第12話  神様仕事は体力勝負

「桃梅、18しか、おみくじがでないって少なくないか?」

「そうですね。修学旅行が入っていれば別ですが、通常受験に遠い夏休み明けのこの2学期は願掛けの参拝者はそう、多くないですよ。」

「そっか。その通りかも。僕も神社には来るけど、何かがない限り、めったにおみくじは引かないよ。初詣の時ぐらいかな。」

桃梅が「ところでスガワラ様、明日の参拝者の把握はお済ですか?」

「あー、言われた通り頭の中に映像が浮かんだ。参拝者の顔、願い、行いがすべて脳内に勝手に映し出されたよ。僕は、その映像をもとにおみくじの文字の中に願を念じた。これでよかったのか自身はないけど。」

「さすがです。そのやり方で間違いありません。やはりスガワラ様は神様の素質があるのでは?続けられるつもりはありませんか?」

「桃梅、だめだよ。おだてても、この願を入れる仕事は、どうも体中のエネルギーを持っていかれる。正直大変な仕事だ。僕はパス。ミチミチはよくやってるんだな。」

「そうです。ミチミチ様、神様は凄まじいエネルギーの持ち主です。ですがスガワラ様が神様業を続けられないのは残念です。」

「悪いな桃梅。僕は1週間だけの代理の神様だ。受験生の僕に勉強以外に体力を持っていかれることはできない。すまない。ところで、他に何をすればいいのかな?」

「参拝者、鏡、おみくじ。一通り終了です。ありがとうございます。」

「よかった。桃梅、少し休憩してもいい?」

「いいですよ。神様、スガワラ様が休憩中は人間側の時間を少し止めておきます。

お疲れのようですので奥の本殿横の部屋で休んでください。」

「ありがとう、桃梅。」僕は全身の力を使い切ったようだ。ほんと全身全霊。神様の仕事は、大変だ。体力勝負だな。

僕はひんやりする木の床の上で横向きになった。

意識がすぐに抜けていった。

どれくらい寝ただろうか?バタバタの足音と何人かの話し声が聞こえる。

僕の直感が働く。僕は動かず、薄目で状況把握。

『誰だ?桃梅?つかまっている?誰だ?人間の神主か?』

時間が止まっているようだ。参拝者の人間達は止まったままだ。

男が鏡を桃梅から奪おうとしている。

「誰だ!」僕は男に飛びついた。

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