第11話旅立ちの前に
ラグザ王立学院へ向けて、旅に出る決意をした俺は背中の模様とやらが気になっていた。
「家に誰もいないの初めてかもな〜、にしてもこの全身の痺れいつまで続くんだろ……雷に打たれた人と同じ模様ってのも前世と関係あるのかな?」
そう、今日は両親共々俺の旅立ちに向けて必要なものを揃えに色々な店をまわってくれている。
(多少の関係はあれど、因果関係はないようじゃな。)
「うおっ、びっくりした!!」
どうやら凛が心の中で話しかけてきたようだ。
(そう驚かんでもよかろうに。)
(いや、凛の方から話しかけられるの初めてというかできたんだって感じでさ……。)
(ふむ、普段は魂の気配を消しておるからの。)
(気配を消す必要があるの?)
(お主の中に魂が2つあることが、もしも他の者に知られたら色々と面倒であろう。)
(でも、魂とか霊を知覚できる人は居なかったって言ってなかったか?)
(そうだのぉ、だが警戒すべき奴らならおる。)
(と言うと?)
(魔眼持ちと魔人の中でだけだが、妾の集めた情報によると魂を知覚、または魂に干渉しうる力を持っている可能性があるのでのぉ。)
(じゃあ俺も魔眼持ちなのか?)
(それはどうやら違うのぉ、魔眼というのは精霊の細かな動きや魔素の流れ、少し先の未来などを個人差はあれどある程度見抜くことが出来るらしいようで、念の為の措置というところだのぉ。)
(それもはやチートじゃん!!)
("ちーと"とはなんだの?)
(ああジェネレーションギャップか………。)
(じぇねれ……だからなんなのだ!!)
(初めて凛が感情的になった!!ハハハ)
(ええい、良いから説明せい!!)
(簡単に言うとチートは通常じゃ考えられないえげつない能力とかを言うのかな?俺も感覚で使ってるから曖昧だけど。)
(なるほどのぉ、確かにそう言う意味ならば的を射ているかもしれんの。)
(ジェネレーションギャップは生まれた世代によって常識とかその他もろもろがズレてる時に使うかな……。)
(ほほう、まあ実際お主と妾はかなり世代は離れておるし、仕方あるまい。)
(で、話を戻すけどさ……仮に魂が2つあるのがバレたとしてなにか不都合でもあるの?)
(これはお主にも関わる問題でのぉ、そもそも魂が1人1つという魂を知覚できるものにとっては常識から外れた時点で、研究対象または討伐対象になってもおかしくないんだのぉ。)
(研究対象は分かるけど討伐までされるの?)
(そうだのぉ、妾は過去に魂に干渉する能力を使っただけで国を追われた経験もしておるし、魔人はどうか分からんが、国に属する魔眼持ちは人外や異端として討伐に出る可能性も十分考えられるのぉ。)
(確かに、よく分からないものって異様に怖く感じることあるしそういう事か。)
(でだお主よ。)
(ん?)
(明日旅立つのはお主の中で聞いていた、そこで頼みがあるのだが、王立学院に向かう道中で傀儡の身体で良いから手に入れるか、制作して欲しいんだのぉ。)
(傀儡って、人形を依代にしても逆に見た目は人形で、余計騒がれないか?)
(その点は心配無用だのぉ。)
(何か策があるの?)
(妾は昔魂の研究を色々していて、何の装飾もされておらぬすっぴんの人形に、自分の魂を憑依させてみたんだがの。)
(それでそれで?)
(魂を魔素のように薄く循環させると妾そのものの見た目に変化したんだのぉ。)
(なんだそれすげ〜、どういう原理なの?)
(人体は無理だが、形の似ている無機物なら見た目は案外容易に変えられるんだのぉ。)
(お主の時代にそういう伝承があるか知らんが、日本人形の髪が伸びたりと同じような事だの。)
(ああ、ホラー作品とかで定番だよそれは。)
(ほらー?)
(怖い話とか怪談とかの事だよ。)
(日本の言葉なのか異国の言葉なのかすら妾の判断が及ばんのだ……妾も言葉を学ばぬといかんかのぉ。)
(俺もなるべく英語とか現代の造語は控えるけど、その方が助かるかな。)
(お主がそう言うなら、お主の記憶から学ぶとしようかのぉ。)
(そんなことできるの……てか、変な記憶は覗かないでよ!?)
(安心せい、世の殿方は誰でもそういう一面を持ち合わせているものだと妾も学んでおるでの。)
(そういう事じゃなくて……。)
(話を戻すとするかのぉ。)
(俺のプライバシーは無視か〜い。)
(ふふ、そんな言葉知らんのぉ。)
(先程話した通り、依代となるすっぴんの人形などがあれば、妾も旅仲間として同行し学院を受験することも可能だと思うからのぉ。)
(学院を受験するのか、でも身元とかどうするんだ?)
(あそこは出身や身分が関係ないからのぉ、適当に伝えても問題無と思うがのぉ。)
(そういう問題なのかぁ……。)
(というわけで頼んだからのぉ、素材を集めてくれれば人形作りは妾が教えられるから安心していいからのぉ。)
(まあ、ずっとひそひそと心の中で会話するのも辛いだろうしわかったよ。)
(感謝するぞ、そろそろ両親が帰宅するでのぉ、失礼するかの。)
ガチャ
「ディノただいま〜!!」
「おかえりふたりとも。」
「諸々を大量に買ってきたからな、安心して旅できるぞぉ。」
(凛は気配が察知できるのか?)
(…………。)
その後凛からの返答はなかった、人前では本当に心の中でも話さないようだ。
背中の模様などのことも知ってる風だったし、後でしっかり聞いておくとしよう。
「どうしたディノール嬉しくないのか?」
「あ、いや嬉しいよ!!ありがとう!!」
「明日は記念すべき門出だからね、今日はご馳走を準備するからディノ楽しみにしていてね!!」
「お母さんもありがとう。」
こうして2人が帰ってきたことで我が家は一気に賑やかになり、わいわいと旅立ち前最後の夜を惜しみつつ夕飯を食べ、3人川の字で眠るのだった。
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