第13話「適性」

今日から魔法による戦闘訓練が始まった。

入学試験では実技試験もある。また、日常生活だけでなく、対盗賊や迷宮攻略などの実戦でも使えるように、とのことだ。

ルドルフはハンデなど一切つけず、容赦なく中級以上の魔法を放ってくる。

対して僕は初級魔法しか使えないので、数で差を埋めるしかない。

最近覚えたばかりの多重詠唱を使って一度に五つの炎を作り出す。

だがそれもルドルフの闇に飲み込まれて消滅する。

「くっ!」

続いて風、水、土、雷と技を繰り出すが全く闇を打破できる気がしない。

当然だ。闇に有効なのは光。光属性の魔法なんて教えてくれなかった。

我が執事もなかなか卑怯な手を使う。

本当に容赦がない。その目は冷酷で無慈悲だ。最初は背筋に冷たいものが走った。

このままだと埒が開かないので一気に火力を強める。初級魔法でも、流す魔力の量が多いほど火球は大きくなるのだ。急に多くの魔力を使ったので、体力というか生命力を削られる感覚がした。視界が霞む。あ、これ、駄目なやつかも…

「坊ちゃん!」

ルドルフが駆け寄ってくる。段々と、その声が遠くなっていった。

目が覚めると、もう夕方だった。

どうして寝ていたのだっけ。記憶を探る。

そういえば、魔力切れで倒れたのだった。

「お目覚めになりましたか、坊ちゃん」

「うん、ごめん、迷惑をかけた」

「迷惑だなんて思ってはおりませんよ」

先程の訓練で気になったことを尋ねる。

「ねえ、ルドルフはなんで闇魔法しか使わないの?」

「他の属性も使えないことはないですが…闇属性に適性があるので」

「適性?」

「個人には適性というものがあるのです。そういえば、坊ちゃんの適性は検査していませんでしたね」

適性属性を調べるついでに魔力量も調べることになった。何でも、その二つを同時に測定できる便利な水晶があるらしい。

魔力測定、適性検査に使われる水晶は手に入りにくいため、教会か学院くらいしか置いていない。ルドルフと二人、教会に向かう。

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