第7話修練開始!!
時はすぎ俺が3歳になった頃……。
今日から剣術の修練が始まる。
家の庭先から木剣と木剣がぶつかる音が響き渡る。
「よしディノール、そこで体重をかけて前に切り込めっ!!」
「すごいなディノール、数日前から木剣を渡してただけなのにここまで打ち込めるのか……末恐ろしいほどだぞ。」
「隠れて素振りとかしてたからね。」
「さすが俺の子ってところか!ハッハッハ。」
「でもさすがに隙が大きかったり、力が伝わってなかったりする部分が多いからそこを修正していこうな。」
「わかった!!」
最近は魔物も大人しく、世界の情勢も安定していることから比較的平和で、ドーゴンが戦闘に出かけることも少なくなっていたため、心置き無く修練に付き合えるそうだ。
実際、ドーゴンの仕事ってなんなんだろう?雇われ兵士か、冒険者かそれとも傭兵なのか?なんにせよ、稼ぎがある程度あるのは確かだろう、なぜなら他所の家はまだ見た事ないが、それなりに家も大きく食事も毎日罠にかかった動物がメインとはいえ豪勢な方だと感じているからだ。
「名のある英雄だったり?いや、まさかな……とにかく今は修練だな。」
「どうしたー?ブツブツなにか分からないのかー?」
少し離れたところからドーゴンが問いかけてきた。
「大丈夫だよお父さん、続けよう!!」
「よし、そう来なくっちゃな。」
こうして俺とドーゴンの修練は毎日休むことなく続くのだった……。
時はさらに進み4歳半の冬のとある夢の中。
「おい、お主いつまで妾を忘れているつもりだのぉ……そろそろ思い出さんか約束したであろう。」
「魔力回路も既に正常に動いておると言うのにお主は全く……呆れたやつだの。」
夢の中でどことなく懐かしい声が響き渡っていた。
「起きたらこの夢のこともまた忘れるのであろうなお主は、凛じゃぞ妾の名をそろそろ思い出すのじゃぞ。」
「……ィノ、ディノ起きて、朝よ。」
「ん?お母さんか、なんか夢を見てたような。」
「どんな夢を見たのか覚えてないの?」
「魔力回路がどうとか、呆れただの名前だのってよく分からなかったけど懐かしい声だった。」
「変な夢だけどそれってお告げじゃないかしら?」
「え?ほんと!?」
「この年で魔力回路と言ったらお告げ以外考えにくいわよ。」
「じゃあ魔法とかの修練ができるんだね!」
「そうね、でもその前に顔洗ってご飯よ。」
「はーいっ。」
俺は布団から飛び起きステップをふみながら、外の井戸まで一目散に行き顔を洗う。
「やっとかぁ長かったな〜。」
「長かったってなにがだ?ディノール」
「おぉお父さんかびっくりした!!」
「俺はお前が来る前からここにいたぞっ!!」
「ごめんねお父さん、お告げが来て舞い上がってたんだよ。」
「ついにか!?やったなディノール。」
「そうなんだよ!今日から早速修練しようよ。」
「おうっ!もちろんだ任せろ!!」
「急いでご飯食べて始めよう。」
俺はドーゴンを置いて家の中にかけ戻る。
「いただきまーす。」
「どうぞ、召し上がれ。」
「ご馳走様〜。」
「お粗末さま……って早すぎよディノ。」
「ハハハ、あいつ相当嬉しいんだな、俺もお告げが来た日はああやって騒いでたの思い出すよ。」
「そうね、私も何ができるのか楽しみで仕方なかったわ。」
「さて、ディノールを待たせると可哀想だから俺も急いで食べて庭に行くよ。」
食後の俺は一目散にドーゴンの本を持ち庭に出てペラペラとページをめくって待っていた。
「よし、ディノール始めるとするか。」
「早かったねお父さん、急いでくれたの?」
「当たり前だろ〜、空腹で目の前に美味そうな飯があるのに待たされてるのと同じくらい辛いだろうからな。」
「ん〜なんか違うけど、待ち時間が少なくて助かるよ!!」
「そ、そうか。」
「基本は覚えてるか?魔力回路に魔素循環させてイメージしながら詠唱して形態変化させて発動だぞっ。」
「バッチリ復習済みだよ、さっき読んだからね。」
「よし、じゃあまずは一通りの属性を試してみようか、火から行ってみよう。」
「お父さん詠唱って絶対必要なの?」
出来れば恥ずかしい詠唱は避けて無詠唱で行えるとベストだが……。
「ものによるかな、剣に属性付与する時は詠唱してないし技名を言ってるだけだからな。」
「そっかわかったよ!!」
まずは熱い火をイメージして、、、、
「ファイヤッ!!」
シーーーーン。
「あれ、全く何も起こらないよ?」
「最初だから仕方ないさ、次はウォーターをやってみろ。」
「水魔法だね、次こそは……」
まずは、流れる水をイメージ、イメージ。
「ウォーター!!」
シーーーーン。
「俺才能ないのかな……。」
その後も、火、水、風、光、闇全てを試したが基礎魔法は何も発動しなかった。
落ち込んでいる俺を見かねたドーゴンが語りかけてきた。
「ディノールの中で今までに経験した1番印象に残ってることを思い浮かべるのはどうだ?」
「印象に残ってるか……。」
「例えば火に触ろうとして火傷した痛みや熱さとかそういう出来事ないか?」
「あ、雷だ。」
「雷?なんで雷なんだ?」
咄嗟に口に出してしまったが、ドーゴンは前世の記憶があるのことを知らないという点を俺は失念していた。
