第24話第3次試験開始!!

ロロアとリリアとの談笑を終えた俺は、シャワーを浴びてから、自室で明日の個人戦のことを考えながら眠りにつき、翌朝目が覚めた。


軽く身支度をしていると、ドアがノックされたので返事をすると凛の声が返ってきた。


「入っていいかのぉ?」


「鍵は空いてるから入っていいよ〜。」


「失礼する、お主その後体の調子はどうかのぉ?」


「痺れの話?それなら少し鬱陶しいくらいで特にはなんともないよ。」


「そうか、あれからずっとそのような感じかのぉ?」


「常に軽い痺れはあるけど強くなったりはしてないかな。」


「なら良いのだがの、もし痺れに更なる異変が現れたら、妾の元へすぐ来るんだのぉ。」


「心配してくれてたんだ、ありがとう!!」


「お主に変に死なれては夢見が悪いんでのぉ。」


「素直じゃないな凛は……。」


「してお主、そろそろ集合時間だが準備は終わっておるのか?」


「もう行けるよ!!」


「では、共に参ろうかのぉ。」


「うん!!」


こうして俺と凛は、2人で残りの受験者が集う闘技会場へと向かうのだった。

向かう途中でセリーアとも合流し、3人で軽く意気込みを語りながら歩いていると、ワクワクした表情のセリーアといつも通りの凛に対して、俺は少しづつ試験への緊張が高まっていくのを感じた。



