第29話「エピローグ」
いつも通り、マナーの勉強と魔法の練習をこなした僕は一人、夜風に当たっていた。
「あれからもう一年か。早いものだな」
そうひとりごちた。
兄が死に、アシュトン家を追放されて一年が経とうとしている。
父上はちょっと過保護なくらい僕に優しくて、母上はお酒を飲むと辛辣になる。
ルドは万能すぎて、僕のプライベートまで覗かれそうでちょっと怖い。
前の父、すなわちアシュトン子爵は、今となっては叔父だ。
赤の他人でないことが気がかりだ。自分の兄の家でぬくぬくと暮らしていると知ったら連れ戻しにやってくるかもしれない。
でもまあ、その時は魔法で撃退しよう。
明日はいよいよ登校日だ。制服も鞄も用意を整えてある。主にルドがやってくれた。自分でできるのだが、ルドがやると言って聞かなかったので任せた。
入学祝いには、新しい靴をいただいた。
「ほら、私の言った通りだったろう?」
となぜか父上が得意げだった。
もしかしたら、合否結果を見る時にどきどきしていたのは僕だけだったかもしれない。
聞けば、実技試験の成績は一番だったらしい。僕なんかが一番だなんて。
おっと、僕なんかと言うのはやめなければ。
入学祝い(?)の日に母上にもルドにも言われて色々考えたが、自己評価が低すぎるとあまり人に良い印象を与えないらしい。
父上の書斎にあった本にそう書いてあった。
確かにそうだと思ったので、これからは思っても口に出さないよう気をつけようと思う。
心地よい風が頬を掠める。そろそろ寝よう。
不安と期待が入り混じった気持ちで眠りについた。
※これにて第一章完結です。次はいよいよ学院編!これからも毎日更新を続けていきますのでお楽しみに。
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