったんだ。だから、ずっと隠してきた。4年前俺は国家転覆を図る魔女にさらわれ、ネズミの姿に変えられた。そして、死に際を彷徨っているところをアリアに助けられたんだ。アリアの美しい心が大好きなんだ。」
そんな甘い言葉をかけられて、アリアは顔が真っ赤になってしまいました。
「わがままだが、王国に一緒に戻ってはくれないだろうか?」
そんな問いにアリアは涙ぐみながら承諾しました。
2人と馬の後ろ姿は池にキラキラと映っていました。
アリアとノア @yu_____zuka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます