11

 屏風裏に九十が入って来る。


百尋 九十さん…?

九十 最後の仕事だ。五助。

百尋 待ってください、どういう…?

五助 …わかった。


 九十、五助に口づけをする。


百尋 え…?

九十 あの蜘蛛に話はつけてある。お前と五助、二人分ちゃんと買った。百尋、お前は今から、自分が好いた男が抱かれるのを見るんだ。

百尋 …最初から、それが狙いだったんですね。

九十 何か言いたげだな?

百尋 …俺はあなたが買ったものにどうこう言える立場じゃありません。そんなことは百も承知です。でも、こんなの…。

九十 俺は一途だからな。お前を手に入れるために、こいつを抱く。それだけだ。

百尋 …。

五助 百尋。俺は大丈夫。仕事だから、な?

百尋 五助…。違う、そうじゃないんだ…。

九十 だから、諦めて俺にしておけば良かったのに。こいつにはわかってもらえないんだぞ?

百尋 それだけは、死んでもお断りです。

九十 それでこそだ。さあ、五助。俺に夢を見せてくれ。


 夜が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る