「ねぇ、ディノールって人と対峙した事あるの?」


「真剣な戦いは無いけど、お父さんとよく修練してたよ。」


「へぇ〜、じゃあ今回の三次試験も楽勝ね?」


「それはどうかな、みんな手強い感じだし油断できないよ……。」


「お主がいつも通り戦えば、妾以外に敵無しだろうのぉ。」


「ねえ凛、それって私にすら楽勝って聞こえるんだけど?」


「それは想像に任せようかのぉ。」


「あはは、さすがにセリーアには手こずるよ。」


「でも勝てるって言い草ね!?」


「まあ、誰とでもいい試合がしたいってことだよ!!」


「誤魔化しちゃって〜!!」


冗談混じりに話したおかげで少し緊張は取れ、平常心で試験に挑めそうだ。

3人で話していると、あっという間に闘技会場に到着し、先日と同じく控え室に入った。


「よぉ、今日は覚悟しておけよガキ共!!」


「なんだ、駄犬かのぉ。」

「あ、駄犬くんだ。」

「駄犬さんだ!!あ、やばいつられてつい……。」


「おぉい!!誰が駄犬だゴラァ、今日こそ白黒つけてやるからな!!」


「せいぜい頑張るんだのぉ。」


「でもさ、私たちの順位だと君と当たらないで終わっちゃうよこの試験。」


「それってどういうことだ?」


「俺が説明しますけど、昨日ドルフさんがいない間に説明された通り、1位vs14位、2位vs13位みたいに進むので、そもそも組み合わせが……。」


「チッ、そういう事か……じゃあ最終順位で決着だ!!」


そう息巻いて、ドルフは元座っていた椅子に腰をおろした。

俺達も時間までもう少しあるので座りながら話して待つことにした。


待つこと10分ほどで、無表情な女性試験官が入室し注目するように呼びかける。


「みなさん揃ってますね、ではこれより第三次試験をはじめます、現段階でリタイアしたい方は申し出てください。」


「居ないようですね、では、名前を呼ばれたものから扉を出て試験開始です。」

「なお、先日もガザンさんから説明を受けていると思いますが、勝ち負けが合否に直結する訳ではありません。」


咳払いをして、試験官が名前を呼び出す。


「7位ヤンドーラさん、8位リリアさんこちらへ。」


「観戦したいものは、隣の部屋に観戦用の鉄格子がありますので、そちらからどうぞ。」



試験官はそう言い残し、扉を開け2人を案内するところで、ロロアが立ち上がりエールを送った。

リリアはそれに笑顔で答えており、一瞬俺とも目線が合ったので、ガッツポーズで静かにエールを送っておいた。



俺は凛とセリーアに声をかけ、隣の部屋に行こうとしたが、2人は他人の試合には興味が無いらしくひとりで観戦することになった。


俺は隣の部屋に移動し、ロロアに同席の許可をもらい、リリアの応援に努める。


「「「これより第3次試験、第1試合を開始する。」」」


「「「ヤンドーラ、リリア前へ。」」」


「「「勝負、はじめ!!!」」」


その号令と共に、ヤンドーラとリリアは距離を取り、お互いの出方を探る。

リリアは魔素を練り上げ風魔法の準備に、ヤンドーラは精霊に祈りを捧げ攻撃と防御を同時に展開した。


リリアは精霊による風の攻撃をギリギリのところでかわし、風魔法を唱える。


「ウィンドスラッシュ」


詠唱と共にかまいたちのような風の束がヤンドーラ目掛けて飛んでいく、ヤンドーラは予め展開していた、防御壁で相殺した。

すかさずリリアが捲し立てる。


「ウインドトルネード」


ヤンドーラは慌てて精霊に祈りを捧げるが、間に合わず、竜巻に巻き込まれ壁に思い切り叩きつけられた。


「「「ヤンドーラ気絶により戦闘不能、よってリリアの勝利!!!」」」


号令と共に大歓声が上がり、俺は大きな拍手を送った。姉であるロロアは少し感極まった様子で喜んでいた。


「ロロアさん、リリアちゃん大勝利でしたね!!」


「はい、アテが居なくてもあんなに堂々と戦うリリアは初めて見ました、きっとディノールくんのおかげです。」


「いやいや、俺は何も……リリアの素質が花開いたんですよ。」


「ありがとう……ございます。」


結局、感極まって泣いてしまったロロアさんだが、どこか誇らしげに泣いていた。

だが試験は待ってはくれず、どんどんと先へ進んでいく。



「「「次、第2試合を始めます。」」」


「「「ペトラ、セイベル前へ。」」」



このふたりは俺と同じ、魔法も使う剣士だと聞いている、どんなものか見ものだが、入場してきた2人は緊張でガッチガチになっていた。


「「「勝負、はじめ!!!」」」


掛け声にびっくりした2人は急いで剣を構え前のめりに攻め合おうとしたその時、2人の頭と頭が思いっきりぶつかり鈍い音が響き渡る。


「これは……。」


俺は2人が気絶したのを察した。


「「「両者気絶のため試合無効!!!」」」



軽くブーイングが巻き起こる中、2人は担架に乗せられ退場していった。

そしてロロアの番がまわってくる。


「ロロアさん、頑張ってください!!」


「今のふたりの二の舞いにはならないようにします。」


涙目も乾かぬうちにロロアは闘技会場へ入場していくのを俺は見送った。


「「「第3試合ロロア、カイル前へ。」」」


「「「勝負、はじめ!!!」」」


号令とともに、一糸乱れぬ様子で火魔法の基礎であるファイヤーボールをロロアが放つ、その牽制をなんと、カイルもファイヤーボールで撃ち合ってかき消した。


どうやら火魔法使い同士の対決のようだ。


「「ファイヤーボール、ファイヤーボール」」


2人とも1歩も引かずにファイヤーボール合戦となっていたが、ロロアが横に走り出し詠唱をやめ魔素の練り直しに入ったのだった。


それに釣られる形で、カイルも魔素を練り直しているようだ。


そしてロロアは足を止め、大声で詠唱する。


「「「フォースフル ファイヤー アロー」」」


それに対抗するべくカイルも防御魔法を展開。


「「「ファイヤー メガウォール」」」


お互いの炎がぶつかり合い、辺りは灼熱の熱気に包まれ、拮抗しているかのように見えたが、どうやら魔素を多く練られていたロロアの火の矢がカイルの火の壁を射抜きカイルに命中する。


「うあああ、熱い、熱いよぉ!!!」


「「「そこまで、勝者ロロア!!!」」」


大変見応えのある勝負をしたロロアだが、どこか不服そうな表情でお辞儀をし、退場していったのだった。


次はあの、やけに噛み付いてくるドルフの試合なので、俺はいつか戦うかもしれないと、今まで以上に気合を入れて観戦することにした。


だが、先程の炎の影響で闘技会場の修復が必要になってしまった為、1時間程の休憩が言い渡された。

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