【KAC20251】まほろば 〜君が俺に教えてくれたこと〜
マクスウェルの仔猫
もう一度
「爺ちゃん、来たよ」
「来たか。精が出るのう」
「蔵、また見てもいい?」
「いいぞ。おーい、婆さんや!
何か。
少しでも、桜子の手掛かりが欲しい。
「はあいはい。咲いらっしゃい。蔵のお宝探しが終わったらご飯の用意しておくから、お腹をいっぱい
「あ、うん。ありがと」
「あと雛人形があったら蔵の手前に寄せておいてちょうだいね」
「うん。わかった」
雛祭り。
つまり、あれから一年。
胸が苦しい。
●
「けほっ。んん……
似たようなのはいくつかあった。だけど、あの鏡のように漢字の数字が刻まれたものがない。
もう一度。
あの笑顔をもう一度。
「あ、雛人形」
あった。
まとめて入り口の近くに置いておけばいいか。
●
『えー、お雛様やんか! よう見せて!』
●
平安時代には、もう雛祭りがあったのを聞いた時は驚いた。
神社の階段いっぱいに並ぶひな人形の画像を見せたら、桜子も驚いてたけど『うっとこのがすごいで!』とかドヤ顔してたな。
鏡越しに神社を見せてもらったけど、上が見えないレベルの土の段差にぎっしりと並ぶ雛人形を想像したらクラクラ来た。怖かったな。
●
『うわあ! 何で頭にオウム乗せとるん?!』
●
オウムじゃないっての、金
……黒髪にしたんだ、桜子みたいに。
●
『サクヤって忌み名なん?! ううう、うちは教えられへんで!
●
平安時代、本名は家族くらいしか知らないって初めて知ったよ。祟るかっての。好きな女子の名前、知りたいじゃんか。
●
『……桜子』
『え?』
『うちの忌み名や』
『え! い、いいの?!』
『うちのこと、忘れんといて』
●
(昨日もダメだった。くそ! また週末に蔵に行って……<
「今日は転校生を紹介しまーす!」
「「「いえーい!」」」
「え? 地味子?」
「前髪ヤバくね? 前見えんの?」
「髪なっが! さらっさら!」
(……桜子。桜子……せめて、せめて情報だけでも。……泣くな! 桜子に笑われんぞ!)
●
サクヤ、見っけた。
うちのこと、覚えとるかな?
【KAC20251】まほろば 〜君が俺に教えてくれたこと〜 マクスウェルの仔猫 @majikaru1124
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます