第21話「光魔法」

やはり体が軽い。昨日の戦闘訓練で魔法を使ったからだろうか。あるいは食事の量を減らしたから、という可能性もある。もう少し検証が必要だ。

「ルイス様、ご報告が」

ルドが真剣な顔をしてそう言う。

「何?」

「教会の水晶に問題はありませんでした」

ん?教会?水晶?

しばらく考えて思い出す。ああ、そうか。適性検査のときの水晶、調べてくれていたのか。

「ということは…本当に全属性に適性が?」

ルドはこくりと頷く。

どうしよう、魔王に一歩近づいてしまった気がする。ルドにも怖がられてしまうだろう。

「素晴らしいです、坊ちゃん!」

…あれ?

「才能があるとは思っておりましたが、やはり私の目は間違っていなかった!ルイス様は天才です!」

「えっあ、うん」

こんなに表情豊かなルドは初めて見た。褒められ慣れていないから少し照れる。宮廷魔法師のルドがこれだけ言うなら、ちょっとは自分に期待してもいいのかな。


全属性持ちと分かったので早速光魔法の練習をする。

ちょうどこの間擦りむいた傷があったので治そう。ルドが心配してくれるが、ちょっとつまづいて転んだだけだ。

「そんなに深い傷じゃないよ」

『レ・フェクティオ』

傷口が光るとかさぶたが完全に消えて元通りになる。

傷をすぐに治せるとは、便利な魔法だ。

しかしこの魔法は戦闘向きではないな。攻撃手段にはなり得ない。

「攻撃手段としての光魔法もございますよ」

そういうとルドは中級魔法『ルクス』を披露する。

目の前に光の束ができる。昼間なのに目に見えるほど明るい。

「眩しい…」

「闇を祓ったり相手の目を眩ませたりできます。今は加減していますが、もっと魔力を込めれば相手を白い光で焼き尽くすことも可能です」

ちょっと火属性魔法みたいだ。

「そういえば、フェリ、母上も光属性魔法が使えるんだよね?」

フェリシア様、と言いかけて言い直す。そろそろ父上、母上と呼ぶべきだろう。

「はい、奥様は最上級魔法、『フェブルアー』まで使えますね」

最上級魔法、と聞いて興味が湧く。

「見てみたい」

そんな僕を見てルドがふっと笑う。

「何?」

「いえ、これほど生き生きしたルイス様を見るのは初めてで、嬉しくて」

普段の僕はそんなに無愛想なのだろうか?

「ええ、鬼の形相ですよ」

「えっそんなに?」

そんなに怖い顔だったのかと慌てる。ルドはまた表情を綻ばせた。

「冗談です。鬼ではなく死んだ魚ですね」

それも例えとしてどうなんだ…


これでルドの弱点の光魔法を使えるようになった。技術では劣るが、火力で押し切ることはできる。

「それにしても、魔導書が読めないと効率が悪いな…」

そんなことを考えながら眠りに就く。

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