第22話第2次試験

俺は食堂を後にしてから、外出禁止になり自室にてひとりで両親に手紙を書き綴っていた。


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お父さんとお母さんへ

お元気ですか、俺は無事ラグザ王立学院に到着し、第1次試験を突破したところです。

旅の道中リントの街ではヴルブッドさんに会い、ネクリアでは昔2人に助けられたという万事屋の店主さんなどにお世話になり、1次試験の山の管理人ガザンさんにも親切にしてもらい何とかここまで来られました。

それと、旅の途中から凛というとても強くて可憐な少女が仲間になり、アンデッドシープを討伐した時に一緒だったセリーアという女の子とも仲良くなれそうです。

その2人とは、王立学院の試験も一緒に受けることになったので、仲間が増えて心強いです。

試験内容は口外禁止ということで言えませんが、今のところ難なく乗り越えられそうです。

お父さんとお母さんに会えないのは寂しいですが、自分で決めた以上、これから待ち受けるであろう試練を乗り越えて立派になって帰ります。

2人とも怪我や風邪に気をつけて、元気に待っていてください。

ディノールより


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「よし、こんなところかな、明日試験官にお願いして届けてもらおう。」


俺はその後、すぐに横になり翌朝の試験開始を待つのだった。



翌朝、部屋の扉の大きなノック音で起こされる。


ドンドンドンドン!!!


「なんだ!?もしかして遅刻!?」


「ディノール起きてるなら朝食行かない?」


「なんだ、朝食を誘いに来たセリーアか……。」


俺は手で顔を拭うようにしてから、今いくよと返事をして、自室を出た。そこには凛の姿もあり、どうやら凛もセリーアに叩き起されたようで、まだ少し眠たそうだった。


「さっ、2人とも朝食をたくさん食べて今日も乗り切りましょう!!」


「そなたは朝から元気よのぉ、妾は朝餉より睡眠の方がとりたいのぉ。」


「それは俺も凛に同感……。」


「でも、このタイミング逃したらすぐ試験開始でご飯食べられないし、食べるもの食べておかないと元気でないでしょ??」


「それは一理あるがのぉ……久方ぶりの柔らかい布団だったのでな、ついもう一眠りしたくなるのぉ。」


「俺も朝食行くから、すこーし声量を抑えてくれないかな?」


「あらごめんね、うるさかったかしら。」



こうして食堂に向かった俺たちは、至れり尽くせりなご馳走バイキングのような朝食を取りながら、3人で談笑していた。



「セリーアは、どうして学院受験をしてるの?」


「私?私はね、女だからってなめられないように強くなりたいのよ、そしてみんなのお姉さんみたいに慕ってくれる人を増やしたい、そんなところね。」


「へぇ〜、十分強いと思うけどダメなの?」


「それなりに強いつもりだけど、それだけじゃまだ足りないの、知識も経験もね。」


「そなたは向上心の塊だのぉ、その気持ちを忘れなければ、自ずと上に行けるだろうのぉ。」


「ねえ、凛てなんでいつも上からものを言ってくるのかしら、すごく気になるんだけど?」


「それは……なんでだろうのぉ?」


「多分、それだけ色々な経験をこの歳と見た目の割にしてるから、ついってことじゃないかな。」


「確かに、私たちとあまり歳も変わらないのに、海を渡ってひとりで生活してたのだもんね。」


「まあ、そういうことにしといてくれんかのぉ。」


「実力も俺とセリーアよりきっとあるから今は許してあげてよ。」


「いつか私が凛とディノールを守れるくらい強くなってあげるから待ってなさいね。」



そんな話をしていると、試験20分前の予鈴がなったので、俺たち3人は食器を片して、自室で準備を済ませ、昨日の待合室へと向かった。



「よぉお、ビビらずに残ったかよ!!」


ドルフが再会そうそう突っかかってきた。


「駄犬なんかには如何様にしても怯えられんからのぉ。」


「凛、とりあえず俺達も席つかないと、試験官来ちゃうよ!!」


「そのおかっぱに守られてねぇと何も出来ねぇのかチビガキ!!」


「どう思われてもいいので、試験で正々堂々と決着をつけましょう。」


「フンッ!!」


一悶着があった直後、昨日の無表情試験官が入室して部屋の前方に注目するように指示を出した。


「ええ、昨日も説明した通り、本日はゴブリン討伐を闘技場で行っていただきます、その最中観覧席の方からは在校生や試験官がしっかり見ていますので、得点を上げたいものはアピールをして討伐するように。」


