あこがれ
あの子みたいに綺麗だったらな。勉強ができたらな。頑張れたらな。運動神経がよかったらな。私があの子だったら良かったのにな。
小学生って暇そうでいいな。戻りたいな。
中学生のときは何をやっても上手くいったのにな。
いっそ猫にでもなって、気楽に生活したいな。
もし部活に入ってなかったら、こんなキツイ思いすることなく、毎日自由でハッピーな生活だったのかな。そもそも、なんでこんなに頑張ろうとしているのだっけ。
なんとなく、学校の先生になりたいなとは思っているけど、私にそんなことできるのだろうか。このままじゃ大学行けないよ。
自分に自信が持てなくて、自分を好きになれなくて、誰かへの羨ましさ、過去の栄光やありえもしないタラレバ話ばかりが頭の中を駆け巡る毎日だった。
✳︎
朝の薄暗い部屋に鳴り響くアラーム。うるさい。ちなみに時間は五時。どうせ起きないのに、勉強するかもって自分に期待した、昨日の私がセットしたアラーム。目は半分も開かない。いやいや止めて、布団に戻る。
一時間と三十分くらい経った後、「かな、おーい、起きなくていいのー?」という母の声で目を覚ます。出発時刻まであと三十分。顔を洗って、コンタクトレンズをつけ、髪の毛を一つに結ぶ。練習着とタオルを用意。制服を着て、ローファーを履いて、水筒の入った重たいリュックを背負って、「行ってきます」。
「駅まで送ってあげるよ」という母の優しさに甘え、駅に向かう車の中で、酸っぱい梅干しが入ったおにぎりを食べる。眠いなあなんて思っていたら、駅のホームが見えてきてしまった。
「気をつけてね」と言う母の言葉に適当に返事をしたら、筆箱に入れたペンたちが控えめにカラカラ鳴るくらいのスピードで改札まで走る。駆け込み乗車の一歩手前で電車に駆け込んで、少し息を整えて席に座る。
前に小学校2年生くらいのおさげの女の子が、お花柄のワンピースをきたお母さんと並んで座っていた。お出かけかな、いいなと思いぼーっと眺めていたら、いつの間にか、寝ていた。
目を開くと、そこには、向かいの席で眠っている自分の姿があった。え、、慌ててもう一度見直したけどやっぱりあれは私だ。隣には、さっき前に見えたはずのお花柄のワンピース。おかしいな。
「まもなく小田原です。」
車内アナウンスの声でハッと目が覚めた。前には小さな女の子とお母さんが座っていた。
なんだったんだろう。夢かな。きっと寝ぼけていたのだろう。まあ、なんでもいっか。そんなに気にしないことにして、私は学校へ続く道を歩き出した。
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