第12話原爆実験
「シールドを展開しろ」
「シールド展開完了・・・大気圏に突入・・・越えました。大気圏を越えました」
余りにも緊張にモニターや計器の確認が遅れた。
そして外を見る暇がないまま、しっかりとモニターと計器の確認が終わる。
やっと顔を上げると前に広がる宇宙が見えた・・・神秘な光景に見とれてしまう。
「これが宇宙か・・・我らは、ちっぽけな存在なんだな・・・それに地球は、青い・・・」
「機長!何をポカンッとしてるのですか・・・自動操縦にしなくて良いのですか・・・」
「あ、すまん・・・」
確認しながらスイッチを入れる。
「自動操縦に切り替え終了。これでしばらくは暇だな」
急に重力を感じる。
副長が機内の重力装置を発動したらしい。
副長は、安全ベルトを「カチ、カチ」と外して席を立上がる。
「私は爆撃地点の再確認とドローンⅡの確認をして来ます」
「え!又するのか・・・これで何回目だ」
「この作戦は日本の未来が掛かった作戦ですから・・・失敗は許されません」
私は、モニターのタッチパネルを操作して大気圏外から見る地球を、あらためて見る。
これが太平洋なのか・・・なら、あれはハワイ・・・
「とうとう宇宙に飛び出したぞ」
「そうですね・・・これが人類初の宇宙になるとは・・・」
「こっちの船は見えないのか?」
「マスターも心配性ですね。
【遮蔽モード】
物体を見えなくする、つまり可視光線を遮蔽するだけでなく、あらゆるセンサーにも感知されないように電磁波なども遮蔽できる。
大気圏上から見詰める爆撃機【フクロウ】。
「ようやく実験をするようだな・・・この原子爆弾の破壊力は相当なものらしいが想像できないなーー」
ドローンⅡのコントロールを握る機長。
「機長、今回の作戦はあなたに掛かってます。失敗は許されませんよ」
「おいおい、緊張させるようなことを言うなよ」
「開口部を開けます」
副長がスイッチを押す。
画面がぐらつきながら急降下。
球体のドローンは真っ直ぐに目的地に降下し続ける。
ああ、やっぱり緊張してきたよ。
1945年7月16日、アメリカのニューメキシコ州ソコロの南東48kmの地点にあるアラモゴード砂漠。
人類史上初の核実験「トリニティ」が実施される予定だ。
8月9日長崎に投下された原子爆弾「ファットマン」同様の構造と形状。
ファットマンのように空中からの投下ではなく、鉄製のタワーの上に備え付けられた状態。
盗聴器から基地のカウントダウンの声が聞き取れていた。
ドローンⅡの速度を上げる。
目標に球体が襲い掛かる。
原子爆弾を銀色が包み込み捕獲が成功。そのまま急いで急上昇。
捕獲用ドローンが見事に体内に捕獲。
あまりにも素早い動きに、実験場の人々は何が起きたのかも分からない。
大気圏上に待つフクロウに無事に収納。
「これで帰れるな・・・急いで帰るぞ」
「了解しました」
その頃、アラモゴード砂漠の実験場では大騒ぎだ。
実験対象の原子爆弾が消えて行方不明。
「なんだ!なにが起きたのだ」
「原子爆弾が消えてます」
「それは私も見て分かってる。なんで消えたかを聞いてるのだ」
「原因は分かりませんが、盗まれたのでは・・・」
「そんなバカな・・・軍に連絡だ!原子爆弾が行方不明なったと・・・」
「それで納得しますかね」
「そんなの知るか!」
トルーマン大統領がその知らせを聞いて天を仰ぎ見た。
「まさに信じられない・・・探したのか!」
「飛行機を飛ばし探しております。FBIや軍が必死に探してますが・・・何も情報は入ってません」
「これは海外の陰謀に違いない。だから前々から諸外国から寄せられる多種多様な情報を一括して収集できる組織が必要なんだ。そんな組織を早急に作るぞ」
「名前は何にしますか・・・」
「そうだな・・・ Central Intelligence Agency。略してCIAでどうだ」
「良い名だと思います」
「そうか・・・君が初代CAI長官に任命する。急いで組織を作りたまえ。君には出来る能力があるハズだ。期待してるぞ」
「え!私が・・・責任を持ってCAIを作ります」
CIA長官に任命された男は野望に燃えていた。
海外の情報か・・・手始めに日本の情報が必要だ。
ならば強制収容の日系人を訓練して送り込むことにしよう。
手柄を立てて組織を大きくしてゆくぞ。
そしてFBIを超える組織にしてみせる。
3日後、もう1つのドローンが地中深く潜って爆破。
それによって核実験の場所で地震が起きた。
建物は崩壊して核が臨界点に達した。
放射能数値が高い死の砂漠となった。
逃げて生き延びた人も被爆で次々死んでいった。
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