入店拒否
山谷麻也
盲導犬ユーザーの悲哀
◆カウンターOK?
久々に入店拒否に遭った。
法事が終わり、ちょっと昼食を、ということになった。
混んでいるのか空いているのか、視覚障害の私には、店の様子は分からない。しばらく待った。
「盲導犬はダメだってよ」
兄はあきらめている。
私が掛け合おうとする前に、長女が動いた。
「カウンターならいいって」
店長らしき女性に、法律により、店では盲導犬の入店を断れないことを説明したとのこと。カウンターならOKというのは何とも滑稽な妥協案だった。
長女は店の本部にメールした。
◆閉じた世界
レアケースと思ったが、そうではなかった。
翌日、民宿を経営しているという人がいたので、妻が家族で泊りに行きたい旨を話したところ
「犬なんて、とんでもない」
けんもほろろだった。
(そんな民宿、こっちがお断りするわ)
妻は喉まで出かかっていた。
◆本部と現場のズレ
一体に、看板を掲げることの社会的責任を、自覚していない。
2002年、身体障害者補助犬法が公布され、20年以上が経過した。
2006、7年だったか、関東にいた頃、盲導犬ユーザーとなった後輩がコンビニで入店拒否された。彼は憤慨していた。
私は見かねて本部にメールすると、謝罪の返事があった。
そこには、グループはバリアフリーをモットーとしていること、今回の事案は店員個人の誤った判断であることも記されていた。
社会はあれから何歩前進したのだろうか。
◆遙かなり共生社会
食事を終えて、店のトイレに行った。
同行してくれた中学生の孫が、あきれ果てていた。
「ペットお断り ただし介助犬等を除く」
入り口に貼り紙がされているというのだ。
ともあれ、本店から例によって、長女にていねいなお詫びのメールが入った。長女が返事を出すという。
「トイレの貼り紙、補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)に直した方がいい、と書いておいて」
私は長女に伝えた。
共生社会は道半ばだな、と思う。変わり始めてはいるのだが。
入店拒否 山谷麻也 @mk1624
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