第23話ロロアとリリア
2次試験を突破した俺は、成り行きで助力したリリアと一緒に、闘技場の会場から続く通路を進んでいた。
「リリアちゃんだっけ、怪我はなかった?」
「はい!!お陰様で……すみませんお手を煩わせてしまって。」
「いいのいいの、他の受験者を助けちゃいけないなんて規則ないんだからさ。」
「優しいんですね……ウチはお姉ちゃんとずっと支え合ってきて生きてきたので、ひとりでは何も出来なくて……。」
「そうかな、俺はそうは思わないよ!!」
「実際、今回もディノールくんに助けられちゃいましたし。」
「あれはゴブリンを一掃するためであって、リリアちゃんが弱いだろうからって連携した訳じゃないよ、寧ろ弱い魔法とだとあんな風にはできなかったんじゃないかな?」
「あ、お姉ちゃんも言ってました、力の差があり過ぎるとお互いを打ち消し合っちゃうって!!」
「でしょ、俺も合わせにいったけど、魔法の力の差はそんなにないと思うよ。」
「ありがとうございます、自信が少し持てました!!」
先程の戦いについて話していた俺とリリアは通路を進んだ先で、左右の壁に1枚ずつ扉がある行き止まりに差し掛かっていた。
そこには、ガザンの姿があり屈託のない笑顔でこちらを見て手を振っていた。
「よぉ、来たなディノール、でどうだった突破か?」
「もちろんですよ、ガザンさんの言う通り2次試験は然程苦労せずに突破出来ました!!」
「そうか〜ガハハハ。」
「で?その嬢ちゃんは友達かなんかか?」
「まあそんなところですね、色々あって同時に突破したんです。」
「リリアって言います、よろしくお願いします。」
リリアはガザンの勢いに圧倒されて少し怖がりながら挨拶する。
「2人とも合格なら右の扉の中に入りな、凛も中にいるぜ!!」
「セリーアって子もこっちにいますか?」
「あーそこまでは把握してねぇけど中に入ればすぐ分かるぞ。」
「そうですね、では行きます。」
「う、ウチも行きますね。」
リリアと俺はぺこりと会釈をしてから、案内通り右の扉へ進む。
扉を開けると中には受験者の一部、10人の受験者がいた。
「お主も無事通ったか、して、その娘は誰だか聞いて良いかのぉ?」
凛にそう聞かれ、答えようとした時だった。
「リリア!!無事でよかったわ!!」
「お姉ちゃん苦しいよぉ〜。」
リリアのお姉ちゃんが相当心配していたのか、リリアを見つけた途端抱きついていた。
「ということでリリアちゃんていうんだけど、同時に突破したから一緒に来たんだ。」
「ほほう、お主と同時に突破とはなかなか腕がたつということかのぉ?」
「え、えっとウチはディノールくんに助けられる形で協力したから突破できただけです。」
「お主の優しさも大概だのぉ。」
「あの、妹への協力感謝します、アテは姉のロロアと言います、以後お見知りおきを。」
「これはご丁寧に、俺はディノールです。」
「妹と2人で少し話したいので、これで一旦失礼します。」
そう言い残し、2人は部屋の隅へと移動してしまった。そして、俺はこの部屋に入ってからずっと気になっていた事を凛に問う。
「ねぇ凛、セリーアはもしかして?」
「ああ、あやつなら厠だから安心して良いのぉ。」
「あ〜トイレか、良かった!!」
「あの駄犬も突破しておるがのぉ。」
「で、そのドルフって人はどこに行ったの?」
「あやつは他の受験者の魔法と接触事故があったらしく、軽傷だが治療中だのぉ。」
「それは災難だね……でも、あの人いないと静かでいいけどね。あはは」
そう笑いながら話していると背にしていた扉が開き、大声で話しかけられた。
「ねぇ君、そのうるさい人って私じゃないでしょうね?」
「せ、セリーア!?誤解だよ、ドルフって人の話だから……。」
「あ!!そうだったのね、お姉さん勘違いしちゃったわ。テヘ」
そんなこんなで、ドルフ以外の合格者が出揃ったようで、ガザンが中に入ってきて2次試験終了を宣言した。
「よし、ドルフってやつぁいないが、これで2次試験突破者が揃ったな、ここで暫定順位を発表する。」
「ちなみに、明日は受験生同士の個人戦が第3次試験としてあるんだが、それに順位も関わるからよく聞いておけ。」
「1位凛、2位ディノール、3位セリーア、4位ドルフ、5位ロロア、6位ペトラ、7位ヤンドーラ、8位リリア、9位セイベル、10位カイル、11位ストリア、12位ダンパ、13位ザルタン、14位ゴドルック以上14名だ。」
「それに伴って1位vs14位、2位vs13位、3位vs12位というように進み、組み合わせをしていくので覚えておくように、それから三次試験はあくまで実力を見るためであり、勝ち負けが合否に直結するものでは無いこととする。」
