第2話 再会の足音


昨日の豪雨が嘘のように今日は青空だ。

俺は高校を卒業後、都内で一人暮らしをしてる。

トーストにハムエッグ。インスタントのコーンスープを用意して席につく。

両手を重ねて言葉にする。

「いただきます。」

◇◇◇


食べおわった食器を洗ってから、大学の講義に向かう為に黒の半袖に紺色のジーンズを着て、斜めかけのグリーンの鞄を肩にかける。



◇◇◇


大学に到着すると、既に席の半数は埋められていた。

どうするか思案していると、自分を呼ぶ声が前方から聞こえた。

「勇気!こっちこっち」

「玲奈」

佐倉玲奈さくられなは俺の幼なじみだ。

髪をハーフに結んでいる。白のブラウスに花柄のスカートを着てる。


「勇気の分も席を取って置こうって、陣平も言ってたんだ。」

チラリと横に座る男を見た。

遠藤陣平えんどうじんぺい

俺と玲奈が大学で仲良くなった一人だ。

眼鏡をかけて髪をしっかり揃えて学級委員長のような身なりだ。水色のシャツに白いベスト。ベージュのズボン。育ちの良さを感じる。

「皆一緒の方がいいからな」



講義が終了後。

大学に併設されてるカフェに寄った。


「ここの紅茶とチーズケーキ美味しいのよね。」

玲奈が幸せそうな顔で語る。


「二人とも今日、俺の家来ないか?勇気と玲奈のこと話したいと言ったら、会いたいと煩くてな」

陣平は眼鏡をクイと直す


「あ~陣平のお家行ってみたいけど、私、今日バイトなの。」

両手をパンとする玲奈。

一瞬落胆する陣平を見逃さなかった。すぐに口角をあげる。

「バイトなら仕方ない。陣平はどうする?」


「俺は行くよ。せっかくの誘いだからな」


今にして思えばこの時の選択が、この切ない恋の始まりだったんだろう。


◇◇◇

都内にある自宅マンション。薄いブルーが爽やかさを感じる佇まいだ。

地下には駐車場

表札には遠藤の文字


梓はキッチンでクッキーを焼いている。

「お義母さん。今日陣平君のお友達が来るんですよね?クッキーを焼いてみたんです。」

ロングヘアをシュシュで一つにまとめて、ピンクのワンピースにチェックのエプロンをしている。

お義母さんと呼ばれているのは、髪をショートにして、青のシャツに白のパンツ

リビングのソファーで読書をしていた。

遠藤明日香えんどうあすか陣平の母である。


「まあ、美味しそう!助かるわ。梓さん家事が得意で。私はてんでダメ」

朗らかに笑う明日香に梓は首を振る。

「いえいえ。好きでやってますから」

クッキーの載せたトレイをキッチンへと運ぶ。


「梓さんは純平には勿体ないくらいよ。あの子も仕事が忙しくて中々帰ってこれない。淋しさを感じてない?」

「純平さんは大変なお仕事をなさってますから」

ニコと笑う梓に明日香は何も言えなくなる。

話を変えるように明日香は尋ねる。


「梓さん、昨日お買い物の最中に雨に降られたけど大丈夫だった?」

一瞬梓の瞳が揺れる。

昨日公園で会った青年の顔が思い浮かんだ。

(私の歌を嬉しそうに聴いていた表情を思い出した。)

「はい。雨宿りしてましたから」

そう言って微笑む梓


梓はまだ知らない。

雨宿りの為に立ち寄った公園で出逢った青年と、数時間後に再会することをー...

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