第47話「著者」
学院に着くと案の定、僕の固定の席の隣にクリスティア様が座っていらっしゃる。
この方はよほど僕のことがお気に召したようだ。
この学院は本来自由席なのだが、最初の方に皆が様子を伺って仲の良い人(もしくは仲良くなりたい人)と座ってからは移動しづらく、ほとんど指定席と化している。他の講義も似たような感じだ。
クリスティア様と目が合う。
これは今会釈をするべきか、それともそのまま歩いて近くまで行ってから挨拶するべきか、どちらが正解なのだろう…?
視線を逸らすのはなんとなく失礼な気がしてそのまま人形のように固まってしまう。
クリスティア様が不思議そうなお顔で見ていらっしゃるから余計に気まずい。
とりあえず近くまで行ってから挨拶するか。
クリスティア様と視線を合わせたまま歩き出す。
「おはようございます」
「おはよう、ぎこちない仕草ね」
席に着いて挨拶するとクリスティア様が笑いながら仰った。
「人と関わるのに不慣れなもので…申し訳ございません」
「謝ることではないでしょうに」
確かにそうだが、きまりが悪くて謝らずにはいられない。
午前の授業を終え、いつも通り中庭のベンチで昼食をとっていると肩に手を置かれる。
「よ」
「アルジェント先生」
「フレディでいいよ」
そう言いながら先生は僕の隣へ腰掛けた。
「そ、そんな、先生を愛称でお呼びするわけには…」
「先生じゃない」
きっぱりと否定された。先生でなければ何だというのだろう。
「友達、だろ」
と、真面目な顔で言う。
「…そう、でしたね」
友達だと、当然のことのように言ってくれるのが嬉しい。
初めて、いや二番目だが、同性の中では初めて、友達ができた。その実感が湧く。
頬が緩んでいるのが自分でも分かる。いや、自分がそう思っているだけで人から見たら変化はないのかもしれないが…
「では、僕のこともどうぞルイスとお呼びください」
ア、、フレディ先生とは術式が苦手な者同士、意見の共有、悪く言えば傷の舐め合いをしている。
指導書に専門用語が多すぎて読めないと言う先生に、他の生徒に質問してもよく分からない言葉の羅列で返されて困る、と共感した。
「そういえば、指導書って誰が書いているのですか?」
「あー誰だったか、興味がないから忘れちまったな」
そう言いながら首を捻って思い出そうとしてくれる。
「確かサミュエル先生が指導書も書くとかなんとか言っていたような…」
え、ルドが!?
驚きは声に出さなかった。おそらく顔にも出ていないだろう。この一週間ずっと顔に出さない練習をしていたのだ。
「サミュエル先生が、ですか?」
「ああ、多分そうだ」
※私が日常で思っていることを織り交ぜてみました。挨拶のタイミングって難しいよね…私だけかもしれませんが…
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