第25話白熱の第3次試験
1時間の休憩が終わり、ドルフの試合がそろそろ始まると試験官から通達があった。
一度控え室に戻っていた俺は、そのドルフにまたもや絡まれていた。
「なあチビガキ、俺と当たらないことを心の底から喜ばせてやるからしっかり見とけよ?」
「今回は確かに相手じゃないですが、お互いがんばりましょう。」
「ケッ!!変に大人ぶりやがって、少しは張り合ったらどうだってんだ。」
「そんなつもりは……でもいつか、ドルフさんと戦う時は全力で倒しに行きますよ!!」
「そういうセリフは俺の戦いを見てから抜かせ!!」
そう言い残し、ドルフはストリアと共に闘技会場へと向かっていった。
俺は再び観戦するために、隣の部屋へと移動し、先に移動していたセリーアと合流した。
「あれ、他人の試合は見ないんじゃないの?」
「そう思ってたんだけどね、あいつやたら君に絡むからよっぽど強いのかなって気になってね。」
「なんであんなに俺に噛み付くのかな?」
「少し野生児っぽいから君の中に秘められた強敵の予感を感じ取ってるとか?」
「そうなのかな……俺自分で言うのもなんだけど、オーラとか覇気はあんまないと思うんだけどな。」
「強い人ほど日頃の所作に出るものよ!!」
「そういうところは自分じゃ分からないな。」
「君はまだ、5歳だし伸び代も有るからそういうのも見越して今のうちに潰したいんじゃない?」
「なるほどねぇ……。」
「それはともかく、そろそろ始まるみたいよ!!」
セリーアがそう言うと、会場内に歓声が起こり、審判の号令がかかった。
「「「それでは、第4試合をはじめます!!!」」」
「「「ドルフ、ストリア両名は前へ!!!」」」
ドルフはストリアにガンを飛ばして、ストリアはそれをなるべく意識しないようにしている素振りだ。
ドルフはどうやら槍使いらしく、ストリアは魔法か精霊術で戦うのか武器は持っていない。
「「「勝負、はじめ!!!」」」
掛け声が言い終わると同時かそれより先に、ドルフが直線攻撃を仕掛ける。
猪突猛進というべきか、槍を構え突き出しそのままストリア目掛けて突っ込む。
反対にストリアはそれを察知して、横に避けると同時に魔素を練り上げ始めた。
隙を与えまいとドルフは槍でなぎ払い、ストリアはバク宙してそれをかわした。
そのように見えたが、切っ先が少しかすったか腕から軽い出血が見られた。
それを気にもとめずストリアは、防御も兼ねた水系統魔法の氷属性の魔法を唱えた。
「「アイシクルアロー」」
それをドルフは槍を回転させながら氷の矢全てを去なした。
攻撃が止まったところに、槍を素早く突き出し連続突きを仕掛ける。
ストリアは咄嗟に氷の防御壁を展開する。
「「アイスウォール」」
その防御は初撃を防いだものの、2撃目3撃目と致命傷は避けつつも喰らってしまう。
ストリアは追撃を避けるため、魔法をさらに唱え、氷の防御壁を展開する。
それをお構い無しに、ドルフはさらに連続突きをするが、先程の連続突きより明らかにスピードが早い。
「「オラオラどうした〜、俺の風鬼の槍はそんなんじゃ止められねぇぞ!!!」」
どうやら、ドルフの武器にはいつの間にか風魔法が付与されており推進力が増していたようだ。
「セリーアはドルフさんがいつ付与魔法使ったかわかった?」
「あれは2回目の連続突きの直前、ストリアが防御壁を展開したタイミングだね。」
「さすがセリーア、俺は全然気が付かなかったよ。」
そう話していると、氷の壁は粉々になってしまい、槍の先端がストリアの顔の前で止まった。
「こ、降参!!私の負けです。」
「「「そこまで、勝者ドルフ!!!」」」
ストリアの降参により、ドルフの勝利に終わったが、ストリアもなかなか魔素の練り上げる速度や緻密さは評価されるべきだと感じた。
