第23話「奥の手」

ルドの指導のおかげで、僕は各属性の初級、中級魔法を一つずつ使えるようになった。

「試験を突破するにはこれで十分でしょう。他はまあ、学院という狭い世界で固定観念に囚われた教師たちにでも習ってください」

…ルドは学院に恨みでもあるの?

使えるようになった魔法を紙にまとめて一つずつ試していく。

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初級魔法

『レ・フレイム』

『ル・ウォルタ』

『レ・グラヴェル』

『リ・ヴェント』

『ル・エクレール』

『レ・フェクティオ』

『ラ・モール』

中級魔法

『カーディナル』

『アクアマリン』

『グラニート』

『ミストラル』

『レヴィン』

『ルクス』

『アビス』

(転移魔法)

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学院の入学試験まであと一週間。あとは魔法の発動までの時間の短縮、威力の増強が課題だ。再び模擬戦を行う。


戦闘モードのルドにもあまり怯まなくなってきた。冷静に、ルドに教わった通りに事を進める。

相手の勝因、自分の敗因をことごとく潰し、隙を作らない。

それがルドの、宮廷魔法師としての戦い方だ。もちろんルドの方も僕の勝因を潰しにかかってくるので警戒が必要だ。

魔力量の差を埋めるために有利な属性の魔法を使い、技量の差を埋めるために策略を練る。当然一度使った策は見破られてしまうので別の策を講じなければならない。

一つ、また一つ、と敗因をなくす。タイミングを測って奥の手を使う。

転移魔法でルドの後ろに移動する。

『インパクト』

衝撃でルドの体が吹き飛ぶ。

だが、僕はこれで終わったと考えるほど馬鹿ではない。ルドはこれくらいでは降参してくれない。だから。

『アビス』

黒い渦が、ルドを捕える。これでもう逃げられない。

「最後の一撃を加えたほうがいいか、それともお前が降参して勝敗を決するか、選べ」

「…降参します」

その言葉を聞いて、手元に集めていた魔力を引っ込める。


「奥の手があったとは、驚きました」

『インパクト』。ルドがよく使う技だから、観察していたのだ。まあ、今回のような不意打ちがいつも通用するとは限らないが。

「ですがルイス様、詰めが甘いですよ」

「えっ」

僕としては隙を作らないよう十分気をつけたつもりなのだが。

「最後の一撃を躊躇いましたね」

うっそれは、

「…躊躇ったというより選択の機会を与えたというか、ほら、慈悲ってやつ?」

「戦闘において慈悲など必要ありません」

即答されてしまう。

「なぜ?」

「私が降参を選ばずに反撃していれば、ルイス様は負けていましたよ」

痛いところをつかれて動揺する。確かにそうだ。

「まあ、それがルイス様の良いところでもありますが」

つまりは直さなくても良いということだろうか。

「ええ、そのままでいてくださいね」

とルドは微笑んだ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

執務室から、息子と執事の魔法の撃ち合いを眺めるウィリアム。

「雰囲気が似てきたな」

ふと、そんなことを呟く。

宮廷内ではその冷酷さゆえに「死神」の二つ名で噂される宮廷魔法師、ルドルフ・サミュエルに師事する息子の変わりように、嬉しいやら嘆かわしいやら、複雑な思いを抱くのであった。




※魔法のまとめ回です。ルイスの成長の過程は省略しました。考えるのが面倒なので。

ちなみに、この世界の時間の単位は地球と同じにします。これも考えるのが面倒なので(笑)

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