02

 渡辺、武藤、桑折が店先でたむろしている。


渡辺 …爆発隊。

武藤 殲滅隊。

渡辺 あー、そっちか。じゃ、これは? 迎撃隊。

武藤 迎え撃つってより、こっちが攻め込んでく方がいいんじゃねえか?

渡辺 じゃあ攻撃隊?

武藤 それはねえ。

渡辺 わかりやすくていいだろ!

武藤 かっこ悪いんだよ!

桑折 はいはいはいはい! 俺!

武藤 よし、言ってみろ。

桑折 森のくまさん!

渡辺 却下。

武藤 没。

桑折 何でだよ!

武藤 やっぱ殲滅隊だって。

渡辺 物騒すぎんだろ。

桑折 もう一個! もう一個ある!

渡辺 今度は何だ?

桑折 森のくまさん隊!

渡辺・武藤 却下!

桑折 何でだよ!

渡辺 隊つけりゃいいってもんじゃねえんだよ。

武藤 俺らがくまさん大好きみたいじゃねえか。

桑折 じゃあ、じゃあ、森の…。

渡辺 森から離れろ。里に出ろ。

桑折 里?

武藤 里っつーより村か? いやいっそ町まで出てこい。

桑折 町…町…。

渡辺 …念のため言っておくけどよ、町を入れて名前を考えろってんじゃねえからな?

桑折 そうなのか!?

渡辺 あぁ…なんか、殲滅隊って良い名前だな。

武藤 だろ? このくらいが丁度いいんだって。

桑折 何だよ、お前らで納得しやがって。せっかく考えてんのに。


 細谷がひで坊を連れて戻ってくる。


細谷 声がでけえぞ。店に迷惑だろ。

桑折 十さん! こいつら酷いんだよ!

武藤 別に酷くねえだろ。

渡辺 酷えのはお前の名づけだ。

細谷 名づけ?

桑折 どんな名前がいいか考えてたんだ。せっかく十さんが作るやつだからな!

細谷 へえ、面白いことしてんな。結局どうなったって?

渡辺 俺は爆発隊がいい。

武藤 殲滅隊が良いって言ってたじゃねえか!

渡辺 気が変わったんだよ!

桑折 森のくまさん隊!

細谷 あー、よし。一人違う世界にいるってことだけわかった。

桑折 だってさ、武兵衛。

渡辺 お前だよ!

桑折 俺?

細谷 せっかく考えてもらってありがたいんだがな、残念なお知らせだ。

武藤 何だよ、十さん?

細谷 実はな、とっくに決まってんだ。名前。

桑折 ええええええええ! 何だよお、せっかく考えたのに!

細谷 悪いな。別の機会に使ってくれ。

桑折 森のくまさん隊が…。


 桑折はいじける。


武藤 おい、武兵衛、あれどうする?

渡辺 放っときゃ、すぐに機嫌直すだろ。でさ、十さん、どんな名前なんだ?


 細谷はかかっていた黒羽織を手に取る。


細谷 衝撃隊。

渡辺・武藤・桑折 衝撃隊…。

細谷 俺が作ろうとしてんのは普通の、真正面からぶつかって強い部隊じゃねえ。馬鹿正直にかかっていったところで、戦力も、装備も、あちらさんには及ばねえんだ。悔しいがな。ただ、勝つ方法はそれだけじゃない。

武藤 どういうことだ?

桑折 難しい話か?

細谷 いいや、単純だ。俺たちが得意なもんで勝負すりゃいい。

渡辺 得意なもんって、何だ?

細谷 口で説明するより、やってみた方が早えだろ。行くぞ。

武藤 行くって…。

細谷 戦に決まってんだろ。

渡辺 待てよ、十さん!

桑折 俺も俺も!


 四人は喋りながら歩いていく。

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