あかり
学校へ着くと、いつもと同じようにHRが始まった。一時間目、化学。難しい、よくわからない。窓側の席で、退屈だなと思いながら校庭とその先に続く大きな海を眺めていたら一時間目は終了した。
二時間目。生物の授業だった。先生の言葉が呪文のように聞こえて来て、うとうとしていた。斜め前に座って、可愛い豚のペンポーチをなでなでしてるあかりを見て、つい自分と比べ始めてしまった。成績優秀で、優しくて、可愛くて、努力家で、スポーツも得意で、なんでも難なくやってのける彼女。それに比べて私は、勉強も出来なければ、スポーツも中の下くらい、別に優しくもない、努力もしてない。本当は勉強も部活も頑張りたいはずなのに。そんなことを考えていたら、授業中だというのに机に突っ伏して寝ていた。
やばっ、授業中だ。そう思って目を擦ると、目の前にはあかりのペンポーチが置いてあった。え、、なんで?戸惑ったいると、先生に当てられた。「あかりさん、ここ、答えて。」まずい、答えられない。いつもの私だったらそう思うはずなのに、不思議と答えが浮かんで来た。「3番です。」きっと戸惑いを隠しきれていなかったであろう声で答えた。正解だった。その後の授業も、今日はよく理解できた。
三時間目の体育も、いつもより体が思い通りに動いた。先生にも褒められた。
どうやら、あかりの能力や行動はそのまま、心だけ私が乗り移ってるみたいだ。
その頃、向こうにいる私はボールを上手く蹴れなくて、友達にバカにされながら笑っていた。
なんだか楽しそうだった。
あかりとして過ごす学校は、なんでも上手く行った、私の理想だったけど、思っていたより楽しめなかった。
五時間目は全校集会だった。校長先生の長いお話を聞きながら、思わずうとうとしてしまった。生活指導の先生が、マイクが無くてもいいんじゃないかと思わせるような「寝てる奴ら起きろー」という大きな声で目が覚めた。「かな寝てたでしょ笑」とさやかに言われた。
あれ、あ、戻ったんだ。
なんとも言えない不思議な気持ちと共に、今日の学校は終わった。
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