「危険と判断されたものは、否応なしにこちらから止めさていただき、即時失格とさせていただきますのでご留意を。」


「本試験では、妨害行為を極力抑えるため4人ずつ、計10組に別れて行います。なお、最後の1組に関しましては3人で行っていただきます。」


「では、闘技場へ移動します、着いてくるように。」



俺を含め受験者は、指示されたとおりに闘技場へ闘志を剥き出しにしながら向かい、闘技場に繋がる控え室に通された。


外からはガヤガヤとした、在校生のものであろう声が聞こえており、予鈴と共に歓声が上がった。


「では、1組目から呼ばれたものはこちらの扉を出て闘技場内へ進んでください。」


「ロロアさん、ヤンドーラさん、セイベルさん、セリーアさん以上4名こちらからどうぞ。」


「おっと、早速私の出番ね、ディノール、凛先行ってくるわね!!」


「ふむ。」

「頑張ってね!!」


名前が呼ばれた4人が退出し、数十秒後再び大歓声が巻き起こった。恐らく4人が入場したのだろう。

その後、銅鑼のような音が鳴り地響きのような大歓声も続いた。


十数分後、次の4人が呼ばれ1組目と同じように、歓声が上がり銅鑼がなり……という繰り返しだった。


先に退出した面々が帰ってくることはなく、次々と呼ばれ9組目まで来てしまった。


「次、ペトラさん、ドルフさん、凛さん、ストリアさんどうぞ。」


「やっと妾の出番かのぉ。」


「へっ、俺の出番がおせえってんだ、しかもおかっぱと一緒か……同じ組だったこと後悔させてやるぜ。」


「本当に良く吠えるのぉ、今回の討伐対象が駄犬でないことをありがたく思うんだのぉ。」


「私語を慎み、早く闘技場へ行くように。」


「凛がんばれ、俺もすぐ行くから!!」


そう言うと、少し凛が微笑んだように見えた、そして銅鑼が鳴った。


俺と他に残った2人はかなり待たされているので、フラストレーションが溜まっている雰囲気だ。あまり刺激しないように、俺は静かに呼ばれるのを待つことにした。


その頃、闘技場では凛がゴブリンを瞬殺しており、受験者はおろか観覧席もドルフと試験官以外全員が唖然としていた。


「おい!!何したおかっぱ!!」


「妾は、ただゴブリン討伐をしただけだのぉ。」


「まだ、銅鑼がなったばかりなのに有り得るかそんなこと!!」


「駄犬には無理でも妾にはできてしまうということかのぉ。」


「「「凛、第2次試験突破!!他のものは続行せよ。」」」


「試験官もそう言っておるでのぉ、妾は先に失礼するかのぉ。」



俺はそんなことはつゆ知らず、十数分後に名前が呼ばれ、入場した。

闘技場に入ると、観覧席は謎のどよめきが巻き起こっており、受験者は少し呆気にとられていた。


「「「第10組2次試験開始!!!」」」


その掛け声とともに、ゴブリンが解き放たれ銅鑼が鳴った。

俺はすぐさま剣を抜き戦闘態勢に入る。2次試験では魂に干渉する技は温存し、魔法を付与して戦うことにした。


「エンチャントサンダー」


その小さな掛け声とともに剣の刀身にビリビリと雷が纏っていき、向かってきたゴブリン一体を稲妻のような閃光を放ちながら真っ二つに斬り裂いた。

それと同時に、歓声が少し上がる。


「イメージばかりしてきて実戦はそんなだったけどこれなら問題ないな。」


そうして勢いづいた俺は、様子を伺っている2体目のゴブリンに向かい駆け寄り斬りかかった。


ぎぇ〜


2体目も難なく倒した時、視界にうずくまった受験者の少女がゴブリンに襲われかけてるのを見つけた。

俺は少女に駆け寄り、剣を振りゴブリンを後退させる。


「大丈夫?まだ止められてないから失格では無いけど、戦えないなら棄権しな?」


「あ、ありがとう……お姉ちゃんがいないと私何も出来ないから……。」


「君はどういう戦闘が得意?」


「風魔法なら使えますけど……。」


「よし、そしたら風魔法で竜巻をおこせるかい?」


「それならできます!!」


「そしたら、あの4体かたまってる所に目掛けて撃つんだ、俺が合わせてサンダーを撃ち込んで攻撃力を高めてあげる。」


「どうして見ず知らずのウチを助けてくれるの?」


「いいから、止められる前にやるよ!!」


「はい!!」


そして少女は深呼吸をして風魔法を打つ準備をする。それに合わせて俺もサンダーの準備をした。


「ウィンドトルネード!!」

「サンダー!!」


「連携魔法ウィンドストーム……なんちゃって。」


みるみるうちに竜巻は辺りを巻き込む嵐のように変化し、雷と突風の力でゴブリンたちは木っ端微塵に切り刻まれた。


「すごいです、今の魔法!!」


「即席の割には良かったね、自己紹介してなかったね、俺はディノールよろしくね。」


「ウチはリリアです、よろしくお願いします。」



「「「ディノールならびにリリア2次試験突破!!」」」



こうして俺は、お人好しを発動しながらプランからは逸れたが、無事に2次試験を突破して先に突破した人たちの元へと向かうことになった。

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