第18話暴動



原爆投下の日から翌日にかけて強い風が吹き荒れた。

それは死者の悲しみが呼び起こしたように・・・強い風だった。


その強い風は黒い雲になりながら流される。

その場所は、アメリカ合衆国の首都のワシントン D.C. で黒い雨を降らした。



地面に黒い雨が降り注ぎ・・・黒く染まった。


何も知らない多くの住民は、空を仰ぎ見る。

その黒い雨が口に入っても、ただ見上げるしかない。


「この雨は!」


黒い雨に打たれながら不思議がる。


「なんで黒い雨が・・・」


急な雨で傘も持ってない。


「ベーブ!黒い雨が降ってるぞ!家から出て見ろ」


「なんて事だ!白いシャツが台無しだ」



人々は、放射性物質が含まれた雨だと知らないまま黒い雨に打たれ続ける。

そして多くの人々が急性放射線障害を引き起こした。


頭髪の脱毛、歯ぐきからの出血、血便、急性白血病による大量の吐血など・・・

そんな症状に苦しんだ。


病院はそんな患者でパンク状態で、廊下やロビーまで患者が溢れる。


「もう患者の受け入れは無理だ」


「しかし、人々が苦しんでます」


「なら学校へ一時的に搬送してくれ・・・後で看護士や医者を派遣するから・・・」


「分かりました」


治療をする医者や看護士も出血を抑える薬の点滴をするしかない。


原因が分からない。


中には服についた黒い雨を、そのまま着た状態で放置される場合も・・・

この場合は、早く放射能を除去する必要があった。

服を脱がして体を手術用スポンジで拭きとって除染じょせんするのが正解だった。






トルーマン大統領は、黒い雨が降る前にワシントン D.C.を脱出して助かっていた。


放射能の恐ろしさを知っているからだ。


ニューヨークの原爆投下を知って、専門家のアドバイスで急いで逃げ出している。

住民の避難勧告をしないままに・・・逃げる邪魔になると思ったらしい。



「大統領!黒い雨でワシントン D.C.は、大変なことになってます」


「それは・・・放射能か!」


「専門家も、そのように言ってます」


そんなトルーマン大統領の部屋に・・・


「トルーマン大統領!大変です」


「なにがあった」


「日本から降伏勧告がなされました!それも電波ジャックでラジオで呼びかけています。それと・・・」


「なんだ!何を隠している」


「日本に降伏すれば放射能治療や放射能除染もすると言ってます。このままだと300年は住めないニューヨークとワシントン D.C.なるだろうと・・・」


「そんなハズがあるか!あの黄色いサルどもに・・・」


「それだけでは、ありません。まだまだ放射能被害が風によってアメリカ全土へ広がると・・・そして死んでゆくとデマまで流しています。なんて卑劣なジャップ野郎どもは・・・」






そんな放射能被害がアメリカ全土の新聞社から次々にトップニュースとして載った。


載った内容は、一般アメリカン人が知り得ない情報だった。


黒い雨は放射能が大量に含まれていて、川や農耕地まだ放射能が残留するだろうと書かれている。

そんな汚染された魚も農作物も食べれないと報じられた。


農業は、大打撃だ。


そして放射線が細胞を傷つける仕組みや、大量に放射線を浴びると、傷の修復が追いつかず細胞が分裂できず死んでしまったする。

更にガン化が進む報告まで。


口から雨を飲み込んだ人々は、内臓の数々がガンに・・・


そんな恐怖の放射能に対して日本に降伏すれば、治療から除染までしてくれる情報は、市民がありがたいと思った。

それなのにトルーマンから何も発表がない。





治療の遅れで人々が死んでゆくのを見せられる住民達・・・


治安の悪化や海外の貿易がストップしたことでも不満があった。

しかし、戦争の中で我慢に我慢を重ねて、我慢の限界を超えたらしい。



ついに事件が起きた。


最初は、警察官と数人の口論だった。


「お前が規制するから病院への搬送が遅れて娘が死んだんだぞ!責任を取れ!」


「・・・・・・」


「何を黙っている!それって認めたってことだな!」


「病院へ行っても無駄だ。すでに1000人は死んだのを見ている」


「何を言いやがる!」


殴られながら発砲した警官は、数人が襲った。


「撃ちやがったな!」


「死にやがれ!」


相棒は逃げ出したが、見ていた住民によって殴り殺された


怒りが収まらない住民が警察署を襲いだした。

汚職警官が居たからだ。



市民が銃を持出して銃撃戦が始まって数で圧倒したことで、警察官が撃たれ死んだ。

生き残った警察官は、警察署の入口に公開処刑のように吊るされた。


しかし本当の理由は違った。

死の恐怖から逃れるように集団ヒステリーを起こしていた。


極度のストレスが引き金となって精神や身体的機能が意識から解離して、自分の意志でコントロールできなくなった状態だ。

そしてデマに煽られるように襲った。


あっちこっちの州で暴動が起きた。


それは政府への怒りに変わるのも速い。

軍や政府機関を襲いだした。


空母を襲って占拠までしている。







放射能除去装置で安全な工場では、数人が話し込んでいた。

携帯で連絡を受けた男が話し出す。


「麻薬中毒者のAタイプが軍基地を襲いました。1時間で制圧したと報告が入ってきました」


「襲ったか・・・薬で痛みも感じることもなく、100メートルを7秒で走り抜く強化された肉体だ。素手でもあっという間に殺せるからな・・・」


「それ程に強いとは・・・恐れ入ります。それに基地制圧を知った住民が集まってます」


「住民には、基地の武器を手渡す手はずは・・・整ったか」


「すでに手渡してます・・・きっと暴動は成功するでしょう」


「麻薬中毒者のBタイプを外に行かせろ・・・そして住民を先導させて、暴動を煽らせろ」


「了解しました」


「それに把握している債務者にも暴動に参加すれば借金が帳消しにすると電話しろ」


「了解しました」







その頃、トルーマン大統領は焦っていた。


「トルーマン大統領!住民が軍を襲ってます。軍も住民に向かった発砲して手が付けられません」


「なんで、こうなった」



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