第42話「クッション」
ルドは案の定、父上と共にこっぴどく叱られたようで意気消沈していた。長時間正座させられたらしく、足が痺れて痛いと訴えてくる。完全無欠のルドが痛みに悶える姿が何だか新鮮で、思わず笑いが漏れる。
「笑っていないで助けてくださいよ…」
そう言われても対処のしようがないので頑張れ、とだけ言っておく。だいたい、そのくらい治癒魔法で何とかならないのか。
「あ、確かに」
「え、今?」
「はい、今気づきました…」
「全く、天才魔法師が聞いて呆れる」
「おっしゃる通りです」
「天才なのはやっぱり否定しないんだ…」
本当にすごいナルシストだ。むしろ尊敬する。
「で、何を言われたの?」
僕としてはその場を切り抜けたかっただけなので叱らなくても良かったのだが。
「私と旦那様が坊ちゃんを愛しすぎだと…」
まあ、二人が過保護…というか盲目?なのは薄々勘付いてはいた。
「真剣な話の途中で興奮して話を遮るなとのご指摘をいただきまして…」
苦虫を噛み潰したような顔でそう告げる。何か不満でもあるのだろうか。
「…不快そうだな?」
「ええ、マリーの言うことは確かに正しいのですが、面と向かって正論をぶつけられるとどうにもこう、悔しいのですよ」
侍女長はマリーという名前らしい。意外にも、ルドも子供のようなことを言う。そう思うとまた笑ってしまった。
「本当に、よく笑うようになりました」
ルドが感慨深そうな声で言う。
「そうかな?」
そんなに無感情、無表情なつもりはなかったのだが、確かに以前は笑えるような出来事は少なかったかもしれない。
「ええ、表情もころころ変わって面白いですよ」
「面白いとは何だ、面白いとは」
主人を面白いとは、聞き捨てならない。
ルドに顔を近づけ人差し指を向ける。
「そういうところです」
ルドがクスッと笑った。
どういうところだ。
「解せぬ…」
僕がふいっと顔を背けて言うと、ルドは今度は声を上げて笑った。
「ふ、ふふ、ははは、本当に面白い方だ」
「何がだ!?あと面白いって言うな!」
いつもよりむきになって叫んだ。だが逆効果だったようで、ルドの笑いがいっそう大きくなってしまった。ずっと笑い転げている。
「〜〜っ!」
何だかムカついてきたのでそこにあったクッションを投げつけてやる。が、器用なもので笑いながら避けられてしまった。
ふと、今の自分はどんな顔をしているだろうと思い、ちらりと鏡を見る。
いつもより少し、本当に少し顰めっ面の顔が映っていた。見る人が見たら不機嫌そうに見えるだろうか。全く、そんなに変わらないじゃないか。何が面白いだ。
※良い案が思いつかず、変なタイトルになってしまいました。誰かタイトルの決め方を教えてほしい…
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