第19話 千年前の京の都
えっー!僕は宙に浮いたまま。足元に町?
長い塀の続く建物?屋敷?
空がグレーで、なぜだろう低い。
「景色が違うぞ!ここはどこだ?」
同じく宙に浮いて紫の髪の小さい女の子、
ハルが横にいる。
「父上様、ここは千年前の京の京都です。」
「そうなのか?今の世界と建物が違うなと思ったよ。」
「お気づきですか?」
「ハル、ここは京都で間違いないんだよな。」
「はい。」
「千年前の京都です。」
「父上様、ここは、私が朝廷で藤原達から濡れ衣をきせられた場所です。」そうハルは言いながら、みるみる姿が大人になった。
まさにミチミチだ。
そして「あの低いグレーの空は、私の恨みです。」
「ハルの恨みか。」
「父上様、もうすぐあの屋敷から私が出てきます。」
牛車が屋敷から出て来た。
僕は固まった。牛車のまわりを黒い霧が覆っている。
ハルが、ミチミチの心が病んで、闇の中へ陥っているのがわかる。
たぶん、もう誰も信じることができない。言葉で表せないくらいのくやしさと、悲しさ。だめだ。だめだ。言葉では表せない。口にできないほどの・・・
僕は思わず、横にいるハルを抱きしめた。
「ごめん。ハル。あの時、そばにいてあげられなくて。」僕は腕に力が入った。と同時に目から止まらない涙が流れた。
「いたい。父上様。」
「あー、ごめん。ハル。」
はっとして腕の力が抜けた。
「ハル。」できるだけ、僕の精いっぱいのやさしい声でハルと呼んだ。
さっきまでの大人のハルが元の小さな紫の髪の女の子の変わっていた。
「父上様、大丈夫ですか?あの時の、私のために泣いてくださり、ありがとうございます。」
「ハル。あの場で、助けてあげられなくてごめん。僕は何をしていたんだろう。」
ハルは「大丈夫です。父上様は悪くありません。あの時、父上様、母上様はもうお亡くなりになられていました。
平安人の寿命は短く40歳まで生きれればよい方です。ですから大丈夫です。
今の父上様の涙だけで十分です。」
僕はまたギューッとハルを抱きしめた。
「いい子だ。ハル。」
ハルは「それに、父上様。濡れ衣のお返しは、ちゃんと藤原氏にしましたし、京の都への天変地異もぜーんぶ、済ませて今は気持ちはすっきりです。
それに北野天満宮も私のために建ててくれましたし、とっくに許していますよ。」
「そうか。良かった。でもなぜ僕を京都に?」
「それは私が父上様に会いたかったからです。」
ハルがにっこり笑った。
次の瞬間、またカラダがくるくるまわり出した。
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