第20話「レティス・ヴァー・エカット」

なんだか体が軽い。眠りが浅いのは相変わらずだが、咳き込むことは無くなった。

そういえば、ルドルフの魔法の授業を受け始めてから少しずつ倦怠感がなくなってきている気がする。

「魔法と関係するのかな」

長年の持病の治療法が魔法を使うこと、とはあまり考えられないが。

「それはっ!重要事項ですよ、すぐに旦那様にご報告を!」

そう言うとルドはすっ飛んで行ってしまった。…まだ着替えの途中なのだけれど。

仕方がないから自分でシャツを着てネクタイを締める。

ちゃんとできているか鏡で確認しているとルドが戻ってくる。

早すぎない?まだ5分もたっていないよ?

ルドによると、伯爵は僕の体が快方に向かっていることを喜んでいるようだった。

また、魔法との関連については引き続き調べるように言われたそうなので、僕もこまめに報告しようと思う。


今日もいつも通り、魔法の訓練だ。

新しい魔法をいくつか覚え、それを使いながらの実戦形式。魔力が尽きるまでルドに対抗する。

魔力が尽きると体に力が入らなくなるが、そこはルドが部屋まで運んでくれるから大丈夫だ。なぜかお姫様抱っこなのだが。恥ずかしいのでやめてほしい。

「お、下ろして」

「それは承諾致しかねます、ご自分では歩けないでしょう。ふふ、頬を赤く染めるルイス様、可愛らしいですよ」

と言ってからかってくる。悪い執事だ。


今日は午後の授業は休みなので読書をして過ごす。術式はさっぱりなので魔導書は読めない。経済学の本を読む。

この本の著者は変わっていて、

「奴隷って必要なくない?」「税金上げるな!」

などと普通の為政者とは反対のことを言う。

国の上層部に反対して自己満足する自惚れ野郎は多くいるが、この人の説はちゃんと根拠がある。

「働いたのにその見返りが無いと働く気になれない、か。確かにそうだな」

あちらにいた頃は、見返りなど無くともただ生きるために、生かしてもらうために仕事をしていたが、今の僕はあの頃とは違う。常識を学んだのだ。僕の当時の待遇がいかに劣悪だったか分かる。

レティス・ヴァー・エカットというなんとも珍妙な名前だが、言っていることはまともである。

「いっそ税を無くしてしまえば…いや、それだと領主の方が赤字になるのか」

著書を読み進めるとやはり免税は否定されている。

こういう話は自分の境遇も相まって身近に感じられる。

術式なんかよりずっと面白い。




※ルドルイス…いいよね。(注意:作者は腐女子です。BL変換するか否かは個人の判断にお任せします。できるだけBLにはしません、お約束します。あ、これ以降、後書きにたまに腐女子がぽろっとこぼすので苦手な方は飛ばしてください。)

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