第10話 激震、走る
1 名無しさん
あのクソ要塞がついに落とされたぞ!!
2 名無しさん
単独討伐とか、どんなインチキ使ったんだ?
3 名無しさん
チートじゃね?
4 名無しさん
チートが不可能なことぐらい常識だろ、情弱。
5 名無しさん
どうせパラダイムがたまたま噛み合っただけだろ。
6 名無しさん
そいつも調子こいてるカスに違いねえぜ。パラダイムガチャに当たっただけの雑魚の癖しやがって。
7 名無しさん
はーい、パラダイムへの恨みはよそのスレでやってくださいねー
8 名無しさん
俺実際に会話したけど、結構いいやつだったぞ。敬語は崩さないし、わざわざ順番を回してくれるか聞いてきたりしてきたし。
9 名無しさん
オーマだったけ?
どんな奴だった?
顔は? 身長は? 年収は? レベルは? スキルは? 調べてみました!
10 名無しさん
オマエが調べるんかい。
まあ、顔は結構整っていたな。多分あんまいじってないか、キャラメイクが上手いかのどっちかだと思う。
身長は180ぐらい? 体幹のブレとかも少なかったし、そのままの身長か、よっぽど体幹に優れた運動選手だと思う。
年収は知らん。けれどあの調子なら、トッププレイヤー並みに稼ぐのはそう遠くないと思うぞ。
レベルは251だった。
スキルは知らん。他者鑑定を使えねえし。
11 名無しさん
オーマか。
誰かスクショ持ってねえかな?
ていうか二週間以内にそんだけレベルを上げたってことは、成長加速系のパラダイムか。
12 名無しさん
ソレはマナー違反だろ。
13 名無しさん
何はともあれ、要塞魔竜をぶっ飛ばしたってことは、あの『要塞落とし』共が野に放たれるってことか。
14 名無しさん
自分からゲームの幅を狭めていた阿保たちが、野に放たれるのか。
15 名無しさん
ジンネマンさんが、このままクランは維持する予定だって。
他の特殊防御系ユニークスを狙って狩りをしていく方針だとよ。
16 名無しさん
あの『要塞落とし』(落とせなかった)がオープンワールドエリアに来るのか。結構勢力図変わりそうだな。
17 名無しさん
オーマって奴がどこの国に所属するかは聞いてる?
18 名無しさん
さあな? でもあんだけ強いんだったらどこの国でもやってけるだろ。
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□
『ネオン・インフォメーション・ネットワーク! 略して~!』
『NIN!』
『はい。というわけで『ネオン・パラダイム』の世界で今話題のニュースをご紹介!
何といっても今最もホットなニュースは!』
『まあ、要塞魔竜撃破ですよね。しかも単独撃破』
『そうなんですよねぇ! 是非とも取材を試みたいところですが、現在コンタクトが取れておりません!』
『ダメじゃん』
「まさかNINに取り上げられるとはな……」
NINは現実世界においても放送されている『ネオン・パラダイム』の情報番組だ。
そこで取り上げられることを夢見るプレイヤーは数多いと呼ばれている。
俺はソレを現実世界で食事をとりながら見ていた。
両親は仕事でいない。
春休みの平日なんてこんなものだ。
高校合格祝いに買ってもらった『ネオン・パラダイム』にかまけている俺は、徹夜した影響で昼まで寝ていた。
最近は、レベリングの影響で三徹とかも普通にやってたからな。
たまにはこうして寝だめをしておくべきだろう。
まあ、寝だめは効果がないことは知っているが。
気分の問題だ。
「さてと、しっかり寝たし、始めるか」
自分の部屋に戻って、ヘッドギアを被る。
「『パラダイム・シフト』」
お決まりの起動音声を呟いて、俺の意識は極彩色に落ちていく。
そんな俺を出迎えたのは漆黒の空間だった。
そこには白い人型が立っている。
「やあ、チュートリアルエリアクリアおめでとう。ゲーム開始以来だね」
「お久しぶりです。ホワイトさん」
「ははは、相変わらず礼儀正しいね、オーマ君は」
彼?はこのゲームの運営を統括しているAIだ。世界観的には先導神ホワイトという名前をしている。