どうにか誤魔化すためにさらに嘘をついてみる。
「1歳の頃嵐が来たの覚えてる?その時始めて雷を見たんだけどこの世の終わりなんじゃないかってくらい怖かったんだ実は……。」
「覚えているが、それは初耳だな……でも行けるかもしれないからイメージしてみるんだ。」
何とか誤魔化せたようだ、俺は雷に打たれた時のことをなるべく思い出してみる。
「よし、行けそうだ!」
雷のあの光と圧倒的なチカラをイメージだ……。
「サンダー!!」
パチパチパチッ
指先から黒い稲妻が数メートル先まで小さいが確実に出ているのが見えた。
「なんだ、今の?本当にサンダーなのか?ディノール雷をイメージしたんだよな?」
「うん、ちっちゃいけど稲妻でたよね!?」
「大きさは最初は誰もが小さいからいいんだが、色なんだよ問題は……。」
「確かになんか黒かったような。」
「もう一回次はもう少し大きくだすイメージであの木を狙ってみてくれ。」
「わかった。」
いつになく取り乱すドーゴンに言われるがままもう一度やってみることにした。
「イメージ、思い出すんだあの時を……。」
俺は死の間際こっくりさんをしながら雷に打たれたあの時をより鮮明に思い出す。
イメージの中で、
「妾のことを思い浮かべるんだのぉ」
そう言われたのを思い出した。名前……名前……ダメだ思い出せない、とりあえず雷だ。
「よし、このイメージだ!」
「サンダーー!!!」
バチバチバチ、ドッコーン
黒い稲妻の雷鳴と共に木が倒れる音がして、辺りに少し気が焦げた匂いが漂う。
「サンダーでこの威力……中級レベルの威力を基礎魔法で出したって言うのか??」
「ごめんなさい、やりすぎ……。」
俺はその場に倒れてしまった。
「無理もない、あれだけの威力を初日で出したんだ魔素も使い切って寝ちまったか。」
「暫くはイメージ修練だけにしておこうかな。」
数時間後俺は布団で目を覚ました。
「おぉディノール大丈夫か?」
「良かったわ目を開けてくれて……。」
目を開けるとそこには心配そうにそして、安心した顔で俺を見つめる両親の顔があった。
「あれ、どうして布団に?魔法は?」
「サンダーを2回撃ったあと魔素切れで倒れたんだよ。」
「魔素切れ?」
「魔素にはその人個人の総量があって体の成長や修練によって増幅するんだがまだ初日だったからな。」
魔素とはゲームで言うMPのことだろう、それを使い切ると寝落ちするなんて不便だが致し方ないことだ。
「そこでだ、ディノールしばらくはイメージ修練だけであとは剣術に当てようと思うだがどうだ?」
「そうだね……毎日倒れる訳にもいかないししばらくはそうするよ。」
「ただこれからは戦いを想定して、剣術修練とイメージ修練を同時にやるんだぞ。」
「なんで同時に?」
「魔物と戦う時に立ち止まって魔法をイメージする訳にもいかないから何してても魔法が撃てるようにする修練も兼ねてるんだ。」
「そういうことならわかったよ。」
そうして俺は大事をとって2日ほど安静にした後、半年間に渡り剣術とイメージ修練を続けた。
数ヶ月がすぎた頃には手加減をしているとはいえドーゴンからイッポンを獲る時があるほど剣術は上達していた。
そして半年後……。
今日も修練は続く中俺は我慢していたことをドーゴンに伝える。
「ねえ、お父さん1つお願いしたいんだけど?」
「なんだ?本気を出せって言うのはなしだぞ、木剣とはいえディノールの実力じゃ数秒と持たずに気絶して大ケガだからな。」
「違うんだ、そろそろ俺も5歳だろ……だから……家の外に出て森とか冒険してみたいんだ。」
「なんだそういう事か。」
「よし、じゃあ5日後の誕生日に森の大樹に挨拶しに行くか。」
「大樹に挨拶?」
「そうだ、森を抜けるとひらけた草原にひとつの大樹がある、そこには沢山の精霊が住むとされ昔は5歳になるとその精霊達に挨拶をする習わしがあったんだ。ちょうどディノールも5歳だしちょうどいいだろうからみんなで行こうかってことさ。」
「本当に外に行けるのっ?あれほど危ないからダメって言ってたのに……。」
「正直お前の成長が早すぎて受け入れてもらえるか心配だから誰とも会わせてなかったんだ、だから魔物も最近はなりを潜めているし大丈夫だろうよ。」
「よっしゃー!!」
「あら、ディノ大はしゃぎね、何かいい事でもあったのかしら?」
「あのね!誕生日にみんなで大樹に挨拶に行こうって今お父さんが約束してくれたの!!」
「いいわね、私もしばらく精霊の大樹にご挨拶してないし行きたいわ〜。」
「よしそうと決まったら5日後に向けてしっかり体調を整えとくんだぞ、かなり歩くからな。」
「そんなに歩くの?」
「朝に出て夕方に着けばいいほうだからな、その代わり夜は大樹が精霊の光で照らされて綺麗だぞ。」
「おぉ、それも楽しみだなぁ。」
「じゃあ5日後は泊まりね、野宿の準備をしておかなくちゃ行けないわね。」
「そこら辺は任せたソニカ。」
「任せてちょうだいあなた。」
こうして5日後に初めて家の敷地から外に出て大樹へ向かう冒険が待ち受けることとなった。
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