第17話アンデッドシープ討伐戦

受付を済ませた俺は急いでセリーアの後を追うように北の森へ向かっていたが、何故かセリーアは見当たらない。


「ソウル パーセプション」


(なんじゃその掛け声は、いつ決めた?)


「わあっ!!」


(いきなり突っ込まないでよ……索敵とかする時に気合い入れたいから掛け声決めたんだよ。)


(ほほう、横文字が好きだのぉ。)


(いいだろ、かっこいいんだから……。)


(よぉわからぬのぉ、日本人だと言うのに異国の言葉ばかりに憧れるとはのぉ。)


(だって、魂知覚って言っても締まりが悪い気がするし、他の術も外国語に統一してるからいいかなって……。)


(まあ、この世界の言葉も異国の言葉と大差ないからのぉ、耳障りという訳では無いから良しとするかのぉ。)

(して、誰を探しておるのだ?まだ林は先であろうに。)


(そうなんだけど、セリーアって子が勝負だって吐き捨てて先に行ったんだけど、走ってきたのに追いつけないからどこまで行ったのかとね。)


(ふむ、そやつなら恐らくもう林に行っておるのぉ。)


(ほんとに!?そんな早く林に着くなんてどんな移動速度なんだ?)

(まあ仕方ない、俺も急ごう。)


俺は、一方的に挑まれた戦いだがやるからには負けたくないという気持ちと、報酬目当てに一目散にソウル パーセプションを展開しながら林へ向かい、到着した。


林では、魂の光が弱まっている面々が多数おり、見たところ負傷で部分的にアンデッドのように傷を負っていた。

そんな中でも、一際明るく青い光のセリーアは魔法を付与した短剣でアンデッドシープ相手に善戦しているようだった。


「よし、俺も負けてられない、ものは試しで死霊術で戦ってみるか!!」


そう小声で気合いを入れた俺は、凛がダゴ村で見せてくれた戦いを思い出した。

あの時は、影と思っていた触手はソウルパーセプションで広げた魂をさらに形状変化させていたのだとここで初めて勘づいた。


まだ、戦闘中または負傷して傍観している人がいるため、凛にはアドバイスは貰えないので、ソウルパーセプションからさらに触手を伸ばすイメージを反復しながらアンデッドシープの魂を探す。


少し歩き回りながら、索敵をしているとひとつ禍々しい魂を発見することが出来た。


「よし、多分こいつだな、横取りはしたくないからセリーアとは別のこいつを狩ろう。」


十数メートル離れたところにアンデッドシープの魂を発見した俺は、駆け足であと数メートルのところまで近づいて肉眼でも確認してから攻撃を仕掛ける。


「ぶっつけ本番だけど、成功してくれ!!」


「「「ソウル デヴァウア」」」


俺は、敵の魂に触手を食いつかせるイメージをしながらそう唱える。

触手はイメージ通りに出たが、食いつくイメージとは少し違い上手くダメージを与えられなかった。


その間に、敵は声に気が付き俺目掛けて走ってきた。


俺は少し焦りながらも、もう一度強くイメージをして掛け声を唱える。


「「「ソウル デヴァウア」」」


アンデッドシープがあと2、3メートルで突っ込んでくるというところで、俺の死霊術が間に合い、次こそ敵の魂に牙が届いた。

魂への直接攻撃により致命傷を与えた俺は、とどめを刺すためと練習も兼ねて、目の前でソウルデヴァウアをもう一度唱え1匹目を狩り終えたのだった。


「よし、これなら何とか行けるか?でも、最初上手くいかなかったな……距離が離れるとどうも上手くイメージのようにいかないから、次はもっと近くから始めてみるか。」


ブツブツ独り言を呟いて考えを整理していると、他の戦闘で気が動転したアンデッドシープ2体がこっちに走ってくるのがわかった。


「よし、こっちに気がついてる訳じゃないし、勝手に近づいてくるのは丁度いい……強くイメージだ。」


2匹が塗り広げた魂の範囲に入り、10メートル、8メートルと近づいてくる。

あと5メートルのところで木の影から仕掛ける。


「ソウルデヴァウア!!」


塗り広げた魂から触手のようなものが伸び、2匹を目掛けて噛み付いた。

アンデッドシープは瞬く間に俺の横で倒れたのだった。


今回は距離も短く、冷静に対応出来たおかげで一撃でとどめを刺すことが出来たようだった。


「これじゃあ、まだ実践向きじゃないかな……。」


出来栄えに納得はしているものの、相手との距離やイメージに時間がかかりすぎてしまう事を考慮すると、まだまだだと言う結果をおれは冷静に受け止めソウルパーセプションを解いた。


「あれ?君もう2匹も倒しちゃったの?」


「あ、セリーア!!」


「セリーアだけど?お姉さんの質問に答えてよ〜。」


「ごめんごめん、2匹というかもう3匹倒したよ!!」


「え〜!?あんな手強いの3匹を、この短時間で倒しちゃうなんて何者なのよ君は!!」


「ディノールだけど?」


「あ〜、年上の人をからかってはいけません!!」


俺はセリーアに優しくゲンコツをされた。何故かセリーアと話しているとからかいたくなってしまった。


「すみません。セリーアは1匹目倒したの?」


「なんとか倒して、角もほらこの通りよ!!」


「あ、角忘れるところだった!!」


俺は、依頼達成の報告のため、急いでアンデッドシープの元へ戻り、3匹分の角を解体し回収するのだった。

どうやら絶命したアンデッドシープの体液には、生来のような毒性は無くなっているようで何事もなく回収することが出来たのだった。


それから、セリーアと合流した俺は2人で依頼主のダリルとシバイが待つギルドへと向かい、完了の報告をしていた。


「まさか、最年少のディノールが1番とは恐れ入った。それにセリーアもまだ若いのに単独撃破か……2人とも将来有望だな!!」


「じゃあ、ギルド加入できますか?」

「私もギルド入りたいんですけど……。」


「ああ!!もちろん大歓迎だと言いたいんだが、10歳未満はそもそもギルド加入出来ないんだ。」


「「「えぇ!!!」」」



「だが、さすがにこんな有望な2人を放っておくほど、ギルドも安定していない。だから権利書を発行する。」


「その権利書を2人にですか?」


「ああ、これを持っていれば10歳になると同時にギルド加入が約束されるのと、最低ランク飛び級の権利書だ。」


「「「おぉ!!!」」」


「これなら文句ないだろ?最初の採取クエストとか荷物運びなんてしないで、飛び級した状態から冒険者になれるなんて滅多にないからな!!」


「わかりました、それで俺は大丈夫です。」


「そうね、君がそう言うなら私も納得せざるを得ないわね。」



こうして俺は、討伐依頼を3匹分の銀貨と権利書をもらい完了することになったのだった。

ちなみに、セリーアも1匹分の銀貨はしっかり貰えたようだ。


俺とセリーアはその後、少し会話を交えたあとお互いの旅を続けるため別れ、俺は宿屋に戻ってもう一泊して旅の計画を立てるのだった。

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