03

 陰間茶屋一階。

 奥に香炉が追加で置かれている。

 五助と百尋がいる。

 百尋の手が届く位置に酒瓶。


五助 … で、結局俺の話ばっかして終わったんだけど。それで良かったのか?

百尋 十分。君にはそれが一番必要になると思うし。

五助 喋ることが?

百尋 行為なんて一瞬で終わるでしょ。客を気持ちよくしてやってそのまま出させれば良いんだから。大事なのは、そこまでどうやって持って行くか。気持ちよく出させなきゃ客は満足してくれないし、望んでもない嫌な客といつまでも一緒にいたくないでしょ。

五助 お、おう… 。

百尋 … ごめんね。今、ちょっと虫の居所が良くない。

五助 あの客のせいか?

百尋 うん、そう。あのクズ。

五助 クズ?

百尋 あの人… 九十さんって言うんだけど、いつもきっかり九十両で俺を買うんだ。十両も安く見られてるだけで吐き気がするのに、自分の機嫌が悪いと俺に八つ当たりしてくる。とばっちりもいいとこだよ。旦那もいい加減出禁にしてくれればいいのに。

五助 うわ… なんか… 大変なんだな。

百尋 まあ、クズみたいな客は稀だから、君は気にしなくていいよ。

五助 お前、そいつのこと大嫌いなんだな。

百尋 何?そんなに面白い?

五助 なんつーか、安心した。

百尋 え?

五助 お前も人形じゃなくてちゃんと人間なんだなって。

百尋 何それ。まさか、あの二人から変なこと聞いたんじゃない?

五助 いや… そんな… ことは… ねえよ?

百尋 ふうん?


百尋、五助に近づく。


百尋 何を聞いたの?あの二人から。

五助 いや、だから何も… 。

百尋 おしゃべりなのは小日向の方だけど、長い付き合いなのは藤城さんだからな。どっちが喋ってた?それとも、二人とも?


 百尋、五助の体に触れる。


五助 ちょっ… !何して… !

百尋 丁度良いから、このままいろいろ教えてあげようと思って。

五助 はあ?何言って… ?

百尋 ちょっとごめんね。


 百尋、五助の着物の内側に手を入れる。


百尋 これも仕事だから。

五助 え、あ、おい… !

百尋 ちょっと、動かないで。変なところに触っちゃうでしょ。あ、それとも触ってほしい?

五助 嫌だ!

百尋 そうでしょ?まあ、嫌がっても後で触るんだけどね。

五助 はああ!?

百尋 だってそうしないと教えられないでしょ?

五助 いや、何も実際にやる必要は… !

百尋 実際にやらなきゃわからないよ。どのくらい痛いのか、どのくらい気持ちいいのか。君だって、女の子を抱いたことくらいあるでしょ?

五助 あ、まあ… 。

百尋 その時、思ったことない?この子はどれくらい気持ちいいんだろう、自分は本

当にこの子を満足させてあげられているのかなって。

五助 … 。

百尋 男と女の気持ち良いところってほとんど一緒なんだよ。君が自分の良いところを知ったら、きっと役に立つと思うんだけど。今度その子に会ったときとか、ね。

五助 そんなこと、お前に心配されなくてもいい!

百尋 へえ?じゃあ君は、俺の方を先にイかせられる自身があるんだ?

五助 そういうことじゃな… !

百尋 今のはちょっと傷ついたな。俺、これでもこの店一番の売れっ子だからさ。ひよこどころか生まれたての卵みたいな君に突き放されたら、俺の矜持はどうなるの?

五助 俺が言いたかったのは… !

百尋 わかってるよ。ちょっとからかっただけ。

五助 … お前、目が笑ってねえ。

百尋 そんなことないよ?嫌だなぁ。それより、君、結構良い体してるね。小日向が

好きそう。

五助 あぁ、確かにやたらベタベタされたけど。

百尋 やっぱり?あの子、こういうしっかりした体格の人が好きだからな。でも、そ

れも今日まで。

五助 … どうしてもか?

百尋 君はせっかく可愛い顔なんだから、それに見合う可愛い体にしようよ。

五助 可愛いって… 。

百尋 慣れた方が良いよ。これから客に散々言われると思うから。

五助 嬉しくねえ… 。

百尋 それでも、笑顔でありがとうございますくらい言えるようにね。あと、その言葉遣いも、客の前では禁止。

五助 え!?どこが駄目なんだよ!?

百尋 駄目なんですか。

五助 … デスカ。

百尋 まぁ、それは後で丸一日使えば直るでしょ。まずは、体に教え込まないとね。

五助 丸一日!?ってか、教え込むって…?

百尋 んー、入れられることに対する快感?快楽?みたいな。とにかく体に気持ちい

いことっていうのを最初に覚えさせるんだ。じゃないと後から辛いから。

五助 それはつまり… その… お前の、それを…?

百尋 何?はっきり言って?

五助 何でだよ!?わかるだろ!?

百尋 あ、意外と恥ずかしがるんだね?

五助 そりゃそうだろ!

百尋 でも慣れていかないとやっていけないよ?

五助 そうだけどさあ!もうちょっとこう、ゆっくりできねえの?

百尋 そうしてあげたいのは山々なんだけど、旦那に急かされてるから。

五助 何でそんなに急ぐんだよ?

百尋 早くお金を稼ぎたいの。あの旦那はそれしか考えてないから。

五助 体張るのは俺たちなのに?

百尋 君は体の張り方をまだ知らないでしょ。


 百尋、五助の帯をほどく。

 五助、慌てる。


五助 うえぇ!?ちょっ、何して… !

百尋 脱がせようとしてる。

五助 見りゃわかるよ!

百尋 あのね、今どれだけ恥ずかしがったところで、どうせこれから会ったことのない人たちとあんなことやこんなことをいろいろやるんだから意味ないよ。わかったらさっさと脱いで。

五助 頭ではわかってるけど… !

百尋 そう。じゃ、後は体にわかってもらうだけだね。


 百尋、酒を口に含み、五助を抱きしめながら口づけをする。

 五助、抵抗しようとするががっちり捕まっているので動けない。

 五助、次第に抵抗しなくなる。

 百尋、五助の着物を脱がせていく。


百尋 力抜いて。楽にしてて。君は何もしなくていいから。

五助 いや… でも… 。

百尋 大丈夫。お酒もあるし、そろそろ香炉も効いてくる頃だから。


 五助、何か言っているが聞き取れない。

 百尋には聞こえているらしく、受け答えしながら五助を押し倒す。


五助 … 。

百尋 いいんだよ。これから時間なんて気にせずに仕事が入って来るんだから。

五助 … 。


 百尋、五助の服を脱がしていく。


百尋 確かに、今は抵抗があるかもしれないけどね。慣れるよ。ほら、袖抜いて。

五助 … 。

百尋 違うよ。だったら、藤城さんや小日向はどうなるの?君の言い方だと、はなか

ら女性は負けてるってことになる。弱い方が入れられるわけじゃないし、入れられる

側が負け犬なわけでもない。勘違いしないで。

五助 … 。

百尋 ふふ。もうぼうっとして何も考えられないでしょ?これからもっと気持ちよくなるからね。

五助 … 百尋… 。


 百尋、もう一度酒を口に含み五助に口づけをする。

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