第22話「熱」

「はあ、はあ」

ルイス様が熱を出された。最近は体の調子が良いと仰っていたのに。

医者を呼んで診てもらっている。

「うーむ、これは…」

「過労ですな」

え?

「過労、ですか」

「最近寝不足だった、なんてことは?」

そういえば、夜中にルイス様のお部屋から物音がしていた。主人にもプライバシーがあるので言及しなかったが。

ああ、あの時止めておくべきだった、と後悔する。

「ねえ」

ルイス様が辛そうにしながら起き上がる。

「何でしょうか」

「治癒魔法で、っ!けほっけほっ」

「ルイス様!」

心配すると、大丈夫、とルイス様は手で制す。

「治癒魔法で何とかならないの?」

私も医者も、首を横に振る。

「私は治癒魔法は得意ではありませんので…申し訳ございません」

「何だよ、使えないな」

そう言ってルイス様はまた横になる。

医者は心苦しそうにしながら風邪薬を処方して帰って行った。


ーー夜にこっそり魔法の練習をしていたのが悪かった。気づいたら寝落ちしていることもあった。少しやり過ぎた感はある。でも、もっと強くならないと戦闘モードのルドには勝てそうもないから。


医者が帰ってしばらくした後、タオルを取り替えて差し上げようと席を立つと、腕を掴まれる。

息が荒く、まともに話せる状態ではなかったが、その目は行かないでとせがんでいるように見えた。

「タオルを取り替えてくるだけです、すぐに戻りますよ」

甘えてくれたことは嬉しいが、ルイス様のためにも取り替えに行かなくてはならない。

ルイス様は名残惜しそうに手を離した。


ーールドがいなくなってしまった。タオルを取り替えてくれるみたいだから行かせたが、やはりいないと心細い。

「うう」

体中が痛い、熱い。ルドに手を握っていてもらいたい。

ルドがいない時間が、長く感じられる。

早く戻ってきてよ、ルド。



※作者が風邪を引いたのでルイス君にも引いてもらいました。

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