隣で観戦していたセリーアは次の試合が出番なので、行ってくると言い残して控え室に戻ってしまった。
「「「第5試合を続けて行う!!!」」」
「「「セリーア、ダンパ両名は前へ!!!」」」
俺はセリーアの戦いを直に見るのは初めてなので、どんな戦法なのかは分からないが、どうやら短剣を使うようだ。
なかなか次の号令がかからないのは、ダンパが準備に手間取ってしまっているかららしい。
ワクワクしながら号令を待っていると、部屋にドルフが入ってきた。
「オイ見てたかよ俺の勝負!?」
「すごい勝負でした、いつの間に風魔法を槍に付与したんですか?」
「ガキの割にやっぱり勘がいいなお前……あれは槍に常に魔素を流し込んで、いつでも付与できる準備をしてただけだ、ってこれ以上はお前なんかに教えねえけどな。」
「凄まじい体力と集中力がないと出来ない手法ですね……。」
「少しは俺の凄さがわかったか?」
「ええ、でも俺も負けないために全力尽くしますから!!」
「そうかよ、せいぜい努力することだ。」
「まあいい、俺もこの試合は少し一緒に観戦してやるから感謝しろよ。」
「感謝って、一緒に見るだけですよね?」
「ヘッ俺の戦い方みたいにわからんところは親切な俺が教えてやるってんだ!!」
「あ、ありがとうございます。」
そうこうしているうちに、ダンパも準備が整ったようで試合の開始が近づいていた。
「それでは、気を取り直して……。」
「「「勝負、はじめ!!!」」」
号令と共に俺はセリーアの姿を見失った、と思ったらいつの間にか、ダンパの背後にセリーアがいた。
辛うじてそれに反応したダンパは、片手斧でセリーアの短剣を防いだ。
「クソっあの女やるなぁ、おいガキこの勝負は一瞬で片がつくから見逃すんじゃねぇぞ。」
「え、あ、はい!!」
セリーアの攻撃を防いだダンパは斧で牽制し距離をとる。
それに対してセリーアは、凄まじい速度で闘技会場の枠に沿ってグルグルと走り出した。
セリーアは次第に残像を生み出し、どこから仕掛けてくるか分からない状況で、ダンパは身構えるしかなかった。
セリーアは勢いそのまま、水魔法のウォーターボールで牽制をする。
3発のウォーターボールを防いだダンパの隙を見逃さなかったセリーアは、背後に回り込みダンパの首に短剣を突きつけた。
「「「勝負あり、勝者セリーア!!!」」」
終わってみればセリーアの圧勝だった。
俺はセリーアとアンデッドシープを討伐した時に勝負を挑まれてから、すぐ追ったはずのセリーアを見失ったことを思い出していた。
「ドルフさん……。」
「ああん?」
「セリーアはなんであんなに速いのかわかりますか?」
「お、お前そんなことも分からなかったのかよ……。」
「あれはな、多分あれだよ!!」
「もしかして、ドルフさんも分からないの?」
「うるせぇ!!俺はもう行く、お前は俺が直々に倒すつもりだが、次に対戦する雑魚に負けたらそこまでのやつだってことだ。」
「ザルタンさんはきっと雑魚では無いですけど、負ける気もありません。」
ドルフはそのまま控え室に戻ってしまった、それと入れ替わるようにセリーアが入ってきた。
「ディノールぅ!!!」
「見てくれてたお姉さんの戦いってやつを!?」
試験を一通り終えたセリーアは解放感を体現するかのように俺に駆け寄り抱きついてきた。
「痛いし苦しいよセリーア、見てたからちゃんと!!」
「あらごめんね苦しかったよね。」
「それより、試験官からの伝言で、30分の小休憩を挟んでから次の試合らしいわよ。」
「わかった、ちょうど話したかったから良かった。」
こうして勝負を終えたセリーアを労いながら、少し話すことになったのだった。
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