第23話暗殺計画
ソ連のみすぼらしい家で密会が行なわれていた。
「スターリンの暗殺の話は本当なのか・・・嘘なら殺すぞ・・・」
「そんなに怒るな・・・この毒でスターリンを殺してみせる」
「それは不味いぞ。毒殺では我らが疑われて
「この毒は、毒として検出されないから心配は無用だ。死んで1時間後には消滅する毒だから・・・」
「そんな便利な毒があるのか・・・1度試させてくれ」
ポケットから万年筆を取ってキャップを取った。
コロコロと転がって1つの錠剤が・・・
「これが毒だ・・・好きなように使ってくれ、嘘ではないと分かるハズだ」
「これが本当なら・・・恐怖におののくことも無くなるのだろうか・・・」
「スターリンの粛清は有名だからな・・・」
「捕まったら最後だ。取調べと言ってるが、あれは拷問だ。罪を認めるまで拷問が続くから誰でも認めるしかない。我慢しても拷問で死んでもお構いなしだから・・・それに裁判で無実を訴えても「罪を認めた」と有罪は確実だ。最悪なのが裁判なしでの殺害だ。その場合は、行方不明に・・・」
「それでスターリンの暗殺後に我々に何を要求する気だ」
「共産主義と資本主義の共存だ。共産主義が破綻してると分かってるハズだが・・・」
「我々も夢を持っていた。しかし、スターリンが・・・」
「それってスターリンだけの責任か・・・1人の人間に余りにも実権を持たせる仕組みが悪いと思わないのか・・・」
「それは、共産主義と資本主義のメリットの部分を生かせば良いってことか・・・そんなことが出来るのか」
「やってみようではないか・・・それが死んでいった同志への使命だと思わないか・・・」
「そうだな」
「異議はない」
事実ならスターリンは、1953年3月1日。
数名と徹夜して夕食後、寝室で脳卒中の発作で倒れた。
誰も信じないスターリンは、同じ寝室を複数作った。
寝る部屋を直前に決めていた。
もう誰も信じてないのが、丸分かりだ。
寝室は鋼鉄の箱のような構造になっていて、ドアも内側から鍵が掛けられていて誰も入れない。
外から開けるには、警備責任者が持っている1本の鍵のみ。
翌朝、スターリンが起きてこないことに警備責任者は、不審に思った。
しかし眠りを起こしてスターリンの怒りを買うことを恐れて、そのまま放置した。
午後になっても起きなかったので、仕方なく鍵でドアを開けた。
このために発見が遅れ、容態を悪化させたらしい。
もう警備責任者は慌てまくった。
そして4日後に死んだ。
スターリンの死去後、1956年2月のソ連共産党第20回大会でフルシチョフ書記長は演説を述べた。
スターリンの粛清についての話だ。
第17回党大会で選ばれた党中央委員会の委員と候補139人のうち98人が、逮捕され、銃殺された。(1937年から1938年にかけて)
会場は、激怒の叫びで埋め尽くされた。
中央委員会のメンバーだけでなかった。
代議員も同じ運命に・・・決議権、審議権を持っていた1956人の代議員のうち1808人、過半数の人が反革命の罪で告発され、逮捕された。
▼キーロフ暗殺事件
1932年、スターリンは無理な政策をしてしまった。
農民個人が農業をするのを辞めさせて、土地も奪って農民全員で集団農業をやらせた。
生産が上がると思っての政策がアダとなった。
集団農場で作ったものは、集団農場の物となったからだ。
農民たちは、自分たちが生きられる最低限の生産しか作らなくなるのは必然だ。
農業集団化の結果と天候不順が重なり、全国的な
食糧不足のために500万~600万人が死んだ。
共産党員の中にもスターリンを辞めさせるべきだと思うようになって、スターリンに代わる人物として期待されたのがキーロフだ。
17回党大会では、スターリンに書記長をやめさせるハズだった。
ニコラーエフという青年がピストルを持ってウロウロしているところを逮捕された。
ところが何故かニコラーエフは釈放され、偶然にも警備員がいなかった時に、幹部会から帰ってきたキーロフを射殺した。
これって権力者が裏で操ったとしか思えない。
偶然が必然となった瞬間だよ。
ニコラーエフを逮捕したレニングラードの公安警察の長は、スターリン直属の特別秘密警察公安局の指令で赴任した人物だった。
この組織がのちの大粛清の企画本部となった。
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