第5話「従者」
「契約成立だ、これからよろしく」
「お世話になります」
「君には専属の使用人をつけよう。ルドルフ」
伯父上、伯爵が呼ぶと、後ろに控えていた黒髪金眼の男性が出て来る。爽やかな見た目の、頼り甲斐のある好青年、と言った感じだ。
「ルドルフ・サミュエルと申します。大きくなられましたね、ルイス坊ちゃん」
どこかで会ったことがあるのだろうか?伯爵を見る。
「ルイスが小さい時に一度会っているが、まだ赤ん坊だったからね、覚えていなくて当然だ。ルドルフ、この屋敷を案内しろ。それと家のルールも説明してやれ」
「かしこまりました」
「え、えと、よろしく、ルドルフさん」
「はい、よろしくお願い致します。気軽にルドルフとお呼びください」
柔らかく笑う。
「じ、じゃあ、ルドルフ…さん」
呼び捨てはしたことがないからなかなかできない。
「ふふ、慣れるまではその呼び方で結構ですよ」
そう言って微笑むと、ルドルフさ…ルドルフは説明を始めた。
この家のルール。毎回の食事は食堂で、家族揃って食べること。毎晩、お風呂に入ること。部屋に入るときはノックをすること。それと、夕食の時間、夜7時までには帰って来ること。
この屋敷は三階建てで、一階は玄関とホール、そこを抜けると客室、応接室、書斎が並び、突き当たりに食堂がある。
二階は浴室と伯爵の執務室、フェリシア様の部屋などがある。三階は使用人の寝室だが、使用人にもプライバシーはあるのでよほどの緊急時以外は立ち入らない、という約束だ。
「こちらがルイス坊ちゃんのお部屋でございます」
二階の一番奥に使われていない部屋があるらしい。
「まさか、曰く付きとかじゃないよな」
幽霊が出るとかは嫌だよ。ドアを開けると魔道具やら武器やらが置いてある。どうやら物置らしい。ルドルフが苦笑しながら言う。
「…使われていない、とは申しましたが、正確には、目的があって使われているわけではないという意味なのです。明日には全ての物を撤収し、家具も設置する予定です」
伯爵が収集家だというのは前の父、ガルムがよく愚痴を言っていたので知っている。それにしても数が多い。こんなにごちゃごちゃしていたら片付けも大変そうだ。
とりあえず今日は客室に泊まらせてもらえるという。お風呂まで貸してもらえるらしい。また、ルドルフが体を洗ってくれるという。何から何まで、伯父上には面倒をかける。
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