第11話太平洋



サイパン島のあるマリアナ諸島は、B-29が出撃して帰ってこれる攻撃圏だ。

なので潜水艦「御風」が闇夜に浮上。


「ミサイルの用意はいいか!」


「いつでも発射できます」


「滑走路から全ての施設を破壊つくせ!」


「了解しました。10発を同時に発射!」


潜水艦の胴体部分から10発のミサイルが発射されて、上空で向きを変えながら航空基地に飛んだ。


「準備完了、発射!」


またもミサイルは発射されて飛んだ。


遠くで爆発音が・・・


「準備完了、発射!」


「艦長、生命反応が見えません」


「滑走路も施設も破壊したか!」


「破壊を確認しました。ご覧ください」


モニターには、無残に破壊された航空基地が特殊なフィルターで見えていた。


「潜水開始、進路ガダルカナル島!」


「了解」


潜水艦は静かに沈みながら進んだ。






「ここがガダルカナル島か・・・連勝続きだった日本軍がガダルカナル島の戦いで負けて、アメリカとの攻守が逆転するきっかけとなった戦いが・・・」


「艦長は詳しいですね。その時のことを教えてください」


「そうだな・・・日本海軍はオーストラリアとアメリカの連携を阻む前線基地として、飛行場を建設して完成間近でアメリカ海兵隊1万が上陸。あっという間に占領された。日本軍は奪還に乗り出そうとしたが、ここで大きな判断ミスをしてしまった。東京の大本営は、アメリカ側の反攻は早くても1943年以降と考えていたこともあり、アメリカ側の兵力を2000人規模と誤認。900人が上陸して夜間の白兵突撃はくへいとつげきを決行した。しかしアメリカ軍は飛行場の周辺に集音マイクを設置して、日本軍の動きを察知して動き出した。2方向から機関銃を浴びせる十字砲火で応戦。結果は、朝になると海岸線は、日本兵の遺体で埋めつくされていたそうだ。死者は777人」



「また大本営がバカをしたのですか・・・」


「ああ、あいつらはバカ野郎だ。だから引退した者を探しだして、家に石を投げてやった」


「お堅い艦長が・・・信じられません」


「自慢にならないがガラスの破片で怪我をしたらしい」


そう言って新聞を切り抜いた記事を見せてきた。


「本当にやってしまうとは・・・」


「お前、告げ口をすなよ」


「承知しました」



「それにしても夜になるまで2時間か・・・それで狙う場所は決まったのか」


「はい、AIが人工衛星のデータから選んだ場所に狙いを定めてます」



潜水艦は浮上。

日は沈み真っ暗な空に向かってミサイル10発が発射。


そして大きな爆発音が遠くから聞こえてきた。

遠くの空を赤く照らし続けている。


ミサイル10発が発射された。


モニターを食い入るように見ていた兵士が「貯蔵タンクが大爆発したぞ」

それを聞きモニターを覗き込む1人の兵士。


火達磨になって動きまわり倒れる者が・・・それでも火は燃え続けた。


兵士は、口を押さえながらトイレへ駆け込んだ。



ガダルカナル島のアメリカの施設は、全て破壊尽くした。


保有していたミサイルを全て消費した瞬間でもあった。


「日本へ帰るぞ」


「了解」





生き残ったアメリカ兵は、ただ燃える炎を見るしかない。

必死に生存者を探したが誰もいない。


「ボブ、生きてたか」


後ろを振返るとチャーリーがこっちを見ていた。


「お前も生きてたのか」


「ああ、生きてたよ」


「これって白兵突撃をやられたのか」


「バカな・・・そんなハズは・・・ない」




同時刻に潜水艦によるミサイル攻撃が、ニューギニアやソロモン諸島にある連合国軍の基地を襲った。

抵抗する間もなく基地は破壊尽くされた。

発射されたミサイルの数500発。

1つも外すことなく命中した。



停泊して空母右側面が突然大爆発して、空母は沈み始める。

素早く海へ飛び込んだ乗組員は少なく、全員が海水を飲みながら水死した。


駆逐艦も同じだ。

爆発音が響き横転したまま沈んだ。






昼頃に戦艦大和、巡洋艦、駆逐艦が到着。

各艦がミサイル発射台10基を搭載した改良型だ。

目指すは、逃げ出した艦。



駆逐艦「光龍」と「黄龍」が攻撃するための準備を始めた。

第一目標はアメリカ空母。


「人工衛星で確認は済んだか・・・」


「確認完了」


「10基のステルスミサイル発射!」


「発射しました。黄龍にも攻撃ポイントを知らせます」




黄龍の艦長は、攻撃の成功を聞き入っている。


「光龍も成功させたようだな・・・しかし、油断するなよ。近づく飛行機があれば、こっちも対空ミサイルで撃ち落せ」


「分かってます。ミサイルの補充も速いので、黄龍を空から守りきってみせます」


何度も確認して100キロ内には・・・


「周囲に敵影ありません」


「それならいいのだが・・・」


艦長は、心配症だな。





アメリカの潜水艦。


「何か音が・・・」


音を聞いた時には、艦内に海水が流れ込んできた。

ハッチを閉めていても艦内の亀裂から海水が・・・

そして海底深くに沈んだ。


なので「海の幽霊」と呼ばれるように・・・


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