【KAC20251】まほろば 〜君が俺に教えてくれたこと〜

マクスウェルの仔猫

もう一度


「爺ちゃん、来たよ」

「来たか。精が出るのう」

「蔵、また見てもいい?」

「いいぞ。おーい、婆さんや! 咲哉さくやに蔵のカギな!」


 何か。

 少しでも、桜子の手掛かりが欲しい。


「はあいはい。咲いらっしゃい。蔵のお宝探しが終わったらご飯の用意しておくから、お腹をいっぱいかせておいで」

「あ、うん。ありがと」

「あと雛人形があったら蔵の手前に寄せておいてちょうだいね」

「うん。わかった」


 雛祭り。

 つまり、あれから一年。


 胸が苦しい。



「けほっ。んん……ほこりっぽ。空気の入れ替えしなきゃ」 


 桜子さくらこの時代と繋がっていた鏡。


 似たようなのはいくつかあった。だけど、あの鏡のように漢字の数字が刻まれたものがない。


 もう一度。

 あの笑顔をもう一度。


「あ、雛人形」


 あった。

 まとめて入り口の近くに置いておけばいいか。





『えー、お雛様やんか! よう見せて!』




 

 平安時代には、もう雛祭りがあったのを聞いた時は驚いた。


 神社の階段いっぱいに並ぶひな人形の画像を見せたら、桜子も驚いてたけど『うっとこのがすごいで!』とかドヤ顔してたな。


 鏡越しに神社を見せてもらったけど、上が見えないレベルの土の段差にぎっしりと並ぶ雛人形を想像したらクラクラ来た。怖かったな。





『うわあ! 何で頭にオウム乗せとるん?!』





 オウムじゃないっての、金なだけじゃんか。


 ……黒髪にしたんだ、桜子みたいに。





『サクヤって忌み名なん?! ううう、うちは教えられへんで! 御門みかどにお仕えする為の大事な身体や! あ、アンタまさかうちに祟りを?!』 





 平安時代、本名は家族くらいしか知らないって初めて知ったよ。祟るかっての。好きな女子の名前、知りたいじゃんか。




『……桜子』

『え?』

『うちの忌み名や』

『え! い、いいの?!』





















『うちのこと、忘れんといて』






















(昨日もダメだった。くそ! また週末に蔵に行って……<桜子さくらこ>、<桜子おうし>……このタグじゃやっぱり引っかからない)


「今日は転校生を紹介しまーす!」

「「「いえーい!」」」

「え? 地味子?」

「前髪ヤバくね? 前見えんの?」

「髪なっが! さらっさら!」


(……桜子。桜子……せめて、せめて情報だけでも。……泣くな! 桜子に笑われんぞ!)





















 サクヤ、見っけた。





















 うちのこと、覚えとるかな?

 



















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