第49話「相談相手」
昨日のルドVSマリー論争で分かったことだが、ルドはいつのまにか僕のことを名前で呼ぶようになっていた。…いつからだっけ?
「気づいていらっしゃらなかったのですか?」
ルドが意外そうに目を見開く。聞けば、ルドを愛称で呼び始めた頃からだという。僕が呼び方を変えたのでそれに合わせた感じだ。
「ああ、私はこんなにもルイス様を愛しておりますのに呼び方を変えたことにさえ気づいていただけないなんて、私は悲しいです…!」
ルドが顔を覆って泣き真似をする。
「ご、ごめんて…」
「あ」
大袈裟な演技に辟易しつつも一応謝っておくと、はたと何か思い出したように顔を上げる。
今度は何だ。
「そうそう、そのすぐにごめんと言う癖、直したほうがよろしいかと」
そんなに何でもごめんごめんと言っていただろうか。というか大抵の場合、自分が悪いのだから謝るのは当然では。
何故だろうと首を傾げていると、ルドが説明してくれる。
「ルイス様は時々、ご自身に非がない時までそうやって謝罪なさっています」
それはまあ、なんとなく気まずい空気になってしまったら不意にごめんなさいと言ってしまうこともあるけれど。
「でも、本当に自分が悪いと思っているときもあるよ。むしろそのほうが多い」
「そこが問題なのです。ルイス様は何でもご自分のせいにする傾向があります」
そうだろうか。あまり自分を客観的に見たことがないので分からない。
「そうですよ。ですから、ご自分が悪いなどと決めつけないでくださいませ。少しでも嫌な思いをなさったならば、私共にご相談ください」
私共、という言葉を疑問に思ってルドの視線の先を見ると、いつのまにかマリーが隣に来ていた。相変わらず距離が近い。
「私も、坊ちゃんのお力になりたいと存じます。もちろん、私共二人に相談しにくい事であれば父君や母君に、もしくは他の使用人にご相談いただいても良いのです」
マリーの表情がふっと緩んだ。こんな顔もできるのか。
「…まあ、真っ先に相談されるのは私でありたいですが」
「それは私も同様です」
ルドが余計な事を言ったせいでまた少し不穏な空気が漂った。
「二人がそんな感じだと、父上に一番に相談することになりそうだな」
ちょっと意地悪を言って言外に仲良くしろと伝えると、二人とも黙り込んでしまった。
よしよし、それで良い。たまには僕が侍女長さんと執事さんを叱るのも良いではないか。
うむうむと頷いていると
「坊ちゃん、そろそろ出発のお時間では?」
とマリー。流石、しっかりしている。
「行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
ちら、と振り返ると庭師共々頭を下げる使用人たち。最初は慣れなくてお腹の辺りが痛んだけれど、今は見慣れた光景だ。
※魔法のメカニズムを説明していたら長くなったので丁度いいところで切りました。短くなってしまいましたがご了承を。
ということで次回、魔法のメカニズムについてです。
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