第2話

「こんばんは。よくいらしてくださいましたね」

「あっ、どうも。」

「お席、こちらへどうぞ!」


急に声をかけられて、こんな返事しかできなかった自分に恥ずかしさを感じながらも、ドライフラワーのブーケが飾られた席まで移動し、座ってみる。

今の人はマスターなのかな、落ち着いた言葉遣いの人だったな。


白で統一されているのに、お花とライティングのおかげであたたかみを感じる店内。一日の疲れが癒されそうな、そんな雰囲気が、今の自分にはありがたい。じろじろとお店を眺めていた矢先、その瞬間は突然やってきた。


「おーい!ご新規さんが来てくださったぞ。対応頼んだぞー!」

「了解です、マスター!」



え...。

何今の...柔らかな...声.....。


男の子なのに...すごく優しそうだな...。

いや、もしかして元気いっぱいのタイプ?

それともクールタイプ?


え、なんで私、たった3秒の音にこんな感想が出てくるんだろう。

今から彼が来ると思うだけでソワソワしてる。

おかしい。ついに壊れたのかな私。絶対おかしい。おかしいって。

秒単位で頭の中をグルグルと駆け巡る感情に振り回されながら、その時が来るのを待ち望んでいる自分がいた。


「いらっしゃいませ!お冷とおしぼり失礼します。ご注文お決まりになりましたら、僕のこと呼んでくださいね!」

「は、はいっ!!!」

「ふふっ、元気がいいお返事ですね!」

「あっ...すみません...」

「いえいえ、素敵だなと思って!では、失礼しますね!」



素敵だなと思って...

素敵だなと...思って.....

そんなこと...言われたこと...ない...。


そんなの...ないって.....。


とりあえず、メニュー、決めなきゃ。

冷静になれ、美羽。


メニューを開いてみると、たくさんのドリンクとデザートの写真が並んでいた。

今日くらい、デザート頼んでも、いいかな。そんな気持ちにさせてくれたのはなんだろう、分からないけど、頼もうと決めた。


あ、呼ぶのか、彼のこと。

なんか意識してる?あんまり良くないか...。

一息ついてから呼ぶことにした。

お水を1口飲んで...


「すみません!!」

「はい!今伺いますぅ!」


トコトコと歩いてくる彼はなんだか可愛く見えた。


「お待たせしましたー!ご注文お決まりですか?」

「ブレンドコーヒーと、チョコレートケーキ、お願いします。」

「おっ、えぇ組み合わせですね!お持ちしますのでお待ちくださいね!」


ふぅ、言えた...。安心した...。

彼、関西弁だったな、、上京してきたのかな。

このあと、ずっと目で追っていたのは、あの『彼』の事だった。








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