第9話 ユニークス出現
「号外! 号外! ユニークス出現! ユニークス出現! セントルシア近郊の衛星都市に、ユニークス出現だ!」
そう言って新聞がバラまかれる。
新聞は俺の腕に止まり、手に取ると開かれる。号外なのでタダだ。
「へー、衛星都市にユニークス出現か」
近くのカフェのテラス席に座っていた俺とアルリス、そしてスカイは三人で新聞をのぞき込む。
「推定レベル600! これは私たちが行かないといけないですね!」
「そうか、グランユニークスか」
ユニークスの等級について。
レベル0から499までは、通常のユニークスだ。幼体などもここに含まれる。
500から999までは、グラン・ユニークスだ。ユニークスの中でも相当に強い、モノによって都市一つを容易く滅ぼすこと出来る領域だ。このレベルだと、討伐に参加したすべてのプレイヤーにアナウンスが送られる。
『要塞魔竜 カストルム』のアナウンスがワールド・アナウンスと化していたのも、ほぼすべてのプレイヤーが討伐に参加していたからだ。
そして1000以上。これはオーバード・ユニークスと呼ばれ、災害と同義とされる。
歴史上、出現した数は五十例に満たず、そのたびに国が滅んできた。
今回は、レベル600。グラン・ユニークスの中でも弱めといったところか。
「どうする一狩りいくか?」
「そうですね! 行っちゃいましょう! 地上なら私もお役に立てそうですし!」
「私はオーマ様が望むのならばどこにでもついていきます」
「決まりだな。俺も
七つあるランキングに一つでもランクインすればいい。
決闘。討伐。殺戮。開拓。生産。救済。連合。
決闘は分かりやすい。一対一の戦いで勝利しまくればいいのだ。闘技場で行われる戦いならば、全てこの決闘のランキングに計上される。
討伐。これも分かりやすい。モンスターを討伐しまくればオッケーだ。
殺戮。これは討伐の対人版。有名なPKなどがランクインしている。
開拓。これは前人未到の領域に到達することと、そこを人の住める場所に開拓する、もしくは人の行き来を容易にするといったことでランクインできる。
生産。これはシンプルに自分が生産したモノの強力さや普及率、要するに世界に与えた影響の多寡でランキングに入れる。
救済。これは殺戮の逆で、人を助けた回数や、人数でランキングに入れる。
連合。これはこれまでの六つと違って、ギルドごとにランキングに入っていく。ギルドに所属している面々の他六つのランキングにどれだけ入っているかで計算される。
これらのランキングは全て上位百まで公開されている。
そしてこのランキングに入っている者は、例外なく『號級能力者』と呼称される。
俺の最終目標は、殺戮を除く全てのランキングでトップを取ることだ。
そうすることで俺は名実共にこの世界の頂点に立つということになる。
「……全てのランキングで、トップ?」
スカイが、信じられないモノを見るような瞳で問う。
「ああ。殺戮を除くすべてで、頂点を獲りたい。そうすれば俺が望んで止まない夢である世界の頂点に届く」
『ネオン・パラダイム』の世界は現代人にとって、紛れもない異世界だ。
だから俺はこの世界で、頂点を獲る。
そうすることで満たされるはずだ。
この渇きが。
「俺も君の夢に協力する。だから君も俺の夢に協力してくれ。スカイ」
「……わかりました! 一緒に頑張りましょう!」
「アルリスも、それでいいか?」
「はい。……スカイさん」
「何でしょうか?」
「アナタはとても良い人です。警戒心を抱いていたことをお詫びいたします」
「い、いえいえ。初対面ですから。警戒するのは何となくわかります」
「アナタもご苦労されてきたのですよね」
「そうですね。色々と大変でした……」
そう言いながらそれらの出来事を思い出したのか、がっくり肩を落とす少女。
「でもオーマ様の下ならばそんな心配はいりません。この方は、千年孤独だった私を救い出し、受け入れてくれました。オーマ様を選択したこと。この私と、オーマ様が後悔させません」
「俺たちもいるよ!」
「一万人ぐらいいるよ!」
「最近増えて、二万人ぐらいになったよ!」
分体たちが口々にさえずる。
「さて、頼もしい仲間も増えたことだし、更なる冒険に繰り出そうか」
「はい!」「参りましょう。どこまでも」
そうして冒険が始まる。
ここまでがほんの入口に立ったに過ぎないということが分かるほど、波乱に満ちた冒険が。
―――
三章完結です。
お読みいただきありがとうございました。
四章は、近日中に投稿いたします。
三日に一度更新をさせていただきます。
カクヨムコンに向けて新作を執筆するためです。
予めご了承ください。
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