「さて。チュートリアルエリアをクリアしたキミには、オープンワールドエリアに入る資格がある。というか君のレベルだと自動的に、オープンワールドエリアに移動するんだけどね。オープンワールドエリアは文字通り一つの巨大なエリアだ。世界そのものだと言い換えてもいい。そんな世界に降り立つにあたって君には選択肢がある。簡潔に言うと国を選ぶんだ」
俺の目の前で大陸が七つに色分けされる。
一つ目は、世界樹を中心にした自然地帯『ユグドラシル』
主に精霊魔術が盛んらしい。様々な種族が平和に暮らしている初心者向けの地域のようだ。
二つ目は、鋼鉄の巨塔を中心にした近未来地帯『バベル』
中央の巨塔からもたらせる技術によってかなりSFチックな世界観になっているらしい。ここは生産職向けだ。
三つ目は、霊峰フジを中心にした和風の島国『
侍と陰陽術、あと呪術と妖魔という特別なモンスターとの戦闘が盛んらしい。
対モンスター戦闘を楽しみたいのならばこの地域のようだ。
四つ目は、砂海というファンタジー要素溢れる場所に点在したオアシスを拠点にした『アレーナ』。
主に商業が盛んらしい。金さえあれば何でも手に入ることから、割と上級者向けのようだ。
五つ目は、巨大な迷宮を中心にした大陸の中央に位置する地域『セントルシア』
迷宮探索を楽しみたいのならここが一押しの模様だ。
六つ目は、大陸南東の諸島地域を中心にした『オルシャンド』
海戦や水中戦闘を楽しみたいのならここがベストな地域だ。
最後に、大陸北東を中心にした『ゼルシューラ』
ここは非常に戦闘が盛んな地域らしく、様々な勢力がしのぎを削っているらしい。プレイヤーがその勢力の頂点に立っていることもあるようだ。
大分上級者向け、PvP向けの地域。PKも多い。
「セントルシアにしようと思います」
「その心は?」
「単純にモンスターを食いまくっても、生態系を崩壊させない地域ってなると、モンスターのホップするダンジョンの中しかないんですよ。それならいっそ一番デカいダンジョンに潜るべきかなって」
トッププレイヤー足りうるためには、ジョブやパラダイムといった様々な要素が絡んでくると思うが、まずはやはりレベルだろう。
レベルが低いままでは話にならない。
幸い俺の『分体』は、レベル上げに適している。
それならいっそ、周囲への心配なくレベルを上げられる地域を選んだ方がいいだろうということで、この選択となった。
「なるほどね。いいと思うよ。このゲームは、全てを歓迎する。『
合言葉のように言う『ネオン・パラダイム』のために。
どういう意味かは定かではないが、きっとプレイヤーがもっと楽しめるようにするためとかそんな感じだろう。
「それじゃあ行ってらっしゃい。楽しんでおいで」
「あ、そう言えば聞いておきたいんですけど、この世界に入るにあたって何か目的とかってあるんですか?」
「グランドクエストの事かな?」
「はい」
「そうだね。一応存在しているとだけ、言わせてもらうよ」
含みのある言い方だ。
「それも自分で探せってことですか?」
「ふふふふ、その通りさ。頑張ってね。プレイヤー」
「分かりました。それではいってきます」
俺は漆黒の空間から解き放たれる。
目指すは大陸中央『セントルシア』。
そこには一体どんな冒険が待ち受けているのだろうか。
心躍らせながら、俺は跳び立つのであった。
□
「さて、行ったか」
白い人型は、独り言ちる。
「来たるべき『パラダイム・シフト』のためには一人でも多くの精強なプレイヤー、いいや『シフター』が必要だ。彼もその一人になり得る」
コツコツと硬質な足音を立てながら、白い人型はどこからともなく現れた椅子に座る。
「さて、彼は『シフター』たり得るかな?」
ゲームは、まだ始まったばかりだ。
——―――
あと一話で一章完結です。二章は9月10日から始めようと思っています。
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ちなみにこの更新以外でも一話増えてますが、特に話に影響はありません。
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