第29話ギリシャ



スエズ運河を一列になって進む日本艦隊。


そして地中海に、その姿を現した。


空母3隻。

航空機を多数搭載し、海上での航空基地の役割を果たす軍艦。


比叡ひえい』オニヤンマを搭載して、飛行甲板より艦載機を発着させる。


富岳ふがく』攻撃へりを搭載して、飛行甲板より艦載機を発着させる。


『富士』輸送ヘリを搭載して、飛行甲板より艦載機を発着させる。


戦艦(改)2隻。

主砲をなくしてミサイルを搭載して、堅牢な装甲を持つ艦。


巡洋艦2隻。

遠洋航行能力・高速性などを活かした攻撃力を持たせた軍艦。


ミサイル艦6隻。

ミサイルを搭載した艦船。


駆逐艦3隻。

水雷襲撃を行い、また潜水艦に対する攻撃や偵察・哨戒、船団護衛など、多岐にわたる任務に使される便利な艦。


潜水艦4隻。


輸送艦6隻

武器や弾薬などの物資や人員を輸送する大型の艦艇。


戦車揚陸艦3隻

戦車20両が搭載可能で岸辺に乗り上げて、前方から戦車が上陸可能になっている。



戦車揚陸艦は、今回の作戦に合わせて、急遽きゅうきょ作った艦であった。

なので今回で2回目の経験になる。


1回目は、船長や乗組員の顔合わせ時に「明日は出航だ」


「え!一度も上陸経験がありません。失敗して帰って来いと言うのですか!」


なので徹夜して夜間に上陸の真似事をやった。

その1回の経験で多くのことを学んだ。





トルコは、約束を守ってヨーロッパに日本艦隊がスエズ運河を強襲して占拠したことを知らせた。

エジプトがヨーロッパ連合に知らせると、怪しまれると思った。



知らせを聞いて、一番驚いたのはギリシャだった。

日本艦隊にもっとも近い場所に、首都のアテネがあったからだ。


やっとドイツから開放されて間が無い。

なので海戦を諦めて、上陸をしてきた日本軍をゲリラ作戦で叩く作戦を実行。





空母『富士』の横に輸送艦がゆっくりと止まった。

空母から飛び立った輸送ヘリは、輸送艦のヘリポートへ着陸。


その輸送ヘリに武装した兵士が「たたたた」と駆け込む。

その数55人。


「搭乗完了!」


それを合図に輸送ヘリは飛んだ。


そして次の輸送ヘリがヘリポートへ着陸。


そんな光景が輸送艦6隻で行なわれている。




「ギリシャの降伏勧告の返事はまだか!!」


「まだ来てません!」


「すべての電波で呼べ掛けてみたのか・・・」


「はい、すべてです。ラジオでも呼び掛けました」


艦内の時計を見る。


12:00・・・「上陸作戦を開始してアテネを占拠しろ!!」



その言葉を聞いた戦車揚陸艦の船長は、「あの場所へ乗り上げよ!」


そして岸辺に乗り上げる。

前方は開き鉄板が「ガシャン」と前へ倒れた。


その上を戦車が滑るように走り、ギリシャに初上陸して走る。

そして戦車20両を吐きだす。


「戦車部隊は行ったようだな・・・」


「20両、全て上陸を完了しました」


「ここに居ては危ない。海へ帰るぞ」


「後退」


2つのスクリューが逆回転して戦車揚陸艦は、徐々に後退した。

そして右に向きを変える。


「前進!」


「前進」


戦車揚陸艦は前進して艦隊へ帰った。






上陸した戦車に手榴弾3つが投げ込まれた。

戦車の真下で「ドン、バン、バン」と爆発が起きた。


それでも戦車は走り続けながら機銃がくるっと動き火を吹いた。

呆気なく3人の男が撃たれて、糸が切れた人形のように崩れた。


モニターにAIが探し出した高射砲が映っていた。

赤い丸が点滅して危険を知らせる。


「高射砲を発見!右45度、角度15度、ミサイル発射!」


1発の小型ミサイルが高射砲に当たって大爆発が起きた。

そして大きな土煙が舞った。


その土煙が消える。

高射砲があった場所には、100メートルのクレーターが出来ていた。


「凄い威力だ」


「車長、この戦車は初めて・・・あ、失礼しました」


「ああ、初めてだ。それに便利過ぎる装置だ」


「車長、慣れです」


ああ、怖い車長でなくて良かった。





輸送ヘリの側面から機銃が「タタタタタタ」と撃ちだされる。

隠れていた兵士を殲滅。


「支援はここまでだ。それでも行くか!」


「いつまでも乗り続けるのも・・・死ぬ覚悟は出来ている」


「勝手にしろ」


兵士がロープをつたってスルスルスルと降下してゆく。

何事もなかったように走りだす。



アテネに銃声と爆発音が絶えることはなかった。




議員が立てこもる建物の周りを戦車と兵士が取囲んでいた。


ちょっと離れた空では、輸送ヘリが警戒して飛んでいる。


「呼び掛けてもダメか・・・」


「ダメでした」


「砲弾で扉や壁をぶっ飛ばせ!」


戦車から「ドン、ドン、ドン、ドン」と砲弾が撃たれた。


扉や壁が破壊されて穴が開いた状態に・・・


「特殊班突撃!」


戦車が近くまで進み、兵士は戦車を壁にして進んだ。

戦車が止まると穴に向かって走りだす。


穴の中に何かを投げ入れる。


「カラン、カラン、カラン、シューゥ・・・」


穴から白い煙が・・・


フルヘルメットをした兵士複数が中へ入る。


しばらくして「タタタタタタ」と撃った。


「タタタタタタ」


「安全確保したと連絡がありました」


その頃には、煙も薄くなっている。


「全員突入!」


その日、アテネは陥落した。

捕虜となった議員は、ラジオを通じて国民に謝罪をして降伏したことを話す。



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