こうして第3次試験の組み合わせが決まり解散となった。自室に戻ってしっかり休養してから食堂にて食事をとるように言い渡されたので俺は自室に向かったのだった。
俺は自室で少し休憩をしてから、食堂に向かっていたが、途中でロロアとリリアを見かけたので話しかけてみることにした。
「2人ともこれから食堂行くんですか?」
「はい、ディノールくんもですか?」
「そうですよ。」
リリアは、少しキラキラした眼差しでロロアは、少し警戒したようにこちらに振り返り返事をしてきた。
「俺も何か食べてシャワー浴びようかなって思ってたので、良かったら一緒にいきたいんですけどダメですか?」
「ウチは是非一緒に行きたいです!!」
「アテもお好きにしていただいて大丈夫です。」
「じゃあ、せっかくだしよろしく!!」
俺と2人は食堂に向かい、軽食コーナーで腰をかけて少し話す運びとなった。まだ打ち解けきれていないので、まずは世間話から振ってみる。
「ここの食堂至れり尽くせりだし、時間外でも軽食はとれるから本当にありがたいですね。」
「はい、とてもじゃないですが今までのウチたちの旅の食事とは比べ物になりません……。」
「アテらは、もっと小さい頃から2人で旅して来たので、親の料理より干し肉や保存食ばかりでしたからね、ありがたいことです。」
「俺も旅は4ヶ月程しかしてませんが、干し肉にはお世話になりましたよ。あはは」
「ディノールくんは、どんな旅をしてきたんですか?」
俺は、リリアとロロアに旅に出るきっかけや痺れの話、これまでの旅の経緯など話せるところは正直に、後々面倒になりそうな凛のことなどは嘘を交えて一通り話した。
「ディバインリーパーの呪いですか……大変な目にあってきたんですね、ウチもディノールくんに恩返しがしたいので、なにか手伝えることあれば言ってくださいね。」
「妹への恩義にはアテも応えたいので、協力しましょう。」
「2人ともありがとうございます。」
「それはそうと、俺も2人のことよく知らないので少し聞いてもいいですか?」
「いいですよ!!」
「どうぞ。」
「2人は幼い頃から旅をしてきたって言ってましたけど、今はいくつなんですか?」
「ウチは7歳です!!」
「アテは10歳です。」
「ちなみにディノールくんは?」
「俺は5歳ですから、1番年下でしたね……もしあれなら敬語はやめて頂いても大丈夫ですよ?」
「ウチはみんなにこんな感じですからこのままで大丈夫です。」
「アテはまだ信用しきれた訳ではないですし、しばらくはこの距離感でお願いします。」
「あはは、そうでしたか、俺も信用してもらえるように頑張りますね!!」
その後も2人について少し聞いてわかったことは、両親は既に殺されて死別しており、その犯人の手がかりを掴むべく旅をしていること、そこからは2人で支え合いながら放浪していたが、途中で学院のことを知り、初めて今回受験しているということだった。
リリアは元はお母さん子だったが、死別をきっかけに心を閉ざしていて、ずっとお姉ちゃん子だったという、俺に対しては危機を助けてくれたのと雰囲気が優しいということで既にかなり心を開いてくれているらしい。
ロロアはリリアによると昔からしっかり者で、お母さんの手伝いを率先してこなしたり、家の手伝いをしていたりしたことで、急な死別も心を強く保ち乗り越えてリリアを守りながらここまで来たという。
2人とも人間不信気味で、こうして他人と普通に話すことすら久しぶりで、旅の道中は魔物を2人の連携で倒し、自分たちの力で路銀を稼ぎどうにかここまでたどり着いたとの事だ。
「リリアちゃんは風魔法が得意みたいですけど、ロロアさんはどんな戦い方をするんですか?」
「アテは火属性魔法が得意なので、リリアと連携して魔法の力を高めて戦ってきました。」
「火と風は特に相性いいですからね、俺は雷なので多分光属性から分岐した力なので、相性はどうなのかわかりませんが。」
「雷とは珍しいですね、アテは雷魔法を扱える人とは初めて会いました。」
「ウチとの連携した魔法のサンダーというのも凄かったですし、特別な才能があるのかもしれませんね!!」
「特別だなんて……でも、珍しい力って聞くとワクワクしますね。」
その後も少し打ち解けた俺と2人は、時折冗談話をしつつ、お互いの生い立ちや苦労したことを話して自室へ戻ることにした。
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