第14話アメリカ艦隊



アメリカ艦隊は、慌しく出航した。

太平洋側の戦艦から空母など全てをかき集めての出航だった。

目指す先は日本。


B-29の帰還がないのに焦りを覚えた大統領が発動した命令だ。

艦隊運営からの反対を押し切っての作戦だった。

2つの艦隊を同時進攻して、実行支配をする積もりだ。

1つは沖縄、もう1つは硫黄島。



空母サラトガのフランク・J・フレッチャー少将が第14艦隊を編成。

それとは別にハルゼー中将が指揮する第8艦隊も出航。


2つの部隊による陽動作戦であった。



やっと日本と決着がつけられるのか・・・真珠湾攻撃のお返しが出来そうだ。


油断していた訳ではないが、突然の爆発音。

フランク少将は、重巡洋艦ルイビルの左舷さげんが爆発するのを漠然と見てた。

一瞬、事故かと思ったからだ。


レーダーによる敵接近の報告がなかった。


しかし重巡洋艦ルイビルが沈んでゆくのが、あまりにも速かった。

1回の爆発で沈む重巡洋艦ではない。

これは事故ではない。しかし、敵による攻撃なら凄い威力だ。


「レーダーには何も映ってないのか!」



「何も映ってないとの報告です」


またも突然に爆発音が響く。


「あ!空母ヨークタウンが・・・真っ二つに折れて、沈んでいきます」


左後方にいた空母ヨークタウンが呆気なく沈む姿を見るしかない。

どんな攻撃かも分からないが、破壊力は絶大だ。


「どこから攻撃されてるのか分からないのか・・・」


「全く分かりません」


「艦載機を飛ばして調べさせろ。それとこの艦も危ない・・・全ての艦載機を発艦させろ!それと何処からの攻撃かを絶対に探し出すんだ」


「了解しました」


なんと軽巡洋艦セントルイスも船尾が大破損。

あれでは沈んでしまう。

助けないと思った瞬間に、この艦の中央が大爆発して二つに折れた。


そんなバカな・・・なにかの間違いだ。

しかし、目の前で爆発が起きた。


破片の一部が腹を貫いている。痛みは感じない。


「艦載機が1機も飛び立ってないのに・・・」


なんてざまだ。周りを見ても生きてるのは私だけのようだ。

大量の血があふれ出ている。こではダメだ。

わたしは死ぬのか・・・意識が・・・





ステルスモードのスイッチを切る。

あ!やっと仲間の機体が見え出した。

このステルスモード、仲間も見えなくするからエリアを区切っての攻撃になった。

攻撃に集中し過ぎて、あやうく隣のエリアに入りそうになったわ。


攻撃完了の連絡でも・・・


「作戦本部だ!オニヤンマⅠの現状報告を頼む」


なんて気の早い作戦本部なんでしょう。


「こちら攻撃隊オニヤンマⅠ、アメリカ艦隊Ⅰを全滅。成果は空母3隻、戦艦2隻、小型空母1隻、重巡洋艦7隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦10隻」


「よくやった。すぐに還って来い。戦勝祝いをしてやるからな」


「ありがとう御座います・・・それとアメリカ艦隊Ⅱの方は、どうなりましたか」


「今、エンタープライズが沈みだしたと聞いたばかりだ。すぐに決着がつくだろう」


ああ、終わったのか・・・

それにしてもミサイル攻撃は便利過ぎわ。


遠く離れた位置からでも発射して当たるから・・・人工衛星による誘導らしい。





何が起きたのか分からない。

あっちこっちの艦が突然に爆発が起きて、次々に沈みだしている。

何処からの攻撃さえ分からない。


居たたまれなくなって外に出て聞耳を立てる・・・

左舷よりキーンと鳴っているぞ。

急いで左舷に行き・・・


なんと十戒十戒のモーゼの海が割れるように海の道が出来ていた・・・それも凄い勢いで向かっていた。

それなのに何が向かってきてるのか見えない。


その瞬間に左舷に大爆発が起きた。


その衝撃で海に投げ出された。

深くまで沈んだが明るい方向に泳いでようやく浮上。

あ!助かった。


しかし、エンタープライズが沈んでゆく姿が・・・


戦う敵に攻撃も出来ないまま一方的な戦いだ。

なぜなんだ。

理解不可能で、ここで死ぬのか・・・



ああ、太平洋の真ん中で救護する艦も残ってない。

全ての艦が沈んで助かる見込みない。

この木材の切れ端でなんとか浮いてる状態だ。

ああ、絶望しかない。



なんだ・・・あれは、飛行艇。

日の丸だ・・・日本人に助けられるのか・・・ドアが開いて日本の幼い女性が「hand」


え!それでも助かった。


「あなたは艦隊指揮官のハルゼーですね」


え!私の事を知ってるのか・・・服装だけで階級は分かるが、顔まで知っているとは・・・

50人が救助されて飛行艇は飛び立つ。

柔らかいバスタオルや服が支給されて、震えながら服を脱いで拭いてから着る。

ああ、惨めだがありがたい。


それにしても、この飛行艇の動力源は何なのだ。

あまりにも静かに飛行する飛行艇。


次の飛行艇が海に降下してゆく。残った者も助かるようだ。

まだまだ海に投げ出された兵は多いので感謝しかない。


「I want water」


1人が水を欲しがっている。

飛行艇にそんな物が・・・あった。

透明の容器に水が入っている。それをゴクゴクと飲みだす。

なんて美味そうに飲むんだ。


え!それも支給してくれるのか、一気に飲む・・・なぜだか美味い。





ホワイトハウスに第8艦隊と第14艦隊の連絡がつかない事が知らされたのが翌日の朝だった。

攻撃された報告もなかった。

しかし、艦隊から無線連絡がないって事は沈んでしまった可能性が高い。

そんな判断をするしかない。それも全ての艦隊が・・・あってはならない事態だ。


「なぜなんだ。こんなに艦隊が呆気なくやられるなんて。あれほどに日本艦隊に勝ってたのに、なぜだ」


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